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◇264 自販機の暴走
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「はぁー」
症状が一人大きな溜息を吐いていた。
表情に影が落ち、何かに悩んでいるように見えた。
髪は腰丈まであり、コートを着ていた。
となりではほとんど御ない色をしたコートを着た別の少女が励ましていた。
こちらは髪の毛が少し短く揃っていた。ボブカットぐらいの長さで揃っていた。
「大丈夫だって。絶対成功するよ!」
「そうだよね……うん。でも……」
長髪の少女はそれでも自信が無さそうだった。
普段からこんな性格ではなかったが、明日は特に大事な日だった。
だから二人とも口ではポジティブやネガティブを吐いていたが、正直不安でいっぱいだった。
「本当、上手く行くのかな……」
「うん。如何しよう……逃げちゃいたいな」
二人の間にそんなどんよりとした空気が流れていた。
同じ顔、同じ髪色、ほとんど同じ格好をした二人は公園の円形ベンチに座ってそんなことを口にしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
蒼伊との約束から数日が経った。
気が付けば十二月二十三日、当日になってしまった。
明輝は何となく歩いていた。
初めて蒼伊の家に行くので何か持って行った方が良いかと考えていた。
「うーん、考えれば考えるほど分からない」
明輝は腕を組んだ。
結局悩んで当日になってしまったのは誰にも言えないが、ふと足が止まった。
ちょっと寒いので何か飲もうと思ったのだ。
「とりあえず何か飲んで考えよう」
明輝たちが住むこの街にはたくさんの自販機が設置されていた。
だから適当に歩いていれば自販機の一つや二つ簡単に見つかった。
ちょうど白い自販機が見えてきた。
真横に鷹のマークがラッピングされていた。
御鷹市にあるメーカーのもので、普及率は九十パーセント近かった。
「そう言えばこの自販機もエルエスタさんの会社の傘下なんだよね。凄い……」
何を買うか選んでいる間にそんなことを思い出した。
蒼伊も一枚噛んでいるらしいが、本当か如何かは分からなかった。
「って、そんなことより何買おう。まあ、無難にカフェオレかな」
コーヒーやココアでも良かったけれど、何となくカフェオレを選んだ。
お金を入れてボタンを押すと、カフェオレが出てきた。
取り出して立ち去ろうとすると、赤いランプが光っていた。
「へぇー、抽選付き何だ」
赤いランプは数字が揃ったらもう一本のタイプだった。
この手のタイプは前に当たったことがあるけれど、結構確率は高めな気がしていた。
明輝はあまり自販機で買うタイプじゃなかった。
けれど当たり抽選付きの自販機で買うと大抵一本は当たった。
それだけ運が良かった。
「おっ、止まった」
数字は七が四つ並んでいた。
如何やら当たったらしく、明輝は迷ってしまった。買いたい物は買ってしまったので、烈火に渡すものを選んだ。
駅前で待ち合わせしていたので、そのついでと言うことだ。
「それじゃあ甘いやつにして……珍しい練乳だ!」
まさかの練乳ココアがあった。
珍しいと思いボタンを押した明輝はまたしても赤いランプに悩まされた。
「流石に二連続はないよね」
なんて考え溜息は素通りしようとした。
しかし当たってしまった。けれどただの当たりではなかった。
自販機のランプが点滅していた。
たくさん赤いランプが発光し、ギラギラしていた。
如何やら久しぶりに買われたようで、整備が追い付いていなかったらしくバグってしまった。
「えっ? これってヤバくない?」
明輝は焦った。如何したら良いのか分からくて、とりあえず電話しようとした。
しかし何処に電話したら良いのか悩んでいる間に大量の飲み物が吐き出された。
「ちょっと待って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大量の缶やペットボトルに襲われた。
明輝は自分の身を守ったが、足下は中身の入った飲み物が散乱していた。
正直圧倒されてしまった。
うっかり踏み出せば滑ってしまうかもしれなかった。
「ちょっと待って。コレ如何しよう……」
明輝は眉を潜めた。
コレは如何したら良いのか、明輝は考えた。
とりあえず拾うかと思い、明輝は一本一本手に取った。
「うーん、良し。貰って帰ろう」
明輝は意識を切り替えた。
どうせ回収されるのなら持って帰ってもいいはずだ。
それに仮にカメラが回っていたり、衛星で取られていても関係ない。
何故なら、自販機の抽選で当たっていたからだ。全部数字が九で揃っていたので、完全にバグっていた。
「とりあえず袋にでも入れておかないと……確かリュックの中に使ってない手提げ袋があったような……」
リュックの中にはいつもスーパーで買い物をしても良いようにと袋を入れていた。
落ちている飲み物を片っ端から集め、とりあえず近くの公園で整理することにした。
「その前に……ごめんなさい」
