275 / 550
◇273 霧の探偵(GAMEタイトルです)
しおりを挟む
ディスプレイに映るのは、霧のエフェクトが揺ら揺らしているGAMEだった。
背景は全体的に暗めだが、何処となく都会の街並みがぼんやりと映っていた。
けれど霧のせいで良く見えなかったが、これは仕様だろうと納得した。
「嘘でしょ! コレって、mist of detectiveだよね! やっぱりそうだよ、間違いない」
「急に如何したの?」
「しかも私が知らないタイトルだよ。ナンバリングの3もそうだけど、サブタイの北海道に消えた涙って何?」
「落ち着け。あくまでもコレはβ版だ」
蒼伊はそう答えた。
しかし明輝はピンと来ておらず、如何して烈火がはしゃいでいるのかも、蒼伊がβ版を持っているのかも分からなかった。
「烈火、落ち着いて」
「ご、ごめん。はしゃぎすぎちゃったよ!」
「如何してそんなに楽しそうなの?」
「それはね。この作品がとっても好きだからだよ。きっと明輝もハマると思うよ?」
「そ、そうなの? ねえ蒼伊……蒼伊?」
蒼伊は珍しく固まっていた。
耳や頬を少し赤らめていた。
何か恥ずかしいことでもあるのかと想像するが、嬉しさの方が大きく出ていた。
明輝にはそれが分かった。
「蒼伊如何したの? 嬉しいことでもあった?」
「なっ!? 何で分かった」
「分かるよ。だって私だよ?」
「……それは理由になってない」
カウンターを返されてしまった。
しかし明輝は首を捻り、冷静にGAMEの質問をした。
「ちなみにコレはどんなGAMEなの?」
「コレか? これはな、いわゆる探偵もののアクションアドベンチャーだな。主人公は二十七歳のしがない私立探偵で頭脳明晰だがやる気が無いんだ。しかしいつも面倒な事件に巻き込まれ結果として事件を解決している。これは三作目で、簡単に言えば舞台が北海道になりそこでも事件が起きるって話だ」
「へぇー」
ちょっと面白そうだった。
明輝は早く遊びたいと思ったが、烈火が得意げに話し出した。
「このGAMEってマイナー寄りなんだけど、累計で二十万本も売れているんだよ!」
「二十万本は凄いね」
「だよねだよね。最初は六年前でインディーズGAMEだったけど、四年前に出た二作目からは一般発売されたんだけど、GAME好きからは広く親しまれているんだ。完成度がかなり高くて、噂だとプログラミングは中学生がたった一人でしているんだって」
「凄い! 蒼伊みたいだね」
「だよねー。ってまさか!?」
蒼伊が完全に黙っていた。
マウスカーソルをクルクル回している辺りから気が付いていたが、よっぽど嬉しいようだ。
態度から判ったが、蒼伊はコレを自慢したかった。
しかし思った以上の好印象についついいつもは抑え込んでいた、普段の自分とは違う自分が湧き立ってしまったようだ。
「蒼伊?」
「まさかここまで知られているとはな。意外だった」
「私もだよー。だってこんなマイナー寄りなのに完成度の高いGAMEをほとんど一人で作ってる何てさ」
「暇だからな。それに最初は気まぐれで作ったものが、いつしかここまで成長するとは思わなかった」
「ってことは販売元の会社も?」
「まあな」
如何やら烈火はピンと来たようだ。
明輝は尋ねてみると、蒼伊が持っている株の子会社が売っているそうだ。
しかもその会社は夜野家も一部噛んでいるようだ。世の中って狭いと感じた。
「まあ、夜野家が噛んでいるというよりは私が……まあいいか」
蒼伊は何か言おうとした。
しかしすぐに言葉を詰まらせて、自分の中だけで完結させた。
これ以上その話を蒸し返すことはせず、GAME画面へと視線を戻した。
「とりあえずオープニングは長いから飛ばすぞ」
「えっ? 飛ばしちゃうんだ」
「当たり前だ。五分もある映像、誰が見たいんだ。そんなのPVだけで十分だろ」
蒼伊はオープニングが始まると早速飛ばしてしまった。
明輝は気になっていたので観たかったが、製品版が出てからにした。
「とりあえずWASDでキャラクターを動かして、マウスで回転。後はSpaceとShiftに適宜説明に出るキーを押すんだ」
「う、うん……コレって下手したら指攣るよね?」
「可能性はあるな。とりあえずコイツはβ版だ。所々に不具合が……」
「うーん、プログラム自体には不具合は無いと思うよ? 快適快適……あ、あれ?」
「如何した!?」
明輝は何かに気が付いた。
