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◇161 足元には注意せよ
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アキラたちは毒沼を目指していた。
森を歩こうとすると、湿地帯と言うこともありじめじめしている。
全身が重たい。足下はぬかるんでいる。
と言うわけで、とてもじゃないがスムーズには歩けない。
「歩き難いわね。さっきから足下が取られちゃってる」
「そんなものだ。湿地帯は湿度も高いからな」
Nightはぶつくさと答えていた。
歩く度にブーツが沈み込んでしまい、底はドロドロになっている。
潔癖症の人にはたまったものじゃないだろうが、生憎ここにはいない。
しかしNightはムカついていた。
「くそっ、どうしてこんな損な役回りばかり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるだろ。こんな酷い場所に送り込まれて、文句を言わない奴がいるのか!」
「うーん、ここにいるよ」
「ん? 私は湿ったところは嫌いじゃないわよ。だけど足のぬかるみがちょっとね」
ベルは大人びた態度だった。
その様子を見ていると、アキラとNightは頬けてしまう。
「どうしたの?」
「ベルって大人だよね。口調とかちょっと当たり強い時はあるけど、棘がそんなにないから」
「雷斬に比べたら私なんてそうでもないわよ。これも昔からの癖だから」
「癖でそんな喋り方ができるの?」
「それはそれで怖いものだな。雷斬のようにフラットな口調も取れないなんてな」
Nightはベルを憐れむようだった。
しかしベル自身も、大人びた態度を崩さない。
「そんなことないわよ。こほん……Night、貴女は少しアキラに対する辺りを弱くしたらどう?」
「はぁっ!?」
「そんなに怒っていないのに、アキラに当たり強いのはもしかして……」
「うっ! そんなことないだろ!」
「ほら。またやってる」
アキラは2人のやり取りを見ているだけだった。
ベルの一方的な展開で、Nightが気圧されている。
明らかに動揺の色が見えるが、それでも姿勢は崩さない。
けれどいつものような噛みつきが足りない。
「まあまあ、2人ともそんな話いいじゃんか」
「誰のせいでこうなっていると思っているんだ!」
「えっ、ここに来て私が怒られる流れなの! 何で、ねえ何で!」
「アキラは別に悪くないと思うけど……まあ今回はそういうことにしましょ」
「どうしてそうなるの!」
アキラは納得がいかなかった。
とは言え、それで話が丸く収まるのならそれでもいい。
正義のヒーローでも悪役ヴィランでも関係ない。
「まあいっか。それで、これからどうするの?」
「何の作戦もないのか」
「あるわけないよ! それを考えるのは、Nightの役目でしょ?」
「お前なぁ……まあいい、感覚派には感覚を研ぎ澄ませてもらおう」
何故かすんなり受け入れられてしまった。自分の役目がわかっている証拠だ。
アキラは何も考えていない訳じゃない。
ただ考えるよりも先に体を動かしてしまっている。
考えながら体を動かす。意識の先行が優先順位を心の赴くままに左右させていた。
「それで、ドクハナに関してだが。まずは中央の毒沼に行くのが必須だな。とりあえず、このまま突っ切るぞ」
「へぇー、突っ切ってもいいんだ」
「知らん。この場所の知識は私にはないからな。それより、ソウラから攻略の糸口は聞いていないのか?」
「えっと、ちょっと待って……確かメモがあったはずなんだけど」
インベントリの中からメモを探す。
指でスライドさせると、『ソウラメモ』と書かれたアイテムを見つけた。
ソウラから貰ってメモをすぐさま取り出し、アキラは四つ折りにされていた紙を開いた。
「どうしてそんなに小さい紙きれを四つ折りにしているんだ」
「いいでしょ。このまま渡されたんだもん。えーっと何々、『真ん中に毒沼があるよ。でも気を付けてね、毒の一帯は吸い込んだらダメージのある毒が蔓延しているよ。それから毒に感染したモンスターもいるよ。足下には注意してね』だって」
「何だその箇条書きのメモは! それに危険すぎるだろ」
「どうやらこちらはハズレみたいね」
「あはは、そんなこと言わないでよ」
アキラは笑って誤魔化していた。だけど「ミスった」と心の中では後悔している。
そんな表情をひた隠していると、ふいに異変を感じた。
何かが近づいている。と言うか、地面から音がする。
耳を澄ましていると、突然Nightの背後に何か現れた。小さなモグラみたいなものがいて、その口から勢いよく液体が吐き出された。
「Night、危ない!」
