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◇281 星を完成させるには
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アキラたちはサンタクロース風のNPCに頼まれてしまった。
しかし星を完成させると言っても、残りのパーツが何処にあるのか全く分からなかった。
「ちなみにその星、ベツヘレムはどれくらい完成しておるんじゃ?」
「えーっと、このくらいです」
「どれどれ……おお! もう少しじゃの。ふぉっふぉっふぉっ! これならすぐじゃな」
「すぐだと? 残りのパーツの在処も分からない。例え手にしたとしても、クリスマスツリーに飾る手段も無いんだ。如何する気だ?」
「その辺りは心配しなくても良いぞ。とにかくお嬢ちゃんたちは星を完成させることだけを考えればいいんじゃ」
サンタクロース風のNPCは無茶苦茶を言ってきた。
しかしこの手のクエストは後を引き攣るとNightは知っていた。
この世界はVRだ。人間の脳波や深層心理を利用した巨大なプラットフォームを舞台に世界を構築しているのだ。
つまりここで起きた現象は、少なからず現実にも影響を及ぼしてしまうのだ。
良い方向に転ぶ可能性も悪い方向に転ぶ可能性も秘めていた。
あくまでも実験的な立ち位置であるのは変わらないが、それを決めるのは人間だった。
「私たちは契約書を書いている。ここでの出来事で生じたことは現実にも影響が出るが、今の時代ではそれすら流されてしまうからな。……仕方ない。今回は私たちが頑張ってやるか」
Nightの中で何かが決まった。
アキラたちもNightがやる気を出してくれたので百人力だと思い、サンタクロース風のNPCに尋ねた。
「分かりました。私たちは急いで星を完成させます」
「任せてよー! って、如何やって完成させようか?」
「ふぉっふぉっふぉっ! 頼もしいの。そうじゃな、残りはここから北に出現した猪の頭部に埋め込まれているはずじゃ!」
「「「は、はい?」」」
これはもしかしてヒントだろうか?
おそらくヒントではあるはずだが、あまりに直接的すぎて逆に怪しんでしまった。
「ほ、本当ですか!」
しかしアキラは食い付いた。
何かを確信したのか、目を見開いていた。
こうなったアキラはかなり信用できるので、フェルノも「そうなのー?」と合いの手を入れた。
「ふぉっふぉっふぉっ! 本当じゃとも。儂を誰だと思っているんじゃ?」
「「サンタクロース!」」
「そうじゃよ。儂はサンタクロースじゃ!」
アキラとフェルノは流れでサンタクロース風のNPCをサンタクロースと言うことにした。
その様子を後ろから見ていたNightは「子供か」とジト目になっていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
街の喧騒とは真逆でとても静かな夜だった。
冷たい空気が頬を突き、寒空が上空に広がっていた。
幸い雪は降っていなかった。
だけど月明かりが出ているとはいえ、黒雲が出てきていた。
これは途中で降る可能性が出てきた。
そうなればホワイトクリスマスだ。
「ううっ、寒いわね。それで、これから何を倒しに行くのよ?」
「えっとね、猪だって」
「「猪!?」」
雷斬とベルは驚いていた。
まさかクリスマスイヴでもそんな地味なモンスターと戦うとは思わなかった。
「クリスマスイヴなのに、また地味なモンスターね」
「そ、そうだよね。私も思ってた」
あの場の空気だと誰も口出しできなかった。
とにかく発生した緊急クエストとこれからのことを考慮して結果、無理にでも押し通すしかなかった。
「とは言え猪か。クリスマスイブ限定のイベントとして用意されているのなら相当強いだろうな」
「やっぱりそうなの?」
「おそらくな。私が運営ならそうする」
その分報酬も豪華にすることでイベント限定感を強めにする。
大抵のゲーマーはイベントにも真っ当に取り組んでくれるので、その分報酬が強ければ強いほど取り組む意欲も増すのだ。
特にこのGAMEの場合は報酬の意味が分らないので、今回みたいにスルーされることも多かった。
今アキラたちはその現状に立ち会っていた。
「ちなみに報酬ってどんな感じかな?」
「報酬か……無いかもしれないな」
「ああ、無いってパターンかー。まあ無事に済むのが一番の報酬かもねー」
報酬を幾ら貰っても特に使い道が分からなかった。
だからアキラたちは基本的に報酬をもらって嬉しいけれど、人助けだったり、流れでクエストを引き受けていた。
それでもレベル上げはできるし、副産物が発生して美味しかった。
Night一応納得する答えを考えていたのだが、アキラたちはそこまで気にしていなかった。
「とは言え、猪のモンスターってどんな感じかな?」
「この間のハウリングボアーみたいな?」
「それだけ味気ないな。同じグラフィックを使い回してはいないとは思うが……」
などとGAME的なメタ予想をしてしまった。
それだけ寒空の下は答える格好をしていたので、脳にまで思考が巡っていなかった。
「見てよアレ。目の前に影が出て来たわよ」
「本当ですね。……かなり大柄ですが……」
ベルと雷斬が指を指した。
しかしNightは眉根を寄せていた。
「いや、アレじゃないか?」
Nightは眉根を寄せて怪しんだ。
すると黒い影がゆっくりと動き振り返った。