蒼伊は不安になったが、ディスプレイを指さすと、そこに映し出されているビルの一部が溶けていた。
「コレって不具合?」
「そうだな。3Dに不備か。報告が必要だな」
蒼伊はスマホでメモを取っていた。
如何やら明輝は気が付いてしまった。遊ぶためではなく、チェックのために呼ばれたようだ。
「まあいっか。楽しいもん……あれ? この建物入れないよ」
「いや、それは仕様だ」
「仕様なんだ! って、コレ何したらいいの?」
明輝は今更気になった。
すると蒼伊が何か操作をし始め、すると別のマップに飛べるようになった。
「とりあえず全マップのチェックだ」
「や、やっぱりそうなんだ……」
明輝は気が付いてしまった。
如何やら不具合のチェックが目的だった。
「ま、まあ遊べるだけ良いよね。って、烈火さん?」
烈火は黙っていた。
ベッドに横になり置いてあった歴史の教科書を眺めていた。漫画家と思ったけれど、進学校の教科書が気になったようだ。とは言え、全然ページが開かれていないので、「か、固い」と唸っていた。
背景は全体的に暗めだが、何処となく都会の街並みがぼんやりと映っていた。
けれど霧のせいで良く見えなかったが、これは仕様だろうと納得した。
「嘘でしょ! コレって、mist of detectiveだよね! やっぱりそうだよ、間違いない」
「急に如何したの?」
「しかも私が知らないタイトルだよ。ナンバリングの3もそうだけど、サブタイの北海道に消えた涙って何?」
「落ち着け。あくまでもコレはβ版だ」
蒼伊はそう答えた。
しかし明輝はピンと来ておらず、如何して烈火がはしゃいでいるのかも、蒼伊がβ版を持っているのかも分からなかった。
「烈火、落ち着いて」
「ご、ごめん。はしゃぎすぎちゃったよ!」
「如何してそんなに楽しそうなの?」
「それはね。この作品がとっても好きだからだよ。きっと明輝もハマると思うよ?」
「そ、そうなの? ねえ蒼伊……蒼伊?」
蒼伊は珍しく固まっていた。
耳や頬を少し赤らめていた。
何か恥ずかしいことでもあるのかと想像するが、嬉しさの方が大きく出ていた。
明輝にはそれが分かった。
「蒼伊如何したの? 嬉しいことでもあった?」
「なっ!? 何で分かった」
「分かるよ。だって私だよ?」
「……それは理由になってない」
カウンターを返されてしまった。
しかし明輝は首を捻り、冷静にGAMEの質問をした。
「ちなみにコレはどんなGAMEなの?」
「コレか? これはな、いわゆる探偵もののアクションアドベンチャーだな。主人公は二十七歳のしがない私立探偵で頭脳明晰だがやる気が無いんだ。しかしいつも面倒な事件に巻き込まれ結果として事件を解決している。これは三作目で、簡単に言えば舞台が北海道になりそこでも事件が起きるって話だ」
「へぇー」
ちょっと面白そうだった。
明輝は早く遊びたいと思ったが、烈火が得意げに話し出した。
「このGAMEってマイナー寄りなんだけど、累計で二十万本も売れているんだよ!」
「二十万本は凄いね」
「だよねだよね。最初は六年前でインディーズGAMEだったけど、四年前に出た二作目からは一般発売されたんだけど、GAME好きからは広く親しまれているんだ。完成度がかなり高くて、噂だとプログラミングは中学生がたった一人でしているんだって」
「凄い! 蒼伊みたいだね」
「だよねー。ってまさか!?」
蒼伊が完全に黙っていた。
マウスカーソルをクルクル回している辺りから気が付いていたが、よっぽど嬉しいようだ。
態度から判ったが、蒼伊はコレを自慢したかった。
しかし思った以上の好印象についついいつもは抑え込んでいた、普段の自分とは違う自分が湧き立ってしまったようだ。
「蒼伊?」
「まさかここまで知られているとはな。意外だった」
「私もだよー。だってこんなマイナー寄りなのに完成度の高いGAMEをほとんど一人で作ってる何てさ」
「暇だからな。それに最初は気まぐれで作ったものが、いつしかここまで成長するとは思わなかった」
「ってことは販売元の会社も?」
「まあな」
如何やら烈火はピンと来たようだ。
明輝は尋ねてみると、蒼伊が持っている株の子会社が売っているそうだ。
しかもその会社は夜野家も一部噛んでいるようだ。世の中って狭いと感じた。
「まあ、夜野家が噛んでいるというよりは私が……まあいいか」
蒼伊は何か言おうとした。
