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◇362 この時期に焼き芋を焼いてみよう
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冬休みのある日。
もうじき学校が始まる中、明輝と烈火は二人揃って神社に居た。
何故か神社の境内で竹箒で落ち葉を集め、燃えやすいように固めておく。
「こんな感じかな?」
「良いんじゃない? んじゃ、後はコレを入れてーっと」
烈火はサツマイモをアルミホイルでくるんでいた。
数は二つ。それなりに良いサイズで、集めた落ち葉の中に放り込む。
それから落ち葉の中に少し空洞を入れると、明輝はマッチを点けて落ち葉を燃やした。
小さな赤い火花が上がり、素早くパチパチと火種が燃え始めた。
「「おお」」
二人はちょっと感激した。
まさかこの時期、この時間にこんな真似をすることになるとは思いもよらなかった。
それもそのはず、こうなることを予期していなかった。
正直、サツマイモを食べる想定の口を今日は持って来ていない。
「でも何でこんなことになったんだろ」
「仕方ないよー。まさか近所の人たちがここまで餅つき大会に興味があるとは思わなかったからー」
「そうだよね。いっつもやってなかったのに、突然だったもんね。でも、突然のことにもこんな風に楽しく集まれるなんて、いい感じの街だよね」
明輝たちは近所で開催された餅つき大会に参加していた。
お餅をついてみんなに配って食べるお祭りだ。
明輝も烈火に誘われて参加したのだが、てっきり餅を食べられるものだと思っていた。
しかし餅つきをしたのは良い経験だったけど、残念なことが起こった。
まさかの集まった人が多すぎて、丁度明輝と烈火の分が回ってこなかった。
「それで急遽捻り出した苦肉の策が秋に収穫して余っていたサツマイモ」
「でも美味しいから良いでしょー」
「うん。焼き芋は嫌いじゃないからね」
神社の神主のお爺さんがサツマイモを出してくれた。
しかもマッチとアルミホイルを手渡して、「境内に落ち葉が落ちているから集めて焼き芋にすると美味しいんじゃよ」と言ってくれた。
これはするしかない的な空気が立ち込めていたので、餅つき大会が終わった後、アキラたちだけがこうして残り、許可を貰った後に焼き芋をしていた。
何だかこの空気感、この冬の寒空の下と言うこともあり、とても風情があった。
「風情あるよね」
「風情? あるあるー。だってこんな寒い日の下、しかも神社の境内。何かそれっぽいって言うか、やり切った後って感じがするんだよねー」
それにしても高校生になって焼き芋。しかもこうした昔ながらのやり方をすることになるとは思わなかった。
もっと簡単に、鍋に水を引いて蒸かしたり、機械に入れて終わりじゃない。
落ち葉を集める労力のおかげで境内は綺麗になった。
しかも秋空じゃなく冬空の焼き芋。
これ以上変わったことはないと、明輝と烈火は思う。
「にしても良かったよねー。明輝がマッチ点けられて」
「簡単だよ。小学校の理科の授業でもやったでしょ?」
「やったかもだけど、咄嗟に、しかも一発でさー。やっぱりお母さんから教わった的な?」
「ま、まあね」
まさかこんな風に役に立つとは思わなかった。
だけどそのおかげで焼き芋ができている。
せめてライターだったらもっと楽だったのにと、烈火は自分のできることが少なすぎてちょっと退屈な目をしていた。
「もうそろそろ焼き上がるんじゃないかな?」
「如何して分かるのー?」
烈火は木の棒を手にして落ち葉の中を突いてみる明輝に尋ねた。
すると中に入っているサツマイモが少し見えるように落ち葉を避けた。
幾つか穴が空いていた。如何やら硬さを確かめているらしい。
「こうやって突いてみたら分かりやすいんだよ。硬かったら刺さらないからね」
「なるほどー。私、料理なんて全然しないから」
「これくらいは簡単だよ」
とは言え、ボコボコ穴を増やしたりはしない。
適度に突いてみる程度で、アルミホイルが剥がれないように気を付けた。
「うん。もう焼けたね」
「それじゃあ食べよっかー」
火で温まりながら、アルミホイルに巻かれたサツマイモを取り出す。
完全にホクホクの焼き芋が完成していて、明輝と烈火は半分に割ってみた。
「うわぁ、トロットロだ!」
「ホクホクでトロトロ。こんなの絶対美味しいよー」
明輝と烈火はホクホクでトロトロになった黄色い果肉を見た。
口の中に運ぶと、一気に味が解ける。
旨味成分が爆発して、冬の寒さも相まって、美味しさに酔いしれた。
「美味しいねー」
「うん」
「でもさー。やっぱり餅が食べたかったよねー」
「まだそれで言うんだ。もう良いでしょ? おかげで焼き芋が食べられたんだから」
「まあ、そう何だけどねー。口は餅を食べる口になっていたからさー、うーん」
烈火はムッとした表情を浮かべるも、「まあいっか」と言って焼き芋を頬張る。
その姿を見た明輝はふと思った。
「そう言えば烈火もマッチ使えたよね?」
「うん、そうだよ」
「さっきは何で使えないみたいなこと言ったの?」
「その方が面白そうだから?」
「いや、面白くはないでしょ?」
