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◇343 今日中に釣り上げないと
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「と言うことで最終部になっちゃったけど……」
「今日こそは釣るぞー! もう邪魔をするモンスターも居ないもんねー」
一月七日。いよいよ最終日になってしまった。
今日中に龍の髭を入手しないとイベント終了。何の成果も……じゃないが、目的が達成できなくなってしまう。流石にここまで費やしたのなら成功したい。そう思う気持ちが行動力の源になって、継ぎ接ぎのメンバーは全員集合だった。
「昨日の余韻も堪能できませんね」
「昨日は昨日だよー」
「そうは言うが、レッド・キャットフィッシュはかなり強敵だったはずだが……レベルも高かったぞ」
「たったの55でしょ?」
「うっ……いいか、いまレベルが一番低いのはお前なんだぞ?」
勿論レベル差なんて覆して当たり前。
だけどみんな50レベル越えの中、フェルノだけは今だ48。
たった6レベル差だったけれど、それ不相応にレッド・キャットフィッシュは強かったのだ。
「確かに強かったけど、水を得た魚から水を奪っちゃったら大丈夫でしょ?」
「あっ、上手いこと言ったね!」
「えへへー。ありがとうー」
フェルノをアキラは褒めた。
少し恥ずかしそうに頭を掻くと、インベントリの中から釣竿を取り出す。
ここで話は一旦区切って、今日の予定をNightが頃合いを見て話し出した。
「とりあえずだが、龍の髭を入手するにはこの池で釣りをするしかない。しかもスポットはかなり限定的だ。これまで通りのやり方をしても通用しないだろうな」
「それじゃあ如何するの?」
「本来は最善ではないだろうが、各々が釣れそうな場所で粘る。以上だ」
「「「雑」」」
Nightにしては雑な提案だった。
しかしこの雑案を提出したのはもちろんNightではない。
アキラが何となくで呟いたものをNightが代弁してくれたのだ。
「仕方ないだろ。これしか手段は無いんだ」
「それは……そうですよね」
「雷斬も詰まるのね。まあ、Nightの口から言われると違和感あるわね」
「黙れ」
「「はい」」
面白そうにNightを揶揄っていた。
だけど黙るように言われたので二人はひとまず押し黙る。
これ以上話を広げる気が無かったようで、コホンと咳払いをした。
「とにかくだ。今日中に釣り上げないと終わりになる。以上……理解したな」
「「「はーい!」」」
「園児か」
あまりにも屈託のない笑顔だったせいで、Nightは引いてしまった。
とは言え笑顔を向けるだけで、これからやることは根気のいる作業。
もっと言えば果たして達成できるかも分からないので、粘るか見切りをつけるか、本当に些細なことだが、それが試されている気がしたNightだった。
「それで、お前たちは何処に行くんだ?」
「何処にって……決めてないけど」
正直この池の幅がどれほどのものかは判っていない。
たくさんの川に繋がっていることは確かで、何処までが池判定かも定かではない。
そんな中、雷斬とベルは次々言葉を交わした。
「私は西に行ってみます。中域にまで行けば何かあるかもしれません」
「それじゃあ私は北に行ってみるわ。川の流れが速い方が激流に飲まれても耐えられる魚が居るかもしれないわ」
「そうか。それじゃあ私は南にでも行ってみるか。緩やかな川の中も探していないからな」
Nightも合わせて行ってみる場所を決めた。
残るはこの辺り周辺と、東寄りだけど……先にフェルノが手を挙げた。
「はいはーい! 私は昨日、ここの主? を倒したから、ここは任せてよ。責任くらいは取るから」
フェルノはアレを責任と感じていた。
実は昨日、レッド・キャットフィッシュを倒した後に釣り糸を垂らしてみた。だけど何も釣れない結果に終わった。
水温を急激に上げ過ぎた結果、モンスターも普通の魚も逃げてしまった。
そのことを気にしてしまっているせいで、名誉挽回を測る。
「ってことは、私が東に行ったら丁度良いのかな?」
「そうだな」
とは言え一番謎なのは東だ。だって東側は他の方位と異なっていて、地図上にもあまり映っていない。
これが一体何を意味するか。もちろん、怖いのだ。
「ううっ……東側。ちょっぴり不気味だよ」
「それじゃあ私が変わりましょうか?」
雷斬がアキラの身を気にして申し出てくれた。
だけどそんなことをいちいち気にしてはいけない。
アキラは自分自身を奮い立てて、「ううん」と答えた。
「大丈夫だよ。とりあえず行ってみるから」
「そうですか? ですが気を付けてくださいね」
「気を付ける?」
「あー、なるほどね。確かに気を付けないとダメそうよね」
雷斬とベルが少し怖いことを言った。
しかし二人の言うことは悪魔も地図上から見て、何も情報が無いことを危惧してだ。
おまけにNightも追い打ちを掛ける。
「そうだな。東側は何があるか分からない」
「ちょっと、怖いこと言わないでよ。一応行くけど……」
