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◇334 助けてください、妖帖の雅さん
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「それで私たちの所に来たのね」
「はい」
アキラは堂々と答えた。クロユリは呆れるわけではないものの、何か思うところがあるのか頬に手を当てていた。
アキラたちはNightの予測から、龍の髭の在処をモミジヤ周辺に絞った。
理由は単純で、モミジヤは現実世界における日本の近畿地方。特に奈良県や京都府をモチーフにしている節があり、その情景が色濃い。
だから龍の髭と言う何処となく古典的な雰囲気を思わせる名称に薄望みを掛けたのだ。
「まさかそんなことで私たちの所に来るなんて思わなかったわ。でも継ぎ接ぎの皆さんらしいですね」
クロユリは困っていた。
まさかそんなことで急に来られるとは思っていなかったようで、頭の中で話を整理した。
「とりあえず事情は把握しました。皆さんも龍の髭を追い求めているんですね」
「皆さんも?」
「ええ。そこまで参加しているギルドは多くないですが、このイベントを楽しんでいる人達も多少は居ます。私たちもその一つでした」
クロユリは含みを持たせて答えた。
如何やら少し前までは頑張っていたみたいだけど、今は参加していないようで、何故かと悟った。答えはとても簡単で、クロユリたちは既にイベントをこなしてしまった。
「私たちのギルドは既に龍の髭を入手していますよ」
「「「ええっ!?」」」
まさか情報を求めてやってきたら、既に達成しているとは思わなかった。
これは飛んで火にいる夏の虫。とまではいかないにせよ、情報を教えて貰うチャンスと思い、アキラはクロユリに尋ねた。
しかしクロユリは口をつぐんだまま教えてくれなかった。
「クロユリさん、龍の髭って何ですか?」
「さあ、何でしょうね?」
「……クロユリさん? 揶揄っていますよね。見せてください!」
「……それはできませんね。本物は自分達で入手して、自分達で管理するべきですよ」
クロユリは意地悪をした。アキラたちは表情を歪めるが、Nightは原因を探った。
アキラも気を取り直してクロユリの表情を窺うも、何だか訳ありそうなのは判った。 だけど何が原因なのか、そこまでは特定できないが、Nightの「なるほどな」の一言が全てを解決してくれた。
「期間終了までは龍の髭の正体を明かしてはならない」
「そんなルールがあるの!」
「公言した場合はペナルティとして一定期間ログインの制限を行う……か」
とんでもないルールが設けられていた。
アキラたちは全員「嘘っ!?」と驚いて固まってしまったが、如何やら真実のようで「はい」とクロユリは頷く。
これは思った以上に手強くて深い。胸の奥がざわついて、アキラたちは震えた。
「とは言えそれだけ意味のある物ということは確定した」
「だけどまさかそんなルールがあるなんて思わなかったねー」
「今回のイベントが特殊なんですよ」
クロユリはようやく口を開いた。
また相手を誑かして手の内を悟らせないようにする魂胆ではないみたいで安心したが、逆にそれほどまでのことをする龍の髭に付いてアキラは知りたいと思った。
だからこそ正体を聞くなんて野暮な真似はしない。欲しいのは如何やって入手するかだ。それさえ分かれば後は自力で頑張る。
もうここまで来たのに引き返すなんてしない。固い信念で尋ねると、クロユリの唇が警戒に言葉を紡いだ。
「方法は至って単純ですよ」
「単純?」
「はい。方法は釣り一択です」
クロユリは淡々と呟いた。
アキラたちは言葉の意味を深掘ろうとしたが、如何やらそのままのことのようで首を捻った。まさかここに来て普通に釣りとは誰も想像していなかった。
「何が釣れるかは教えてあげられませんが、場所と方法は教えられますよ」
「教えても良いんですか? 釣ってことは魚系になるんじゃ……」
「ソレを知るのは自分の目で見てからですよ。とりあえず、場所はモミジヤの東にある巨大な湿地帯の中にある池、方法は釣りです」
クロユリはアキラたちに説明してくれた。
如何やらこの街の人たちはNightの予想通り龍の髭に関する情報を知っている。
それもそのはず街の掲示板に突然張り出されたらしく、底に書いてあったことを事細かに教えてくれた。
話を聞いているだけではまだピンと来なかった。
とは言え大変なことくらいは一瞬で想像できてしまい、アキラたちは根気がいると全員の中で意思伝達ができた。
「大変そうなイベントだね」
「しかも情報が薄いな。もっと詳しく何が有効か分かればよかったが……」
「そう上手くはいかないね。しっかりできているよー」
困り顔を浮かべるアキラたち。それを見兼ねてか、クロユリはアドバイスをしてくれた。
「一つアドバイスをしてあげますよ」
「アドバイス?」
「龍の髭を入手できる釣りスポットは時間毎に変化しますよ。同じ場所で連続して来るパターンもあるそうなので、全員で固まるのは控えた方が良いですよ」
これはかなり有用なアドバイスだった。