しかしすぐに言葉を詰まらせて、自分の中だけで完結させた。
これ以上その話を蒸し返すことはせず、GAME画面へと視線を戻した。
「とりあえずオープニングは長いから飛ばすぞ」
「えっ? 飛ばしちゃうんだ」
「当たり前だ。五分もある映像、誰が見たいんだ。そんなのPVだけで十分だろ」
蒼伊はオープニングが始まると早速飛ばしてしまった。
明輝は気になっていたので観たかったが、製品版が出てからにした。
「とりあえずWASDでキャラクターを動かして、マウスで回転。後はSpaceとShiftに適宜説明に出るキーを押すんだ」
「う、うん……コレって下手したら指攣るよね?」
「可能性はあるな。とりあえずコイツはβ版だ。所々に不具合が……」
「うーん、プログラム自体には不具合は無いと思うよ? 快適快適……あ、あれ?」
「如何した!?」
明輝は何かに気が付いた。
蒼伊は不安になったが、ディスプレイを指さすと、そこに映し出されているビルの一部が溶けていた。
「コレって不具合?」
「そうだな。3Dに不備か。報告が必要だな」
蒼伊はスマホでメモを取っていた。
如何やら明輝は気が付いてしまった。遊ぶためではなく、チェックのために呼ばれたようだ。
「まあいっか。楽しいもん……あれ? この建物入れないよ」
「いや、それは仕様だ」
「仕様なんだ! って、コレ何したらいいの?」
明輝は今更気になった。
すると蒼伊が何か操作をし始め、すると別のマップに飛べるようになった。
「とりあえず全マップのチェックだ」
「や、やっぱりそうなんだ……」
明輝は気が付いてしまった。
如何やら不具合のチェックが目的だった。
「ま、まあ遊べるだけ良いよね。って、烈火さん?」
烈火は黙っていた。
ベッドに横になり置いてあった歴史の教科書を眺めていた。漫画家と思ったけれど、進学校の教科書が気になったようだ。とは言え、全然ページが開かれていないので、「か、固い」と唸っていた。
0
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
『天燃ゆ。地燃ゆ。命燃ゆ。』中篇小説
九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)
SF
武士たちが『魂結び』によって『神神』を操縦し戦っている平安時代。
源氏側は平家側の隠匿している安徳天皇および『第四の神器』を奪おうとしている。
斯様なる状況で壇ノ浦の戦いにおよび平知盛の操縦する毘沙門天が源義経の操縦する持国天に敗北し平家側は劣勢となる。
平家の敗衄をさとった二位の尼は安徳天皇に『第四の神器』を発動させるように指嗾し『第四の神器』=『魂魄=こんそうる』によって宇宙空間に浮游する草薙の剱から御自らをレーザー攻撃させる。
安徳天皇の肉体は量子論的にデコヒーレンスされ『第四の神器』は行方不明となる。
戦国時代。わかき織田信長は琵琶法師による『平曲』にうたわれた『第四の神器』を掌握して天下統一せんと蹶起する。――。
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
バンクエットオブレジェンズ~フルダイブ型eスポーツチームに拉致ッ、スカウトされた廃人ゲーマーのオレはプロリーグの頂点を目指す事に!!~
NEOki
SF
廃人ゲーマー『群雲疾風』は極めていた鬼畜ゲーのサービス終了によって生きがいを失っていた。しかしそんな中バーチャルアイドルとして活躍する妹から案件を受けたという今巷で大人気のフルダイブ型対戦ゲームを勧められ、難易度の低い一般ゲーでは満足出来ないと思いながらも善意を無碍にできず一日だけプレイしてみる事に。しかしその一日でまさかのプロリーグで活躍するトッププロとマッチングし、ゴミスキルだと思われていた0.1秒の無敵を鬼畜ゲーで鍛えた異常な動体視力により敵の攻撃へ合わせ続け勝利目前という所まで追い込む。しかし流石にトッププロの壁は厚くあと一歩が足りず敗北した疾風は、その対戦した№1プレイヤー『レッドバロン』と自らの間に大きな隔たりを感じ新たな鬼畜ゲーの発見に胸を踊らせたのであった。
そしてその後限定スキン目当てで参加したリアルイベントでセミプロレベルの選手を打ちのめし、怪しげな三人組に目を付けられた彼は巨大な黒いワンボックスカーへと引き摺り込まれ………?