「はっ?」
Nightは振り返った。しかし時すでに遅かった。
紫の異様な液体が撒かれた後で、空中に散布されていた。
森を歩こうとすると、湿地帯と言うこともありじめじめしている。
全身が重たい。足下はぬかるんでいる。
と言うわけで、とてもじゃないがスムーズには歩けない。
「歩き難いわね。さっきから足下が取られちゃってる」
「そんなものだ。湿地帯は湿度も高いからな」
Nightはぶつくさと答えていた。
歩く度にブーツが沈み込んでしまい、底はドロドロになっている。
潔癖症の人にはたまったものじゃないだろうが、生憎ここにはいない。
しかしNightはムカついていた。
「くそっ、どうしてこんな損な役回りばかり」
「そんなことないよ」
「そんなことあるだろ。こんな酷い場所に送り込まれて、文句を言わない奴がいるのか!」
「うーん、ここにいるよ」
「ん? 私は湿ったところは嫌いじゃないわよ。だけど足のぬかるみがちょっとね」
ベルは大人びた態度だった。
その様子を見ていると、アキラとNightは頬けてしまう。
「どうしたの?」
「ベルって大人だよね。口調とかちょっと当たり強い時はあるけど、棘がそんなにないから」
「雷斬に比べたら私なんてそうでもないわよ。これも昔からの癖だから」
「癖でそんな喋り方ができるの?」
「それはそれで怖いものだな。雷斬のようにフラットな口調も取れないなんてな」
Nightはベルを憐れむようだった。
しかしベル自身も、大人びた態度を崩さない。
「そんなことないわよ。こほん……Night、貴女は少しアキラに対する辺りを弱くしたらどう?」
「はぁっ!?」
「そんなに怒っていないのに、アキラに当たり強いのはもしかして……」
「うっ! そんなことないだろ!」
「ほら。またやってる」
アキラは2人のやり取りを見ているだけだった。
ベルの一方的な展開で、Nightが気圧されている。
明らかに動揺の色が見えるが、それでも姿勢は崩さない。
けれどいつものような噛みつきが足りない。
「まあまあ、2人ともそんな話いいじゃんか」
「誰のせいでこうなっていると思っているんだ!」
「えっ、ここに来て私が怒られる流れなの! 何で、ねえ何で!」
「アキラは別に悪くないと思うけど……まあ今回はそういうことにしましょ」
「どうしてそうなるの!」
アキラは納得がいかなかった。
とは言え、それで話が丸く収まるのならそれでもいい。
正義のヒーローでも悪役ヴィランでも関係ない。
「まあいっか。それで、これからどうするの?」
「何の作戦もないのか」
「あるわけないよ! それを考えるのは、Nightの役目でしょ?」
「お前なぁ……まあいい、感覚派には感覚を研ぎ澄ませてもらおう」
何故かすんなり受け入れられてしまった。自分の役目がわかっている証拠だ。
アキラは何も考えていない訳じゃない。
ただ考えるよりも先に体を動かしてしまっている。
考えながら体を動かす。意識の先行が優先順位を心の赴くままに左右させていた。
「それで、ドクハナに関してだが。まずは中央の毒沼に行くのが必須だな。とりあえず、このまま突っ切るぞ」
「へぇー、突っ切ってもいいんだ」
「知らん。この場所の知識は私にはないからな。それより、ソウラから攻略の糸口は聞いていないのか?」
「えっと、ちょっと待って……確かメモがあったはずなんだけど」
インベントリの中からメモを探す。
指でスライドさせると、『ソウラメモ』と書かれたアイテムを見つけた。
ソウラから貰ってメモをすぐさま取り出し、アキラは四つ折りにされていた紙を開いた。
「どうしてそんなに小さい紙きれを四つ折りにしているんだ」
「いいでしょ。このまま渡されたんだもん。えーっと何々、『真ん中に毒沼があるよ。でも気を付けてね、毒の一帯は吸い込んだらダメージのある毒が蔓延しているよ。それから毒に感染したモンスターもいるよ。足下には注意してね』だって」
「何だその箇条書きのメモは! それに危険すぎるだろ」
「どうやらこちらはハズレみたいね」
「あはは、そんなこと言わないでよ」
アキラは笑って誤魔化していた。だけど「ミスった」と心の中では後悔している。
そんな表情をひた隠していると、ふいに異変を感じた。
何かが近づいている。と言うか、地面から音がする。
耳を澄ましていると、突然Nightの背後に何か現れた。小さなモグラみたいなものがいて、その口から勢いよく液体が吐き出された。
「Night、危ない!」
「はっ?」
Nightは振り返った。しかし時すでに遅かった。
紫の異様な液体が撒かれた後で、空中に散布されていた。
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