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◇183 赤い光が迸る
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アキラたちが拳を飛ばさないように封じた手段は、実に簡単なものだった。
“鎖を使って鎖を使えなくする”
言ってしまえば、この一言に尽きる。
しかしそれに至るまでの布石は着実に踏んでいて、最後にNightの考えがまとまった末に生まれたものだった。
「あの強烈な拳を封じるなら、そもそも拳を使わせなければいい。拳を破壊するにはあの鎖は邪魔だ。壊すことは非常に困難になる」
「それじゃあどうするの?」
「簡単だ。拳と腕とを連結している内部の鎖を使えなくすればいい。それが一番手っ取り早い」
Nightの言い分はもっともだった。
しかしそれをやった身になって欲しいと、アキラはしみじみ思う。
雷斬が鎖に傷をつけ、雷の燃焼作用で細い糸口ができたに過ぎない。
Nightだってそのことは理解しているのか、あまり芳しくない結果になったことを見て正直に悔しい想いをしていた。
「でも、これで攻撃手段は全部奪ったね」
「ああ。ここからは決めに行くぞ」
Nightの掛け声で全員スキルを再使用する。
ここから攻撃の手段を失った黒鉄の巨人を叩きに行くのだ。
けれどアキラだけは何故か意識の中で、“危険”の文字が絶えず表れていた。
この感覚は何なのか。本当に突撃しても良いのか。真偽が試される。
「みんなちょっと待って!」
「ごめんアキラ。今しかないっぽいよ」
「今しかない?」
「うん。何か嫌な音しない?」
フェルノが不穏なことを言い始めた。
しかし雷斬もベルも、ましてやNightでさえ今のところ異変を察知していない。
Nightに関しては考えているのだろうが、アキラにはこの余裕が凄く歪でチクチクと突き刺さるみたいに感じた。
「今このタイミングを逃したら、多分勝ち目がなくなると思うんだ。だから一撃だけひびを入れて来るね」
「ちょっと待ってよフェルノ。もう、【灰爪】!」
アキラは先になって飛び出したフェルノを追って飛び出す。
その姿に雷斬たちは驚いていた。
「フェルノさん、アキラさん!」
「ちょっと、どうしてあの2人が飛び出すのよ」
「私たちも行きましょう。きっと何かお考えがあるんです」
「そうね。その可能性は高いと思うわ」
雷斬りとベルも飛び出そうとする。
しかしそれを止めたのはNightだった。
何か嫌な予感がする。アキラのらしくない突発的な衝動にNightも伝染していた。
「待て、アキラのあの動き。一撃離脱の構えだ」
「一撃離脱?」
「フェルノの性格でそれはないんじゃないのかな?」
「弓術フォームになって考えてみろ。もう少し視野を広げてみるんだ」
ベルはNightに煽られる。
少しムカッとしたがい、言われた通り冷静になって見てみると、確かに2人の足運びがいつもに比べてぎこちない。
まるで最初から逃げることを前提にしているようだった。
「本当だ。アキラとフェルノから全力で逃げるぞって意思が背中越しから伝わってくる」
「そうだろ。だからきっと大丈夫だ」
口ではそう言うが、Nightはこの状況を改めて理解する。
目で見るだけでも頭の中で考えるだけでもない。
何か腑に落ちない気がしてならない。そうだ。どうしてこの巨人は下半身がピクリとも動かないのか。
上半身が重いのだとすれば下半身が動かない理由にも繋がるが、下半身が潰れているわけでもない。
だとすれば何かある。思考回路が意識を巡らせる。
その間も、アキラたちは戦っていた。
「フェルノ、一撃離脱だよ」
「もちろんわかっているよ!」
アキラとフェルノはタイミングを計ると、動かない脚を利用してジャンプ台に使う。
膝の部分を使ってGAMEならではの脚力を活かして高く跳んだ。
すると、アキラの【灰爪】と竜化したフェルノの拳が黒鉄の巨人の胸部分を強く叩いた。
「そりゃぁ!」
「せーのっ」
お互の拳が黒鉄の巨人の胸板を貫く。
薄っすらとだがひびが入り、どうやらダメージはあったのだろう。
しかし最初からHPバーが表示されていないことに今更だが気が付き、これでもダメなのではと唇を噛み締める。
「はぁはぁ……ははは。これでもダメなんだ」
「フェルノ離脱するよ」
アキラとフェルノは急いでその場から離れることにした。
黒鉄の巨人の日々の入った胸板が赤く発光している
白い湯気のようなものを噴き出しながら、徐々に装甲が高温になっていた。
「熱い。これって、ヤバいよね!」
「だから早く逃げるよ。なんだか危惧していたことが起こっている気がする……」
アキラはフェルノの服の襟を掴んだ。
そのまま【月跳】を使って飛び出そうとしたが、黒鉄の巨人が高温のため足を付けることができない。
そこで毒ナマズから手に入れた【泥腕】で無理やり足場を作ると、【月跳】で一気に逃げ去る。
キュィィィィィィィィィィィィィィィン!
