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◇156 片方だけ開きました

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 次の日。何故か深夜に呼び出されてしまった。
 集まれたのはいいが、正直言って眠たい。
 けれどNightは昼寝でもしたみたいに活発だ。
 アキラたちはと言うと……

「ふはぁー。みんなお疲れさまー」
「お疲れー。ああ、眠たい」
「そうですね。本来でしたら私はもう眠っている時間です」
「それよりもNight。明日も学校なんだから手短にしてよね」

 ベルがしっとりとした雷斬に続き、よりしっとりとした声のトーンで急かした。
 するとNightも理解が早く、早速解説に入る。

「正直今回の謎は余計に安いチープだった。絶句するレベルに安くおまけに面倒だ」
「確かに面倒そうだよね。この暗号、未だにわからないもんねー」
「いいや、これはあらかた想像がつく。問題はその先だ」
「その先?」

 フェルノのナイスふりが入った。バラエティでも通用する間の取り方だ。
 Nightはフェルノの活躍には興味もなく、淡々と話しを続けた。

「そもそもの話、この暗号だ」
「確かにこの暗号にヒントがありそうですね。解読ができたんですか!」
「ある程度はな。とは言え、確証はない」
「ないんだ」

 昨日のことがあるので、何かあるかと思えばまだ何もないらしい。
 とは言え、この暗号にはいくつものヒントが隠されていた。

「例えばこの部分。『異界の夜天を支配するは流転する光の母たち。巡る2つの神話は過去よりの伝承。時が境に至る時真実の道は開かれるだろう』の異界の夜天はおそらく現実世界の夜空だ。流転する光の母は惑星。もしくは星になるな」
「ちょっとまってよ! それじゃあ昨晩の頑張りは……」
「ほとんど意味がない」
「がっくし!」

 それじゃあ昨晩の苦労は何だったのか。
 とは言え、そのおかげでNightは気が付けたみたいで、変に怒れない。
 それからNightは暗号を解読を続けた。

「2つの神話はおそらく星座のことだろうな。とは言え三角が未だにわからないから確証はないが、ミスリードの可能性だって十分ある。それから時が巡るは時間を表している。ここまでくればわかるな」

 Nightは理解が行き届いたと思っているみたいだ。
 けれどまだパッと気が付いていないみたいで、首を捻る。鈍いのではなく会っているのかわからない。そこで先にアキラが答える。

「つまり、この先に進むためには……」
「ペガサス座がこの時間帯のこの場所になければならない。幸いこの世界も現実の惑星と動きは酷似している。時間が経てばこの位置に来るが……残り5分だな」

 Nightは右腕を見た。腕時計みたいなものが付いている。ますます世界観が壊されていく。
 もう今更慣れたけど、そんな便利なものがあるのならアキラも欲しいと思った。
 すると勘付いていたのか、Nightはアキラに差し出す。

「ほらアキラ!」
「うわぁ!」

 アキラの手の中に腕時計が収まっていた。どうやラみんなの分を用意していたらしい。
 フェルノ達も受け取り、それぞれ利き手じゃない方にはめた。
 今思えばNightと雷斬は左利きだったんだ。

「何か珍しいね」
「何がだ?」
「だってこのギルド、五分の二が左利きだよ」
「そうだな。だがそんなことを言っている間に残り1分だ」
「早い!」

 時間の立ち方が異常に早く感じた。1人でいる時よりも話をしていたらあっという間だ。
 アキラはみんなと一緒に扉が開くのを待ったが、何の間もなく普通に開いた。まさか自分で開けなくてもいいなんて、最初からこの仕様にして欲しかった。多分みんな同じ事を心の中では思っている。

「勝手に開いちゃうんだねー」
「最初からこの仕様でよかったわよね?」
「それは皆さん言わないようにしていることですよ。ベル、黙っておきましょう」
「お前の発言が一番クレイジーだぞ、雷斬」
「そんなこといいからさー、早く行こうよ、ねえ早く」
「ちょっと、押さないでよフェルノ! なんで私なの?」
「リーダーでしょー」
「うわぁ、ちょっと待って待って。あっ!?」

 フェルノに背中を押され、狭い通路を抜けると異変が起きていた。
 石の本が勝手に開いている。

「おっ、石の本が勝手に開いているねー」
「本当ですね。宝玉も微かにですが光沢が増していますよ」
「って言うか、キラキラしてない?」
「本当だな。外せるか?」
「やってみるね……あれれ? 簡単に取れちゃった」

 あまりに呆気なさ過ぎて正直達成感がない。
 ここから新しい謎が展開されるのかと思いきや、そんなことは全くなく結局安いままだった。
 けれどここからが変だった。石の本から宝玉を取り外すと、台座の高さが少しだけ上がって小さな滑り台のようなものが出てくる。
 それから地震かと思う横揺れが起こり、床に溝ができていた。
 滑り台は溝と繋がって一体化する。また新しい謎が増えた。

「こ、今度は何?」
「もう訳がわからないよー」

 フェルノは投げ出してしまいたかった。髪をくしゃくしゃにして混乱している。
 アキラも付いていけない領域にまで進展しており、頭を抱える。

「これは難問だな。もう片方見てみるか」
「そうよね。こっちだけじゃ何もわからないものよ」

 ベルも納得し来た道を引き返す。狭い通路を一列になって戻っていると、先頭のベルが叫んだ。

「えっ!?」
「どうしたの、ベル!」
「ちょ、ちょっと見て。これって間違いじゃないのよね」

 ベルは明らかに戸惑っている。
 挙動不審な態度が気になり、アキラたちも近寄ると確かに驚愕の事実が待っていた。
 まさか、もう片方の扉は時間が経っても尚開いていないのだ。「嘘でしょ?」心の声が漏れる。
 まさにNightも同じ気持ちで、「嘘だろ」と呆気に取られていた。
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