煽てられても明輝はそんなに嬉しくはなかった。
冬の寒空の中、冬休みは終わりへと向かっていた。
もうじき学校が始まる中、明輝と烈火は二人揃って神社に居た。
何故か神社の境内で竹箒で落ち葉を集め、燃えやすいように固めておく。
「こんな感じかな?」
「良いんじゃない? んじゃ、後はコレを入れてーっと」
烈火はサツマイモをアルミホイルでくるんでいた。
数は二つ。それなりに良いサイズで、集めた落ち葉の中に放り込む。
それから落ち葉の中に少し空洞を入れると、明輝はマッチを点けて落ち葉を燃やした。
小さな赤い火花が上がり、素早くパチパチと火種が燃え始めた。
「「おお」」
二人はちょっと感激した。
まさかこの時期、この時間にこんな真似をすることになるとは思いもよらなかった。
それもそのはず、こうなることを予期していなかった。
正直、サツマイモを食べる想定の口を今日は持って来ていない。
「でも何でこんなことになったんだろ」
「仕方ないよー。まさか近所の人たちがここまで餅つき大会に興味があるとは思わなかったからー」
「そうだよね。いっつもやってなかったのに、突然だったもんね。でも、突然のことにもこんな風に楽しく集まれるなんて、いい感じの街だよね」
明輝たちは近所で開催された餅つき大会に参加していた。
お餅をついてみんなに配って食べるお祭りだ。
明輝も烈火に誘われて参加したのだが、てっきり餅を食べられるものだと思っていた。
しかし餅つきをしたのは良い経験だったけど、残念なことが起こった。
まさかの集まった人が多すぎて、丁度明輝と烈火の分が回ってこなかった。
「それで急遽捻り出した苦肉の策が秋に収穫して余っていたサツマイモ」
「でも美味しいから良いでしょー」
「うん。焼き芋は嫌いじゃないからね」
神社の神主のお爺さんがサツマイモを出してくれた。
しかもマッチとアルミホイルを手渡して、「境内に落ち葉が落ちているから集めて焼き芋にすると美味しいんじゃよ」と言ってくれた。
これはするしかない的な空気が立ち込めていたので、餅つき大会が終わった後、アキラたちだけがこうして残り、許可を貰った後に焼き芋をしていた。
何だかこの空気感、この冬の寒空の下と言うこともあり、とても風情があった。
「風情あるよね」
「風情? あるあるー。だってこんな寒い日の下、しかも神社の境内。何かそれっぽいって言うか、やり切った後って感じがするんだよねー」
それにしても高校生になって焼き芋。しかもこうした昔ながらのやり方をすることになるとは思わなかった。
もっと簡単に、鍋に水を引いて蒸かしたり、機械に入れて終わりじゃない。
落ち葉を集める労力のおかげで境内は綺麗になった。
しかも秋空じゃなく冬空の焼き芋。
これ以上変わったことはないと、明輝と烈火は思う。
「にしても良かったよねー。明輝がマッチ点けられて」
「簡単だよ。小学校の理科の授業でもやったでしょ?」
「やったかもだけど、咄嗟に、しかも一発でさー。やっぱりお母さんから教わった的な?」
「ま、まあね」
まさかこんな風に役に立つとは思わなかった。
だけどそのおかげで焼き芋ができている。
せめてライターだったらもっと楽だったのにと、烈火は自分のできることが少なすぎてちょっと退屈な目をしていた。
「もうそろそろ焼き上がるんじゃないかな?」
「如何して分かるのー?」
烈火は木の棒を手にして落ち葉の中を突いてみる明輝に尋ねた。
すると中に入っているサツマイモが少し見えるように落ち葉を避けた。
幾つか穴が空いていた。如何やら硬さを確かめているらしい。
「こうやって突いてみたら分かりやすいんだよ。硬かったら刺さらないからね」
「なるほどー。私、料理なんて全然しないから」
「これくらいは簡単だよ」
とは言え、ボコボコ穴を増やしたりはしない。
適度に突いてみる程度で、アルミホイルが剥がれないように気を付けた。
「うん。もう焼けたね」
「それじゃあ食べよっかー」
火で温まりながら、アルミホイルに巻かれたサツマイモを取り出す。
完全にホクホクの焼き芋が完成していて、明輝と烈火は半分に割ってみた。
「うわぁ、トロットロだ!」
「ホクホクでトロトロ。こんなの絶対美味しいよー」
明輝と烈火はホクホクでトロトロになった黄色い果肉を見た。
口の中に運ぶと、一気に味が解ける。
旨味成分が爆発して、冬の寒さも相まって、美味しさに酔いしれた。
「美味しいねー」
「うん」
「でもさー。やっぱり餅が食べたかったよねー」
「まだそれで言うんだ。もう良いでしょ? おかげで焼き芋が食べられたんだから」
「まあ、そう何だけどねー。口は餅を食べる口になっていたからさー、うーん」
烈火はムッとした表情を浮かべるも、「まあいっか」と言って焼き芋を頬張る。
その姿を見た明輝はふと思った。
「そう言えば烈火もマッチ使えたよね?」
「うん、そうだよ」
「さっきは何で使えないみたいなこと言ったの?」
「その方が面白そうだから?」
「いや、面白くはないでしょ?」
煽てられても明輝はそんなに嬉しくはなかった。
冬の寒空の中、冬休みは終わりへと向かっていた。
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