すると突然黒鉄の巨人が金切り音と熱を発し始めた。
目の部分や腕周りの線が急に赤く発光する。
明らかに危険だ。アキラとフェルノは全身を悪寒が駆け抜ける。
このままじゃマズい。そう思った時、急に黒鉄の巨人の胸部部から赤い熱線が放たれた。
“鎖を使って鎖を使えなくする”
言ってしまえば、この一言に尽きる。
しかしそれに至るまでの布石は着実に踏んでいて、最後にNightの考えがまとまった末に生まれたものだった。
「あの強烈な拳を封じるなら、そもそも拳を使わせなければいい。拳を破壊するにはあの鎖は邪魔だ。壊すことは非常に困難になる」
「それじゃあどうするの?」
「簡単だ。拳と腕とを連結している内部の鎖を使えなくすればいい。それが一番手っ取り早い」
Nightの言い分はもっともだった。
しかしそれをやった身になって欲しいと、アキラはしみじみ思う。
雷斬が鎖に傷をつけ、雷の燃焼作用で細い糸口ができたに過ぎない。
Nightだってそのことは理解しているのか、あまり芳しくない結果になったことを見て正直に悔しい想いをしていた。
「でも、これで攻撃手段は全部奪ったね」
「ああ。ここからは決めに行くぞ」
Nightの掛け声で全員スキルを再使用する。
ここから攻撃の手段を失った黒鉄の巨人を叩きに行くのだ。
けれどアキラだけは何故か意識の中で、“危険”の文字が絶えず表れていた。
この感覚は何なのか。本当に突撃しても良いのか。真偽が試される。
「みんなちょっと待って!」
「ごめんアキラ。今しかないっぽいよ」
「今しかない?」
「うん。何か嫌な音しない?」
フェルノが不穏なことを言い始めた。
しかし雷斬もベルも、ましてやNightでさえ今のところ異変を察知していない。
Nightに関しては考えているのだろうが、アキラにはこの余裕が凄く歪でチクチクと突き刺さるみたいに感じた。
「今このタイミングを逃したら、多分勝ち目がなくなると思うんだ。だから一撃だけひびを入れて来るね」
「ちょっと待ってよフェルノ。もう、【灰爪】!」
アキラは先になって飛び出したフェルノを追って飛び出す。
その姿に雷斬たちは驚いていた。
「フェルノさん、アキラさん!」
「ちょっと、どうしてあの2人が飛び出すのよ」
「私たちも行きましょう。きっと何かお考えがあるんです」
「そうね。その可能性は高いと思うわ」
雷斬りとベルも飛び出そうとする。
しかしそれを止めたのはNightだった。
何か嫌な予感がする。アキラのらしくない突発的な衝動にNightも伝染していた。
「待て、アキラのあの動き。一撃離脱の構えだ」
「一撃離脱?」
「フェルノの性格でそれはないんじゃないのかな?」
「弓術フォームになって考えてみろ。もう少し視野を広げてみるんだ」
ベルはNightに煽られる。
少しムカッとしたがい、言われた通り冷静になって見てみると、確かに2人の足運びがいつもに比べてぎこちない。
まるで最初から逃げることを前提にしているようだった。
「本当だ。アキラとフェルノから全力で逃げるぞって意思が背中越しから伝わってくる」
「そうだろ。だからきっと大丈夫だ」
口ではそう言うが、Nightはこの状況を改めて理解する。
目で見るだけでも頭の中で考えるだけでもない。
何か腑に落ちない気がしてならない。そうだ。どうしてこの巨人は下半身がピクリとも動かないのか。
上半身が重いのだとすれば下半身が動かない理由にも繋がるが、下半身が潰れているわけでもない。
だとすれば何かある。思考回路が意識を巡らせる。
その間も、アキラたちは戦っていた。
「フェルノ、一撃離脱だよ」
「もちろんわかっているよ!」
アキラとフェルノはタイミングを計ると、動かない脚を利用してジャンプ台に使う。
膝の部分を使ってGAMEならではの脚力を活かして高く跳んだ。
すると、アキラの【灰爪】と竜化したフェルノの拳が黒鉄の巨人の胸部分を強く叩いた。
「そりゃぁ!」
「せーのっ」
お互の拳が黒鉄の巨人の胸板を貫く。
薄っすらとだがひびが入り、どうやらダメージはあったのだろう。
しかし最初からHPバーが表示されていないことに今更だが気が付き、これでもダメなのではと唇を噛み締める。
「はぁはぁ……ははは。これでもダメなんだ」
「フェルノ離脱するよ」
アキラとフェルノは急いでその場から離れることにした。
黒鉄の巨人の日々の入った胸板が赤く発光している
白い湯気のようなものを噴き出しながら、徐々に装甲が高温になっていた。
「熱い。これって、ヤバいよね!」
「だから早く逃げるよ。なんだか危惧していたことが起こっている気がする……」
アキラはフェルノの服の襟を掴んだ。
そのまま【月跳】を使って飛び出そうとしたが、黒鉄の巨人が高温のため足を付けることができない。
そこで毒ナマズから手に入れた【泥腕】で無理やり足場を作ると、【月跳】で一気に逃げ去る。
キュィィィィィィィィィィィィィィィン!
すると突然黒鉄の巨人が金切り音と熱を発し始めた。
目の部分や腕周りの線が急に赤く発光する。
明らかに危険だ。アキラとフェルノは全身を悪寒が駆け抜ける。
このままじゃマズい。そう思った時、急に黒鉄の巨人の胸部部から赤い熱線が放たれた。
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