ゲームに熱く成った事のある全ての人へ送るEスポーツ青春譚!!
毎日1話確定更新ッ!! お気に入り、評価等々を一つでも頂けたら一日2話更新ッ!!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
災厄の婚約者と言われ続けて~幸運の女神は自覚なく、婚約破棄される~
キョウキョウ
恋愛
「お前が居ると、いつも不運に見舞われる」
婚約相手の王子から、何度もそう言われ続けてきた彼女。
そして、とうとう婚約破棄を言い渡されてしまう。
圧倒的な権力者を相手に、抗議することも出来ずに受け入れるしか無かった。
婚約破棄されてたことによって家からも追い出されて、王都から旅立つ。
他国を目指して森の中を馬車で走っていると、不運にも盗賊に襲われてしまう。
しかし、そこで彼女は運命の出会いを果たすことになった。
夫が正室の子である妹と浮気していただけで、なんで私が悪者みたいに言われないといけないんですか?
ヘロディア
恋愛
側室の子である主人公は、正室の子である妹に比べ、あまり愛情を受けられなかったまま、高い身分の貴族の男性に嫁がされた。
妹はプライドが高く、自分を見下してばかりだった。
そこで夫を愛することに決めた矢先、夫の浮気現場に立ち会ってしまう。そしてその相手は他ならぬ妹であった…
こちらアンドロイド回収課! ―不法投棄されていたアンドロイドが初恋の人そっくりだからお持ち帰りします―
佐城竜信
大衆娯楽
西暦2045年。世界初の人型ロボット、アンドロイドが発売された。
完全に人と同じ姿でありながら自分の望みをすべてかなえようと奔走する彼らに人々は魅了された。
理想的な恋人、理想的な夫婦。理想的な家族。
アンドロイドを発売する会社『Ideal Life』社がスローガンとして掲げる言葉だ。
その言葉の通りにアンドロイドは人々の幸福のために生きている。
大神十夜はそんなアンドロイドが嫌いだった。アンドロイドに仕事を奪われたからだ。
人間が多くの時間をかけて学ばなくてはならいことであっても、アンドロイドはごく短時間で。システムをインストールすることで学習を終えることができ、人間よりもはるかに高いパフォーマンスで仕事を完遂させる。
経営者たちはこぞってアンドロイドを雇い入れた。結果として、人間は職を追われることになった。
アンドロイドが普及したのは優斗が大学を卒業する2年前だ。おかげで就職もままならなくなった優斗は地方公務員になり、アンドロイド回収課で働くことになった。
理想的なパートナーと呼ばれながらも飽きれば捨てられる。アンドロイド自身もそれを受け入れている。
そんな情景に嫌気がさしながらも生きるために仕事を続けていた十夜はある日、不法投棄されていたアンドロイドに出会う。道の片隅に座り込み息をしていない彼に。
「……似ている」
最初は死んでいると思い込み驚くが、すぐにアンドロイドだと気が付いた十夜の口から出たのはそんな言葉だった。
アンドロイドを拾うことは犯罪ではないが、アンドロイドを拾う人間なんていない。それはアンドロイドが安価で手に入ることが理由の一つであり、もう一つの理由は。
最初に登録された所有者ではない人間の命令を、アンドロイドが聞かないからだ。
初恋の人に似ているアンドロイドを手に入れた十夜は、決して報われることのない愛のために生きることを決めるが……?
エロ表現無しのライトBLです。ライト文学賞に応募するために書いていきます。
VRMMO レヴェリー・プラネット ~ユビキタス監視社会~
夏野かろ
SF
第三次世界大戦後、2084年。
日本は戦災によって監視社会となり、人々は自由のない日々を過ごすこととなった。
ある者はVRMMO「レヴェリー・プラネット」に興じることで監視のストレスから逃げようとする。
またある者は、テロによって監視社会を革命しようとする。
その他、ゲームに課金するために犯罪に走る者、その犯罪者を利用する者、取り締まる者、
多くの人がそれぞれの道を歩いていく。
この物語は、そんな人間模様を
『ブギーポップは笑わない』や『パルプ・フィクション』のような形式でまとめた小説です。
一括投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる