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◇315 流れ星さん?

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 斬禍に誘われてやって来た龍星神社はとっても綺麗な所だった。
 山の中腹にあるポツンとした神社だからか空気も澄んでいて、木々も周りを囲んでいた。
 
 地面には特殊な結界でも張ってあるのか、木くずも葉っぱも落ちていなくて掃除が行き届いていた。
 さらには御神木の木には大きな注連縄が巻かれていた。

 これだけでも魅力的な神社だけど、何よりも目を惹くものがあった。
 それは赤い神社の鳥居を潜った先、二対の龍がお互いを見つめ合っていた。

「凄いね。普通ここは狛犬だよね?」
「確かにそうだな。狐が代わりを果たす神社はあるが、まさか龍が監視役とは……驚きだな」

 蒼伊でも見たことが無かった。
 そうなるともちろんのことだが明輝と烈火は一層驚きを増していて、他にも何か特殊なものは無いかとキョロキョロしていた。

 すると手水舎の所にも杓子が置かれているのだが、黒い龍の口から水が絶えず出続けているのを見つけた。ここは……普通かなと思った。
 おまけに拝殿の方を見てみると、ここも立派な造りで上の方には巨大な龍が巻き付いていた。

「とことん龍尽くしだね!」
「そうですね。ここ龍星神社では昔から龍を祭っているんですよ」
「と言うことは池のような場所もあるのか?」
「池ですか? 確かにこの山の山頂付近には巨大な池がありますが……」
「そうか。だから龍なのかもな」

 蒼伊は一人解った風だった。
 それが何だか嫌で、明輝は早速聞いていた。

「蒼伊、何で龍なの?」
「昔の日本人は水=龍神と称していた例があるからな。その名残だろ」
「名残? えーっと、水が神様なの?」
「アニメや漫画でも引用されるだろ。昔の日本人は龍神は水を司る神様としてあがめられてきている。その理由は水はあらゆる生命の母とされている。命を持つ者は全て水を根源としているため、神聖な水には龍が宿り穢れや邪気を祓う尊い存在として神仏化している可能性も否定できないはずだ。それに……」

 蒼伊の説明はその後も続いた。
 完璧に理解したわけではないけれど、蒼伊の知識が凄いと思いつつ要所を掴みながら頭の中で納得できるように整え直すと、何だかコクコクと頷いてしまった。
 
「「「なるほど」」」

 蒼伊の説明を聞いて、明輝たちは納得した。
 確かにオカルト番組でも大きな池や湖では昔から龍が神聖視されているとか何とか言われていた。
 昔の日本人特有の考えだとすれば、いくら建てられた時期が近くてもそれを踏まえている可能性は大いにあった。

「それじゃあここも同じかもね!」
「でも龍って言われてもGAMEの中じゃないんだからピンとは来ないよね」
「それもそうかもだけど……でも面白いよ!」

 明輝は話を大真面目に信じているわけではなかった。
 だけど面白いと思っていてニコニコ笑顔になった。
 しかし、その笑みはすぐに消えた。

「確かにその説もありますが、ここは違いますよ」

 突然背後から音もなく誰かが近づき、声を掛けてきた。
 びっくりした明輝たちは振り返ると、そこに居たのは巫女装束に身を包んだ黒髪の女性だった。

「ここ龍星神社は確かに龍を祀ってはいます。ですがそれだけではないんですよ」
「「「はぁー」」」

 女性はゆっくりとこの神社のことを話してくれそうだった。
 だけど突然のことで驚き、明輝は話を途中で遮った。

「あ、あの。そ、その前に何ですけど……」
「はい、如何かしましたか?」

 「如何かしましたか?」と聞かれても「如何かした」としか言いようが無かった。
 明輝と蒼伊は目配せをしたのだが、先に口を開いたのは明輝だった。

「だ、誰ですか?」
「誰と言われまして、この神社の神主兼巫女を務めて者ですよ」

 確かにそうだとは思った。
 だけど神社の神主と巫女を兼任している何てあまり聞いたことが無かった。
 普通神主がいて初めて巫女の存在が果たされるのでは? と蒼伊は頭の中の知識を総動員させた。

「すみません皆さん」

 斬禍の声が聞こえた。
 当たり前のことだけど斬禍は知っているようで、前に出ると女性の隣に立った。
 目元は少し違うけれど、スタイルや髪の結い方など特徴が一杯重なった。

「えーっと、もしかして従姉的な?」
「はい。こちらは私の|従姉《ねえさ
》さんです」

 斬禍はそう答えた。
 すると「ふふっ」と笑いながら紹介された女性は嬉しそうに答えるのだった。

「初めまして。私は流星降美槍ながれほしふみやです。よろしくです、斬禍のお友達の皆さん」

 にこっと笑みを浮かべていた。
 何だか不思議な魅力を感じる明輝たちは十秒程度固まってしまった。

「ふ、降美槍さん?」
「はい。流れる星、美しい槍が降ると書いて降美槍です。以後、お見知りおきを」

 丁寧な対応の人だった。
 だけど明輝たちは飲み込むまで時間が掛かった。
 気配が一切なく、スッと背後に忍び寄られるなんて普通思わないからだ。
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