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◇235 けみーとの約束

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 アキラはDeep Skyの営むお店にやって来た。
 いつも通りソウラが店員をしていて、アキラは起きたことを話していた。

「それでですね、よくわからないんですけど今回の報酬が意味わからなくて」
「そうよね。私たちも実はよくわかってなくて、マンティは頭を抱えちゃって」
「あー、何となくわかります。想像つきます」
「それどういう意味かな?」

 すると背後から声が聞こえた。
 そこにいたのはマンティで、ムッとした表情を浮かべていた。

「ご、ごめんなさいマンティさん」
「まあいいんだけどね。よいっしょと、ソウラオレンジジュースちょうだい」
「はいはい。ちょっと待っててね……」

 ソウラは地下室に降りて行った。
 アキラはマンティと2人きりになってしまい、何だか気まずくなってしまった。

「あの、マンティさん」
「ん? 何かなー?」
「話聞いてたと思うんですけど、どう思いますか?」
「如何って言われてもわかんないよ。それに私はアイテム持ってないから」
「えっ!?」
「けみーが持っているから私は持ってないよ。それに上げてもいいけど、けみーの許可いるからね」

 マンティはアキラに伝えた。
 これじゃ諦めるしかないのかな。
 机に突っ伏したままアキラは唸った。

「おや、珍しいね」
「けみーだ。そっちも珍しいね」

 私は上半身を勢いよく上げ、振り返るとそこにはけみーがいた。
 アキラは目を見開くと、けみーは「こんにちは」と爽快に挨拶をしてくれる。

「こんにちはけみーさん」
「アキラはよく来るんだよね?」
「ソウラさんに話を聞いてもらうんです。このお店、うちにギルドでも私しか知らなくて」
「それでアキラが来たんだね。僕が持っているアイテムが欲しくて」
「あはは……やっぱりわかりますか?」

 むしろわからない方がおかしい。
 アキラは明らかに欲しがっている様子を見せていた。
 けみーにはその意図が伝わったのか、にこりと微笑む。

「いいよ、どうせ必要ないから」
「いいんですか! マンティさんも?」
「もちろんいいよ。だってうちのギルドでも困ってたんだよね」
「困っていた?」
「うん。だって使い道がわからないんだもん!」

 マンティは満面の笑みを浮かべてアキラに答えてくれた。
 元気があって何よりと思いつつ、一拍間を開けると「はいっ?」と驚いた。

「け、けみーさん?」
「マンティには一度見せたよ。だけどこのアイテムは如何やら1つではダメらしいんだ。だから僕たちも如何処理すればいいか困っていてね」
「そこに私がやって来た?」
「そういうこと。だから上げてもいいんだよ」

 貰えるなら貰っておいた方がいい。
 アキラはそう考え、口を開こうとした。
 「それじゃあ貰います」と伝えようとしたが、そこにソウラが戻ってくる。

「アキラも飲む? って、けみーなんで居るの?」
「今日はバイトが休みだからだよ。定期的にログインしておいた方がいいと思ってね。そうしたら丁度僕を待っている子がいたから……好都合だったよ」

 けみーは手短にソウラに説明した。
 「そうだったの」とソウラは納得した様子で、アキラたちの前にオレンジジュースの瓶と透明なグラスを置いた。
 中には大きめの丸い氷が入っていて、ドラマのバーのシーンでしか見たことがない。

「私、この氷初めて見ました」
「結構簡単に作れるのよ? 丸い氷を作るための型があるから」
「うちのお店でよく使っているものだね」

 けみーは相槌を入れた。
 アキラはけみーのバイトが気になったが、それよりもまずは報酬の方に意識を切り替える。

「あの、けみーさん。もしも報酬のアイテムが要らないなら」
「もちろんいいよ。ただし条件はあるけどね」
「条件ですか?」
「うん。とっても簡単な2つの条件。君が呑んでくれるなら、僕はこの意味不明なはめ込みパーツが付いたこの四角い盾の基盤を上げるよ」

 インベントリからけみーが取り出したのは、盾の基盤だった。
 後ろには肉抜き穴が開いていて、取っ手を付けられそうになっている。

「うわぁ、凄い。一番大事そうなパーツですね」
「そうだね。それで如何かな? これはギルドとして問うんだけど。僕たちはこれからも君たちに頼ることがある。その時は手伝ってくれるかな? 僕たちもできる限りに事はするから」
「もちろんです。Deep Skyの皆さんには日頃からお世話になっていますから」

 アキラに断る選択肢はなかった。
 ギルドには繋がりが大事だと妖帖の雅の人たちから教わった。

「いい返事だね。それじゃあコレを上げるよ」
「ありがとうございます!」

 アキラは盾の基盤を受け取った。
 確かに色々なパーツが付けられそうなはめ込み部がスカスカに空いている。
 達成感の余り満面の笑みを浮かべ、目をキラキラさせると、不意にもう1つが気になった。
 アキラは意識を切り替えて、真顔になって尋ねた。

「そう言えばけみーさん。もう1つって?」
「アキラ。君はとても強いらしいじゃないか」
「そう言われてますけど、私なんてフェルノや雷斬に比べたら……」
「そんな君と勝負がしてみたい。だから今度戦ってくれるかな?」
「へっ!?」

 けみーはアキラに問うた。
 しかしアキラ自身はけみーのお願いに疑問を抱きつつも、「は、はい?」と了承なのか疑問なのかわからない反応を浮かべていた。
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