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◇364 何故に授業で雪合戦?
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「如何してこうなったのかな?」
明輝は呆然としていた。
冬の寒空の中、クラスメイト達はジャージを着ている。
しかし場所も場所だった。ここは体育館じゃない。もちろん武道場でもない。
完全に外、ここは校庭で、何故か寒い中を過ごしていた。
「明輝、危ない!」
白い小さな塊が飛んでくる。
雪玉が明輝へと当たりそうになる中、明輝はスルリと躱してしまうと、自分も雪玉を作り、こうなって経緯を回想する。
「えーと、斎藤先生と船橋先生からお知らせがあります。今日の体育の授業は男子と女子はそれぞれ外で雪合戦をするそうです」
「「「何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
始まりは担任の先生の一言だった。
クラスメイトの男子女子問わず、全員驚いてしまった。
まさか冬休み開け一発目の授業が体育だった弊害がここに来て出てしまい、過酷な環境を強いられる。
しかもまさかの雪合戦。明輝たちは驚愕し、むしろドン引きした。
「先生、なんで雪合戦なんですか!?」
白玄が手を挙げて質問した。
すると担任先生は「うーん、何でかな?」と曖昧な答えを出す。
しかし「多分……」と火鳴り出して考えた答えはあまりにも歪だった。
「多分、せっかく雪が降っているから使わない手はない的なノリじゃないかな?」
「「「そんな適当なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
完全に適当だった。
流石に今日は気のよりも寒いので心身共に響く。
だけど今更授業欠席はできないので、明輝たちは仕方なくその幼稚園児的な授業を強いられた。
「ううっ、寒い」
「本当だね。でも何でこんな時に校庭で雪合戦なんだろう」
「分からない。でも、寒い。死にそう。コートが欲しい」
「確かに厚着したいよね。みんな震えているよ」
校庭に集められた明輝たちはそれぞれ男子女子に分かれて先生の周りに集まる。
男子の方を見てみると、運動部の人達は「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と寒さを吹き飛ばそうと、熱血漢の体育教師と叫んでいたが、それ以外の生徒たちは死んだような顔をしていた。
対して女子たちもおんなじ感じだ。
体を震え上がらせて唇が変色しそうになっていた。
しかし烈火はとても楽しそう。ジャージの袖を捲るという所業を行い、男子でもやっていない行為に圧巻とさせられた。
本気で暑さも寒さも関係ない。烈火の著しく高い体力のポテンシャルにドン引きしそうになった。
「えーっと、皆さん集まってください」
「「「はーい!」」」
そんな中、誰よりも寒さに耐えきれない人が居た。
か細い声でみんなを呼び寄せたのは、体育教師の船橋先生。
しかしその格好はあまりにも適していない。コートを着込み、分厚いブーツを履き、手袋にマフラーと完全防備だった。
嫉妬しそうになるが、それでも船橋先生は倒れそう。
頬が白くなり、目がウロウロしていた。
「先生大丈夫ですか!」
「今にも寒さで倒れそうになってますよ!」
クラスメイトたちが心配する。
それはもちろん明輝や烈火も同じで、船橋先生も「うん」とナヨナヨして答える。
それくらい寒さがピークに達していて、誰よりもフラフラだった。
「先生は元々血圧低いし、今日みたいな日は危ないですよ!」
「で、でもね。みんな雪合戦したいでしょ?」
「そ、そんなことは……」
「したくないの?」
船橋先生は悲しそうな目をしていた。
こんな目をされたら「したくないです」とは流石に堂々とは言えない。
もちろん堂々とじゃなくても厳しい空気が流れる。
「「「や、やりたいです!」」」
クラスメイトたちの一致団結が見えた。
ここは船橋先生を立てるためにも積極的に取り組むのは吉。
そう思った矢先、船橋先生は薄っすらと涙を流す。感動の涙だった。
「みんな、ありがとう」
「「「先生、泣かないでください!」」」
船橋先生は突然泣き出してしまった。
おまけに限界値を迎えそうになっている。
それでもここに立とうとする姿を見てクラスは勇気を貰う。
「えっと、それじゃあチーム分けしましょう」
クラスメイトの一人、三条がそう唱えた。
パンパンと手を叩き、全員をまとめ上げる。
一年生にして、風紀委員会に所属しているだけのことはあった。
「先生、ルールって決まっているんですか?」
クラスメイトの秋風祭は尋ねる。
すると船橋先生はフラフラとよろめきながらだったが、一瞬だけピシッとして、思い出したみたいに話し出す。
「えっとね、確か協議したんだけど、授業だから簡単なルールになったはずで……あっ!」
船橋先生は自分の後ろに置いてあった箱の中から旗を取り出した。
この場合はフラッグと呼ぶべきだろうか?