アキラはこれから自分が行く方向をもう一回チラ見した。
何だか不気味な雰囲気があり、今にも霧が立ち込めそうだった。
「今日こそは釣るぞー! もう邪魔をするモンスターも居ないもんねー」
一月七日。いよいよ最終日になってしまった。
今日中に龍の髭を入手しないとイベント終了。何の成果も……じゃないが、目的が達成できなくなってしまう。流石にここまで費やしたのなら成功したい。そう思う気持ちが行動力の源になって、継ぎ接ぎのメンバーは全員集合だった。
「昨日の余韻も堪能できませんね」
「昨日は昨日だよー」
「そうは言うが、レッド・キャットフィッシュはかなり強敵だったはずだが……レベルも高かったぞ」
「たったの55でしょ?」
「うっ……いいか、いまレベルが一番低いのはお前なんだぞ?」
勿論レベル差なんて覆して当たり前。
だけどみんな50レベル越えの中、フェルノだけは今だ48。
たった6レベル差だったけれど、それ不相応にレッド・キャットフィッシュは強かったのだ。
「確かに強かったけど、水を得た魚から水を奪っちゃったら大丈夫でしょ?」
「あっ、上手いこと言ったね!」
「えへへー。ありがとうー」
フェルノをアキラは褒めた。
少し恥ずかしそうに頭を掻くと、インベントリの中から釣竿を取り出す。
ここで話は一旦区切って、今日の予定をNightが頃合いを見て話し出した。
「とりあえずだが、龍の髭を入手するにはこの池で釣りをするしかない。しかもスポットはかなり限定的だ。これまで通りのやり方をしても通用しないだろうな」
「それじゃあ如何するの?」
「本来は最善ではないだろうが、各々が釣れそうな場所で粘る。以上だ」
「「「雑」」」
Nightにしては雑な提案だった。
しかしこの雑案を提出したのはもちろんNightではない。
アキラが何となくで呟いたものをNightが代弁してくれたのだ。
「仕方ないだろ。これしか手段は無いんだ」
「それは……そうですよね」
「雷斬も詰まるのね。まあ、Nightの口から言われると違和感あるわね」
「黙れ」
「「はい」」
面白そうにNightを揶揄っていた。
だけど黙るように言われたので二人はひとまず押し黙る。
これ以上話を広げる気が無かったようで、コホンと咳払いをした。
「とにかくだ。今日中に釣り上げないと終わりになる。以上……理解したな」
「「「はーい!」」」
「園児か」
あまりにも屈託のない笑顔だったせいで、Nightは引いてしまった。
とは言え笑顔を向けるだけで、これからやることは根気のいる作業。
もっと言えば果たして達成できるかも分からないので、粘るか見切りをつけるか、本当に些細なことだが、それが試されている気がしたNightだった。
「それで、お前たちは何処に行くんだ?」
「何処にって……決めてないけど」
正直この池の幅がどれほどのものかは判っていない。
たくさんの川に繋がっていることは確かで、何処までが池判定かも定かではない。
そんな中、雷斬とベルは次々言葉を交わした。
「私は西に行ってみます。中域にまで行けば何かあるかもしれません」
「それじゃあ私は北に行ってみるわ。川の流れが速い方が激流に飲まれても耐えられる魚が居るかもしれないわ」
「そうか。それじゃあ私は南にでも行ってみるか。緩やかな川の中も探していないからな」
Nightも合わせて行ってみる場所を決めた。
残るはこの辺り周辺と、東寄りだけど……先にフェルノが手を挙げた。
「はいはーい! 私は昨日、ここの主? を倒したから、ここは任せてよ。責任くらいは取るから」
フェルノはアレを責任と感じていた。
実は昨日、レッド・キャットフィッシュを倒した後に釣り糸を垂らしてみた。だけど何も釣れない結果に終わった。
水温を急激に上げ過ぎた結果、モンスターも普通の魚も逃げてしまった。
そのことを気にしてしまっているせいで、名誉挽回を測る。
「ってことは、私が東に行ったら丁度良いのかな?」
「そうだな」
とは言え一番謎なのは東だ。だって東側は他の方位と異なっていて、地図上にもあまり映っていない。
これが一体何を意味するか。もちろん、怖いのだ。
「ううっ……東側。ちょっぴり不気味だよ」
「それじゃあ私が変わりましょうか?」
雷斬がアキラの身を気にして申し出てくれた。
だけどそんなことをいちいち気にしてはいけない。
アキラは自分自身を奮い立てて、「ううん」と答えた。
「大丈夫だよ。とりあえず行ってみるから」
「そうですか? ですが気を付けてくださいね」
「気を付ける?」
「あー、なるほどね。確かに気を付けないとダメそうよね」
雷斬とベルが少し怖いことを言った。
しかし二人の言うことは悪魔も地図上から見て、何も情報が無いことを危惧してだ。
おまけにNightも追い打ちを掛ける。
「そうだな。東側は何があるか分からない」
「ちょっと、怖いこと言わないでよ。一応行くけど……」
アキラはこれから自分が行く方向をもう一回チラ見した。
何だか不気味な雰囲気があり、今にも霧が立ち込めそうだった。
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