アキラたちはクロユリに感謝すると、早速湿地帯に行くことにした。
多分今日一日じゃ終わらない。何となくそんな気がした。
「はい」
アキラは堂々と答えた。クロユリは呆れるわけではないものの、何か思うところがあるのか頬に手を当てていた。
アキラたちはNightの予測から、龍の髭の在処をモミジヤ周辺に絞った。
理由は単純で、モミジヤは現実世界における日本の近畿地方。特に奈良県や京都府をモチーフにしている節があり、その情景が色濃い。
だから龍の髭と言う何処となく古典的な雰囲気を思わせる名称に薄望みを掛けたのだ。
「まさかそんなことで私たちの所に来るなんて思わなかったわ。でも継ぎ接ぎの皆さんらしいですね」
クロユリは困っていた。
まさかそんなことで急に来られるとは思っていなかったようで、頭の中で話を整理した。
「とりあえず事情は把握しました。皆さんも龍の髭を追い求めているんですね」
「皆さんも?」
「ええ。そこまで参加しているギルドは多くないですが、このイベントを楽しんでいる人達も多少は居ます。私たちもその一つでした」
クロユリは含みを持たせて答えた。
如何やら少し前までは頑張っていたみたいだけど、今は参加していないようで、何故かと悟った。答えはとても簡単で、クロユリたちは既にイベントをこなしてしまった。
「私たちのギルドは既に龍の髭を入手していますよ」
「「「ええっ!?」」」
まさか情報を求めてやってきたら、既に達成しているとは思わなかった。
これは飛んで火にいる夏の虫。とまではいかないにせよ、情報を教えて貰うチャンスと思い、アキラはクロユリに尋ねた。
しかしクロユリは口をつぐんだまま教えてくれなかった。
「クロユリさん、龍の髭って何ですか?」
「さあ、何でしょうね?」
「……クロユリさん? 揶揄っていますよね。見せてください!」
「……それはできませんね。本物は自分達で入手して、自分達で管理するべきですよ」
クロユリは意地悪をした。アキラたちは表情を歪めるが、Nightは原因を探った。
アキラも気を取り直してクロユリの表情を窺うも、何だか訳ありそうなのは判った。 だけど何が原因なのか、そこまでは特定できないが、Nightの「なるほどな」の一言が全てを解決してくれた。
「期間終了までは龍の髭の正体を明かしてはならない」
「そんなルールがあるの!」
「公言した場合はペナルティとして一定期間ログインの制限を行う……か」
とんでもないルールが設けられていた。
アキラたちは全員「嘘っ!?」と驚いて固まってしまったが、如何やら真実のようで「はい」とクロユリは頷く。
これは思った以上に手強くて深い。胸の奥がざわついて、アキラたちは震えた。
「とは言えそれだけ意味のある物ということは確定した」
「だけどまさかそんなルールがあるなんて思わなかったねー」
「今回のイベントが特殊なんですよ」
クロユリはようやく口を開いた。
また相手を誑かして手の内を悟らせないようにする魂胆ではないみたいで安心したが、逆にそれほどまでのことをする龍の髭に付いてアキラは知りたいと思った。
だからこそ正体を聞くなんて野暮な真似はしない。欲しいのは如何やって入手するかだ。それさえ分かれば後は自力で頑張る。
もうここまで来たのに引き返すなんてしない。固い信念で尋ねると、クロユリの唇が警戒に言葉を紡いだ。
「方法は至って単純ですよ」
「単純?」
「はい。方法は釣り一択です」
クロユリは淡々と呟いた。
アキラたちは言葉の意味を深掘ろうとしたが、如何やらそのままのことのようで首を捻った。まさかここに来て普通に釣りとは誰も想像していなかった。
「何が釣れるかは教えてあげられませんが、場所と方法は教えられますよ」
「教えても良いんですか? 釣ってことは魚系になるんじゃ……」
「ソレを知るのは自分の目で見てからですよ。とりあえず、場所はモミジヤの東にある巨大な湿地帯の中にある池、方法は釣りです」
クロユリはアキラたちに説明してくれた。
如何やらこの街の人たちはNightの予想通り龍の髭に関する情報を知っている。
それもそのはず街の掲示板に突然張り出されたらしく、底に書いてあったことを事細かに教えてくれた。
話を聞いているだけではまだピンと来なかった。
とは言え大変なことくらいは一瞬で想像できてしまい、アキラたちは根気がいると全員の中で意思伝達ができた。
「大変そうなイベントだね」
「しかも情報が薄いな。もっと詳しく何が有効か分かればよかったが……」
「そう上手くはいかないね。しっかりできているよー」
困り顔を浮かべるアキラたち。それを見兼ねてか、クロユリはアドバイスをしてくれた。
「一つアドバイスをしてあげますよ」
「アドバイス?」
「龍の髭を入手できる釣りスポットは時間毎に変化しますよ。同じ場所で連続して来るパターンもあるそうなので、全員で固まるのは控えた方が良いですよ」
これはかなり有用なアドバイスだった。
アキラたちはクロユリに感謝すると、早速湿地帯に行くことにした。
多分今日一日じゃ終わらない。何となくそんな気がした。
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