明輝は自販機の前で手を合わせて謝った。
一応謝っておいた方が後味も変わって来るからだ。
症状が一人大きな溜息を吐いていた。
表情に影が落ち、何かに悩んでいるように見えた。
髪は腰丈まであり、コートを着ていた。
となりではほとんど御ない色をしたコートを着た別の少女が励ましていた。
こちらは髪の毛が少し短く揃っていた。ボブカットぐらいの長さで揃っていた。
「大丈夫だって。絶対成功するよ!」
「そうだよね……うん。でも……」
長髪の少女はそれでも自信が無さそうだった。
普段からこんな性格ではなかったが、明日は特に大事な日だった。
だから二人とも口ではポジティブやネガティブを吐いていたが、正直不安でいっぱいだった。
「本当、上手く行くのかな……」
「うん。如何しよう……逃げちゃいたいな」
二人の間にそんなどんよりとした空気が流れていた。
同じ顔、同じ髪色、ほとんど同じ格好をした二人は公園の円形ベンチに座ってそんなことを口にしていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
蒼伊との約束から数日が経った。
気が付けば十二月二十三日、当日になってしまった。
明輝は何となく歩いていた。
初めて蒼伊の家に行くので何か持って行った方が良いかと考えていた。
「うーん、考えれば考えるほど分からない」
明輝は腕を組んだ。
結局悩んで当日になってしまったのは誰にも言えないが、ふと足が止まった。
ちょっと寒いので何か飲もうと思ったのだ。
「とりあえず何か飲んで考えよう」
明輝たちが住むこの街にはたくさんの自販機が設置されていた。
だから適当に歩いていれば自販機の一つや二つ簡単に見つかった。
ちょうど白い自販機が見えてきた。
真横に鷹のマークがラッピングされていた。
御鷹市にあるメーカーのもので、普及率は九十パーセント近かった。
「そう言えばこの自販機もエルエスタさんの会社の傘下なんだよね。凄い……」
何を買うか選んでいる間にそんなことを思い出した。
蒼伊も一枚噛んでいるらしいが、本当か如何かは分からなかった。
「って、そんなことより何買おう。まあ、無難にカフェオレかな」
コーヒーやココアでも良かったけれど、何となくカフェオレを選んだ。
お金を入れてボタンを押すと、カフェオレが出てきた。
取り出して立ち去ろうとすると、赤いランプが光っていた。
「へぇー、抽選付き何だ」
赤いランプは数字が揃ったらもう一本のタイプだった。
この手のタイプは前に当たったことがあるけれど、結構確率は高めな気がしていた。
明輝はあまり自販機で買うタイプじゃなかった。
けれど当たり抽選付きの自販機で買うと大抵一本は当たった。
それだけ運が良かった。
「おっ、止まった」
数字は七が四つ並んでいた。
如何やら当たったらしく、明輝は迷ってしまった。買いたい物は買ってしまったので、烈火に渡すものを選んだ。
駅前で待ち合わせしていたので、そのついでと言うことだ。
「それじゃあ甘いやつにして……珍しい練乳だ!」
まさかの練乳ココアがあった。
珍しいと思いボタンを押した明輝はまたしても赤いランプに悩まされた。
「流石に二連続はないよね」
なんて考え溜息は素通りしようとした。
しかし当たってしまった。けれどただの当たりではなかった。
自販機のランプが点滅していた。
たくさん赤いランプが発光し、ギラギラしていた。
如何やら久しぶりに買われたようで、整備が追い付いていなかったらしくバグってしまった。
「えっ? これってヤバくない?」
明輝は焦った。如何したら良いのか分からくて、とりあえず電話しようとした。
しかし何処に電話したら良いのか悩んでいる間に大量の飲み物が吐き出された。
「ちょっと待って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大量の缶やペットボトルに襲われた。
明輝は自分の身を守ったが、足下は中身の入った飲み物が散乱していた。
正直圧倒されてしまった。
うっかり踏み出せば滑ってしまうかもしれなかった。
「ちょっと待って。コレ如何しよう……」
明輝は眉を潜めた。
コレは如何したら良いのか、明輝は考えた。
とりあえず拾うかと思い、明輝は一本一本手に取った。
「うーん、良し。貰って帰ろう」
明輝は意識を切り替えた。
どうせ回収されるのなら持って帰ってもいいはずだ。
それに仮にカメラが回っていたり、衛星で取られていても関係ない。
何故なら、自販機の抽選で当たっていたからだ。全部数字が九で揃っていたので、完全にバグっていた。
「とりあえず袋にでも入れておかないと……確かリュックの中に使ってない手提げ袋があったような……」
リュックの中にはいつもスーパーで買い物をしても良いようにと袋を入れていた。
落ちている飲み物を片っ端から集め、とりあえず近くの公園で整理することにした。
「その前に……ごめんなさい」
明輝は自販機の前で手を合わせて謝った。
一応謝っておいた方が後味も変わって来るからだ。
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