ギラリと赤いものが月明かりを受けて光っていた。
アキラたちは身構え、二本の鋭い牙の前に猪だと確定した。
しかし星を完成させると言っても、残りのパーツが何処にあるのか全く分からなかった。
「ちなみにその星、ベツヘレムはどれくらい完成しておるんじゃ?」
「えーっと、このくらいです」
「どれどれ……おお! もう少しじゃの。ふぉっふぉっふぉっ! これならすぐじゃな」
「すぐだと? 残りのパーツの在処も分からない。例え手にしたとしても、クリスマスツリーに飾る手段も無いんだ。如何する気だ?」
「その辺りは心配しなくても良いぞ。とにかくお嬢ちゃんたちは星を完成させることだけを考えればいいんじゃ」
サンタクロース風のNPCは無茶苦茶を言ってきた。
しかしこの手のクエストは後を引き攣るとNightは知っていた。
この世界はVRだ。人間の脳波や深層心理を利用した巨大なプラットフォームを舞台に世界を構築しているのだ。
つまりここで起きた現象は、少なからず現実にも影響を及ぼしてしまうのだ。
良い方向に転ぶ可能性も悪い方向に転ぶ可能性も秘めていた。
あくまでも実験的な立ち位置であるのは変わらないが、それを決めるのは人間だった。
「私たちは契約書を書いている。ここでの出来事で生じたことは現実にも影響が出るが、今の時代ではそれすら流されてしまうからな。……仕方ない。今回は私たちが頑張ってやるか」
Nightの中で何かが決まった。
アキラたちもNightがやる気を出してくれたので百人力だと思い、サンタクロース風のNPCに尋ねた。
「分かりました。私たちは急いで星を完成させます」
「任せてよー! って、如何やって完成させようか?」
「ふぉっふぉっふぉっ! 頼もしいの。そうじゃな、残りはここから北に出現した猪の頭部に埋め込まれているはずじゃ!」
「「「は、はい?」」」
これはもしかしてヒントだろうか?
おそらくヒントではあるはずだが、あまりに直接的すぎて逆に怪しんでしまった。
「ほ、本当ですか!」
しかしアキラは食い付いた。
何かを確信したのか、目を見開いていた。
こうなったアキラはかなり信用できるので、フェルノも「そうなのー?」と合いの手を入れた。
「ふぉっふぉっふぉっ! 本当じゃとも。儂を誰だと思っているんじゃ?」
「「サンタクロース!」」
「そうじゃよ。儂はサンタクロースじゃ!」
アキラとフェルノは流れでサンタクロース風のNPCをサンタクロースと言うことにした。
その様子を後ろから見ていたNightは「子供か」とジト目になっていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
街の喧騒とは真逆でとても静かな夜だった。
冷たい空気が頬を突き、寒空が上空に広がっていた。
幸い雪は降っていなかった。
だけど月明かりが出ているとはいえ、黒雲が出てきていた。
これは途中で降る可能性が出てきた。
そうなればホワイトクリスマスだ。
「ううっ、寒いわね。それで、これから何を倒しに行くのよ?」
「えっとね、猪だって」
「「猪!?」」
雷斬とベルは驚いていた。
まさかクリスマスイヴでもそんな地味なモンスターと戦うとは思わなかった。
「クリスマスイヴなのに、また地味なモンスターね」
「そ、そうだよね。私も思ってた」
あの場の空気だと誰も口出しできなかった。
とにかく発生した緊急クエストとこれからのことを考慮して結果、無理にでも押し通すしかなかった。
「とは言え猪か。クリスマスイブ限定のイベントとして用意されているのなら相当強いだろうな」
「やっぱりそうなの?」
「おそらくな。私が運営ならそうする」
その分報酬も豪華にすることでイベント限定感を強めにする。
大抵のゲーマーはイベントにも真っ当に取り組んでくれるので、その分報酬が強ければ強いほど取り組む意欲も増すのだ。
特にこのGAMEの場合は報酬の意味が分らないので、今回みたいにスルーされることも多かった。
今アキラたちはその現状に立ち会っていた。
「ちなみに報酬ってどんな感じかな?」
「報酬か……無いかもしれないな」
「ああ、無いってパターンかー。まあ無事に済むのが一番の報酬かもねー」
報酬を幾ら貰っても特に使い道が分からなかった。
だからアキラたちは基本的に報酬をもらって嬉しいけれど、人助けだったり、流れでクエストを引き受けていた。
それでもレベル上げはできるし、副産物が発生して美味しかった。
Night一応納得する答えを考えていたのだが、アキラたちはそこまで気にしていなかった。
「とは言え、猪のモンスターってどんな感じかな?」
「この間のハウリングボアーみたいな?」
「それだけ味気ないな。同じグラフィックを使い回してはいないとは思うが……」
などとGAME的なメタ予想をしてしまった。
それだけ寒空の下は答える格好をしていたので、脳にまで思考が巡っていなかった。
「見てよアレ。目の前に影が出て来たわよ」
「本当ですね。……かなり大柄ですが……」
ベルと雷斬が指を指した。
しかしNightは眉根を寄せていた。
「いや、アレじゃないか?」
Nightは眉根を寄せて怪しんだ。
すると黒い影がゆっくりと動き振り返った。
ギラリと赤いものが月明かりを受けて光っていた。
アキラたちは身構え、二本の鋭い牙の前に猪だと確定した。
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