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◇344 絶対に釣りたいから!

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「それじゃあ何か釣れたら連絡しよっか」
「そうだな。それじゃあ六時間後集合だ」
「「「うん」」」

 アキラたちはそれぞれ別れて釣りスポットを探しに向かった。
 とりあえずの集合時間だけは決めておき、フェルノを残してこの場から姿を消す。

「さーてと、私も釣るぞー!」

 フェルノは早速意気込みを熱く語る。
 とは言え今日が最終日なことは変わらないので、早速釣り糸を垂らした。

「そーれっ!」

 ポチャンと池の表面に波紋が浮かんだ。
 水面から滴ると、釣り針は見えなくなり、後は時間と根気の勝負になる。
 流石に今回は止められない。フェルノはそう決心し、ジッと座って待つことにした。


「この辺りでしょうか?」

 雷斬は水神池の西側にやって来た。
 中域までやって来ると、水流の流れはそれなりに速く、雰囲気もまた変わって見える。
 今の所魚らしき姿は見えないが、とりあえず木陰に入って釣り糸を垂らした。

「何か釣れると良いのですが……」

 雷斬は釣竿を木の枝に引っかける。
 釣り糸が引き込まれるのを期待しつつ、水流と睨めっこすることにした。


「よっと、ほっと! この変よね?」

 ベルは木の枝を伝って移動した。
 枝々の配置を見る限り、地面を歩くよりも安全そうだった。
 北側に回り込んだベルが目にしたのは、とんでもなく速い水流。地面は浸食でえぐり取られていて降りるのは危険だった。

「これじゃあ地面に降りられないじゃない。仕方ないわね。えーっと、この辺りで……あっ!」

 太い木の枝を見つけた。
 ここなら吸われそうだと思い腰を下ろすと、釣り竿が流されないようにしっかりと布で腕に固定する。

「これで良しね。というより、この激流の中で何か釣れるのかしらね?」

 ベルは木の幹に背中を預ける。頬に手を当てながら釣り竿が引くのをジッと待つ。
 とりあえず落ちないことだけ。それだけを考えることにしたベルだった。


 Nightは水神池から流れる水流を辿り、とにかく下降していた。
 まずは緩やかな川を見つけ、魚が泳いでいることを確認したい。
 水神池自体は池の規模が大きいせいもあって、まともに魚やモンスターを発見することは困難。効率を重視したいNightにとっては最悪な場所だった。

「あのまま池の周辺を探し回っていても効率が悪いからな。少しは変化を付けることも必要なはずだ」

 同じ場所に固まっていても釣れないことは明白。
 しかも龍の髭を入手できるスポットは少ない。時間毎に変化し、何処で釣れるのかも分からない。それなら下流の可能性もあるはずだと、賭けにも出ていた。

「釣れればいいんだが……おっ!」

 Nightは小魚が泳ぐ影を見つけた。
 果たして狙ったものが居るかは分からないが、とにかくやってみるしかなかった。

「この辺でいいか。【ライフ・オブ・メイク】!」

 NightはHPを削り、折り畳み式の椅子を用意する。
 さらにはパラソルも準備すると、早速釣りを始める。
 とにかく川の中に影を作らないように配慮しつつ、Nightも頑張るのだった。


「うーん、なかなか釣れないねー」

 フェルノは釣り糸に変化を持たせるため、上下に上げ下げしていた。
 時々引き戻して餌を付け直すと、また池の中に糸を垂らす。その繰り返しをかれこれ一時間ほどやっていた。

「まあ、そう簡単に釣れないよねー。しかもこの辺、私が昨日熱しちゃったからなー」

 フェルノは自業自得だと思った。
 妙に寒々しい風がフェルノのことを包み込むが、それでも諦めずに続けた。
 ここで投げ出すわけにはいかない。やり続ければ報われる。フェルノは首をブンブン振り、何度も何度も繰り返した。すると——

 ピーン!

 釣り糸が張った。水の中に引き込まれそうになって、フェルノは釣竿をしっかり握る。

「くっ! やっと来た当たりを逃さないよー」

 フェルノは当たりがあるので竹竿を適度に動かす。
 魚の動きに合わせて逃げられないようにタイミングを計った。
 ここで逃がしたら次はない。だから絶対に引き上げる。フェルノは真剣な眼差しで激闘を繰り広げる。

「負けない。絶対負けない!」

 釣り糸が引き込まれそうになる。
 それを黙っては見てられず頑張って釣竿を移動させた。
 全身運動をしながら引き摺りが弱まる瞬間を見逃さず、フェルノはじっくり待つ。
 そして——

「ここだ!」

 フェルノは一瞬の隙を突いて、釣竿を持ち上げた。
 すると池の中から影が引き摺りだされ、その姿が露わになる。
 真っ白な魚。いいや、モンスターだ。

「やったぁ! ……ってあれ?」

 フェルノは首を捻った。
 釣り上げた獲物は思った以上に小さい。しかもその姿に見たことがあった。

「これって、昨日の……」

 フェルノが変な顔をした。眉根を寄せて表情を歪める。
 釣り針に掛かった獲物はピクピクと跳ね回っているのだが、フェルノはボーッとしてしまった。

「まあいっか。あっ、ごめんごめん」

 フェルノは釣り針から得物を外す。
 とりあえず捕まえたモンスターを確認することにした。

「多分違うんだろうなぁー」

 手にした魚型モンスターは完全にナマズ。
 フェルノはあまり期待していなかったのだが、それも一瞬で覆され、それを悟ったのは数十秒後のことだった。
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