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◇152 星を見に行こうと誘われたのだが…

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 アキラはゲームにログインしていた。
 今回は夜10時を回っている。
 1日に3回日を迎えるこの世界で、こんなにも漆黒の夜を長時間楽しめるのは貴重だ。

「それでNight、今日はどうして私だけ呼ばれたの?」
「3人は部活があるからな。お前は暇だろ」
「暇だけど……まさかこれからここを登るの?」
「もちろん。私が調べた限りだと、この山の頂上からなら星が綺麗に見えるらしい」
「星が綺麗にって、もしかして覚えていてくれたんだ!」

 アキラNightに満点の笑みを浮かべた。この間話していたことをまさかゲームでするとは思わなかったけど、星を見ることに変わらない。
 ただしみんながいたらもっと楽しかっただろうなと悔やむ気持ちもある。
 けれどNightが何の意味もなくこんなところに来るはずがない。きっと意味があるはずだ。

「古代遺跡の暗号解読だよね」
「一応はな。手がかりがあればいいんだが……
「確証がないの! 珍しいね。Nightらしくないよ」
「私らしいを確証だけど片付けるな。私は別に完璧人間でもない」
「いや、そこまでは言ってないけどね」

 何だかこれから山が大変そう過ぎてNightはピリピリしている。
 実際に見ないとダメなのか。無粋なことだろうが、Nightならそうする。
 けれど今回はそうもいかないみたいで、これから登るのは普通に900メートル近い山、星読山だった。


 星読山ほしよみやまは標高約950メートルのそれなりの山だ。
 傾斜はそこまでなく、急斜面ではないことは救いだった。
 けれどNightは……

「はぁはぁ。はぁはぁ……」
「大丈夫、Night?」
「大丈夫ではないが、登るしかない」
「無理しないでね。Nightは頭は回るけど体力とスタミナがからっきしだから」
「余計なことを言うな」

 本当のことが口から出てしまい、Nightの機嫌が悪くなる。
 どうやら怒らせてしまった。でも実際登る必要はあったのかな?

「星座早見表とかじゃダメなの?」
「ダメだ。実際に上らないとポイントが掴めない」

 ポイントって何だ。アキラは首を捻った。Nightの体調を気にして言ってみたが、どうにも融通は利かないそうだ。
アキラは「困ったね」と言いながら、自信はないがNightの肩を抱いた。

「じゃあ一緒に登ろうよ。私は置いて行ったりしないから」
「そんなのはいい。私は1人でも……」
「ダメだよ。せっかく誘ったのにそんな言い方。はい、一緒に行こうね」
「お、おい!」

 アキラはNightの肩を抱いた。足の歩幅も会わせてまるで二人三脚だ。
 けれどそれが恥ずかしいのか、Nightは顔を下に向けてしまい表情を隠す。
 耳の先まで真っ赤になっているので、こんな経験はないらしい。
 ちなみにアキラはフェルノと一緒に中学時代運動会の二人三脚の練習で下校の時にしていたので変に体が慣れている。

「はいはい、せーのっ。1、2、3、はい!」
「何だこれ……」

 Nightは状況がよくわからずに困り果てている。
 けれど少しずつペース配分がわかってきたのか、Nightの脚がよく回った。
 地面を蹴って、決して登りやすいわけでもない斜面を蹴り上げていく。
 駆け上がるみたいに着実に疲れを吹き飛ばす。

「帰りは降りだから楽だよ。がんばろ」
「頑張るじゃないだろ。登るしかないんだ」
「もう300メートルだもんね。朝までには登りたいよね」

 ちなみにこのペースだと絶望的に間に合わないので、2人はスキルを使っている。
 Nightは【ライフ・オブ・メイク】で山登りに適した靴を履き、格好もそれに近い。
 対してアキラは【月跳】で地面を跳ねるみたいに蹴っている。果たしてこれは山登りなのか?

「そう言えばさっきから誰もいないね。この山ってマイナーなの?」
「そうだな。ほとんど登山客はいない。理由は単純だがな……」

 Nightの喋り方に含みがある。どうやらこの山には何かあるみたいだ。
 それもそのはず、さっきから空気が重たい。
 圧迫感はないが何処からか見られているような狙いすまされているような気がしてならないが気のせい……アキラとNightは左右に避けた。
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