上 下
149 / 568

◇149 小さな部屋

しおりを挟む
 アキラ達は湿った細い通路を歩いていた。
 入り口から入って最初の部屋の床下が一段下がると、奥に行くための隠し通路が出てくるなんて想像していなかった。
アキラたちは前の壁が開くと思っていたが、空洞は全てブラフで、下にあるこの通路が次の部屋に行くための方法だったとは。難しすぎる。

「せ、狭いね」
「そうだな。私たちですらギリギリなのにこれ以上体格のいい人が通れるのかな?」
「どうだろうな。とは言え、その辺りも選別の意味があるんだろう」
「選別の意味って何?」
「簡単なことだ。誰かれ構わず遺跡内に侵入されて宝を盗み出されても困るだろう。これは無難の閃きではなく、小さな子供にしか攻略されないように仕掛けが施されているんだ」
「ちょっと待ってよ、それって私たちが……」
「子供ってことよね」

 ベルに言われてしまい、アキラたちは痛感する。

「た、確かに狭いけど……それはないよね?」
「じゃあどうして通路がどんどん狭くなっているんだ」
「ううっ……それは、そうだけど」
「大丈夫ですよ。通れるだけありがたいです」
「ちょっと雷斬! 私の鳩尾みぞおちに刀の鞘を押し付けないでよ。い、痛い……」
「す、すみません。私が下がりましょうか?」
「ちょっとやめて。痛い、痛い痛い。狭いからやめてよね!」

 後ろは何をしているのかと思い、アキラたちは振り向いた。
 雷斬とベルがもみくちゃになっている。どうしたらそんなことになるのか。

「2人とも詰まるな。帰れなくなるだろ」
「デスポはやだなー」
「最悪コイツで吹き飛ばす」

 Nightの手には明らかに手榴弾が握られている。
 いやいや危なすぎるでしょ! アキラは苦笑いをしながらそっとインベントリに仕舞ってもらう。

「えっと、雷斬たちは自力で来てもらうとして結構低いね」
「天井が下がってきているねー。腰を曲げないと通れないよー」
「スカートじゃなくてよかったな」

 この通路が徐々に傾斜が付いて下がっていた。
 天井が今にも頭に付きそうで腰を曲げないと背中も仕えてしまう。

「おっ、何か見えて来たよ!」
「光と言うことはこの先に何かあるな。おそらく通路の出口だろう」
「だったら早く行こうよ!」
「お、おい! 私も引っ張るな。フェルノも下ろうとするな!」
「えーのっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ……以外に終わるの早いな」

 傾斜を利用して滑り台みたいに下った。けれど思った以上に短くて変に顔をぶつけた。
 アキラだけは何事もなかったが、フェルノは尻餅をつきNightは顔を床の煉瓦にぶつけた。痛そうだ。

「くっ、い、痛い……」
「思いっきりぶつけたね。大丈夫?」
「大丈夫ではないが。鼻をやったな」
「ちょっと出てるね鼻血。えーっと、ハンカチいる?」
「そんなもの自分で作る。どうしてこんな目に……」

 機嫌が悪いのか、【ライフ・オブ・メイク】でハンカチとティッシュを作った。
 鼻にティッシュを詰めていつもにはない馬鹿っぽさがある。なんか可愛い。

「可愛いよ、Night」
「何処が。最悪だ……ん?」
「2人も来たね。Night避けた方がいいよ」

 アキラはNightを抱き寄せると雷斬たちも落ちてきた。
 一応揃ったけどめちゃくちゃ狭くて息苦しい。
 如何やらここは小部屋みたいで、左右には上げるタイプの扉があり、へんてこなレバーが付いている。

「何ここ?」
「狭いね。とっても狭くて息苦しいねー」
「喋るな。酸素が薄くなる」

 ちなみにこのゲーム、酸素がなくても死ぬ。
 普通にリアリティが高すぎてこんな場所に長居はできない。

「仕方ないな」
「あっ! Nightだけズルいよ!」
「酸素ボンベが出てくると、余計にファンタジー感が無くなるわね」
「いいだろう。私は解析班だからな」
「いつからそんなのできたの!」

 Nightは酸素ボンベから1人だけ酸素を吸っている。
 小さな小部屋の中で5人で取り残されてしまったが、気になるものが壁に書かれていた。
 何かの暗号だろうか? 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...