全部で二本、赤と青のフラッグがあり、かなり短い。
後はダンボール箱が六つ。それぞれ三つずつ用意してある。
「先生、凄い道具の数ですね」
「うん」
「いつの間に用意したんですか?」
「今朝、美術の名雪先生が頑張って作ってくれたんですよ。しかも防水加工が施されていて、かなり丈夫みたいです」
明輝たちはそれを聞いて全員思った。
あまりにクオリティが高くて、時間と労力が掛かっている。
それをこの短時間で作ってしまうなんて、どれだけ暇なのか、それとも腕が良いのか、明輝たちはありがたさの中に、御鷹高校の先生たちの変わり者感を感じ取った。
明輝は呆然としていた。
冬の寒空の中、クラスメイト達はジャージを着ている。
しかし場所も場所だった。ここは体育館じゃない。もちろん武道場でもない。
完全に外、ここは校庭で、何故か寒い中を過ごしていた。
「明輝、危ない!」
白い小さな塊が飛んでくる。
雪玉が明輝へと当たりそうになる中、明輝はスルリと躱してしまうと、自分も雪玉を作り、こうなって経緯を回想する。
「えーと、斎藤先生と船橋先生からお知らせがあります。今日の体育の授業は男子と女子はそれぞれ外で雪合戦をするそうです」
「「「何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
始まりは担任の先生の一言だった。
クラスメイトの男子女子問わず、全員驚いてしまった。
まさか冬休み開け一発目の授業が体育だった弊害がここに来て出てしまい、過酷な環境を強いられる。
しかもまさかの雪合戦。明輝たちは驚愕し、むしろドン引きした。
「先生、なんで雪合戦なんですか!?」
白玄が手を挙げて質問した。
すると担任先生は「うーん、何でかな?」と曖昧な答えを出す。
しかし「多分……」と火鳴り出して考えた答えはあまりにも歪だった。
「多分、せっかく雪が降っているから使わない手はない的なノリじゃないかな?」
「「「そんな適当なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
完全に適当だった。
流石に今日は気のよりも寒いので心身共に響く。
だけど今更授業欠席はできないので、明輝たちは仕方なくその幼稚園児的な授業を強いられた。
「ううっ、寒い」
「本当だね。でも何でこんな時に校庭で雪合戦なんだろう」
「分からない。でも、寒い。死にそう。コートが欲しい」
「確かに厚着したいよね。みんな震えているよ」
校庭に集められた明輝たちはそれぞれ男子女子に分かれて先生の周りに集まる。
男子の方を見てみると、運動部の人達は「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」と寒さを吹き飛ばそうと、熱血漢の体育教師と叫んでいたが、それ以外の生徒たちは死んだような顔をしていた。
対して女子たちもおんなじ感じだ。
体を震え上がらせて唇が変色しそうになっていた。
しかし烈火はとても楽しそう。ジャージの袖を捲るという所業を行い、男子でもやっていない行為に圧巻とさせられた。
本気で暑さも寒さも関係ない。烈火の著しく高い体力のポテンシャルにドン引きしそうになった。
「えーっと、皆さん集まってください」
「「「はーい!」」」
そんな中、誰よりも寒さに耐えきれない人が居た。
か細い声でみんなを呼び寄せたのは、体育教師の船橋先生。
しかしその格好はあまりにも適していない。コートを着込み、分厚いブーツを履き、手袋にマフラーと完全防備だった。
嫉妬しそうになるが、それでも船橋先生は倒れそう。
頬が白くなり、目がウロウロしていた。
「先生大丈夫ですか!」
「今にも寒さで倒れそうになってますよ!」
クラスメイトたちが心配する。
それはもちろん明輝や烈火も同じで、船橋先生も「うん」とナヨナヨして答える。
それくらい寒さがピークに達していて、誰よりもフラフラだった。
「先生は元々血圧低いし、今日みたいな日は危ないですよ!」
「で、でもね。みんな雪合戦したいでしょ?」
「そ、そんなことは……」
「したくないの?」
船橋先生は悲しそうな目をしていた。
こんな目をされたら「したくないです」とは流石に堂々とは言えない。
もちろん堂々とじゃなくても厳しい空気が流れる。
「「「や、やりたいです!」」」
クラスメイトたちの一致団結が見えた。
ここは船橋先生を立てるためにも積極的に取り組むのは吉。
そう思った矢先、船橋先生は薄っすらと涙を流す。感動の涙だった。
「みんな、ありがとう」
「「「先生、泣かないでください!」」」
船橋先生は突然泣き出してしまった。
おまけに限界値を迎えそうになっている。
それでもここに立とうとする姿を見てクラスは勇気を貰う。
「えっと、それじゃあチーム分けしましょう」
クラスメイトの一人、三条がそう唱えた。
パンパンと手を叩き、全員をまとめ上げる。
一年生にして、風紀委員会に所属しているだけのことはあった。
「先生、ルールって決まっているんですか?」
クラスメイトの秋風祭は尋ねる。
すると船橋先生はフラフラとよろめきながらだったが、一瞬だけピシッとして、思い出したみたいに話し出す。
「えっとね、確か協議したんだけど、授業だから簡単なルールになったはずで……あっ!」
船橋先生は自分の後ろに置いてあった箱の中から旗を取り出した。
この場合はフラッグと呼ぶべきだろうか?
全部で二本、赤と青のフラッグがあり、かなり短い。
後はダンボール箱が六つ。それぞれ三つずつ用意してある。
「先生、凄い道具の数ですね」
「うん」
「いつの間に用意したんですか?」
「今朝、美術の名雪先生が頑張って作ってくれたんですよ。しかも防水加工が施されていて、かなり丈夫みたいです」
明輝たちはそれを聞いて全員思った。
あまりにクオリティが高くて、時間と労力が掛かっている。
それをこの短時間で作ってしまうなんて、どれだけ暇なのか、それとも腕が良いのか、明輝たちはありがたさの中に、御鷹高校の先生たちの変わり者感を感じ取った。
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