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◇141 古代遺跡

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 9月も終わり頃。
 ついに、ついにやって来たのはアキラたちが求めていた歯車の真実だ。
 そこは森の中にある。今日はNightも興奮が冷め止まない。

「ふっ。いいところだな」
「おっ! Night楽しそうだね」
「何だ。揶揄いでも言うつもりか」

 Nightからの威圧を感じた。
 普通の人なら陰気だが鋭い槍のような口調に気圧されてしまうだろう。
 けれどアキラは何も思わない。笑みを零して楽しそうにしている。

「何だ。気持ちの悪い笑みを浮かべるな」
「気持ち悪いって酷いよ。それに私だって、ウキウキしているNightを見るのは初めてだよ?」
「なっ!」

 どうやら気が付いていないらしい。
 Nightは新しいものを見つけると、嬉しそうに笑う。しかも不気味な笑みを零す。
 それは捉え方によっては不敵としか言い換えようがないが、アキラは意識の切り替えが大の得意なので気付くことができた。

「まあいい……この場所は面白いからな」
「そうだよね。フェルノ、そっちのモンスターは倒せた?」
「問題ないなーい! 全部まとめて燃やし尽くしちゃうよ!」

 いや、それは困る。アキラはフェルノの燃え盛る炎の竜の手を見て真面目になってしまった。
 さっきから襲ってくるカブト虫のようなモンスターをフェルノガガンガン薙ぎ払う。
 打ち付けた拳がモンスターを焼き払う。

「よっし。こっちは……」
「危ないです、少しだけ身を屈めてください。フェルノさん」

 三角形の形をしたダガー形状を先端が、超高速で迫っていた。
 しかしフェルノに直撃する瞬間、青い稲妻を灯した雷の刃が切り裂いた。

「フェルノさん。もう少しですから頑張りましょう」
「そうだね。って、ベルは放って置いてもよかったのかなー?」
「それなら大丈夫ですよ。何せベルは……」

 雷斬はベルの姿を視界の端に入れた。
 すると圧倒的な薙刀捌きで次々に敵を切り裂いている。
 しかしフェルノたちが視線を追った時には、既に片付けてしまっていた。
 まるで自分に飛び交う火の粉を払うかのように、その姿は美しい。風を味方につけた踊り子が《シルフィード》らしかった。


「だけど、どうしてこんなに昆虫系のモンスターが多いのかな?」
「そうだな。例えばこの先にある何かに近づけさせないようにしている、とかか?」
「ってことは間違いなくあるね。この先に古代遺跡」

 ギルドから聞いた話では、この森の向こう側に古代遺跡がある。
 既に森に入ってから30分は経っている。しかし一向に遺跡らしきものは見えてこず、今まで以上にモンスターが強い。
 正直何かに突出している性能を誇るアキラ達継ぎ接ぎの絆パッチワーク・フレンズの面々ならではの動きで突破していた。

「私と雷斬が強硬手段で前をこじ開けて、その隙間を縫ってベルが弓を引くって、結構いい感じの戦術じゃない?」

 フェルノは自分たちの戦い方に感服していた。
 もしかしたら、この森は連携を磨かせるための試練場なのではないだろうか。
 Nightはそんなことを考えている。

「古代遺跡……情報にない場所なだけあって面白いな」
「そうだよね。全然見えないけど」
「それは言うな。遠のく」
「そうかな? 私にはもう少しだって気がするよ。勘じゃなくて、確信かな? 何だかうずうずしているっているのかな?」

 アキラは視線の先を変えた。それは森の木々が蠢いていて、全く開けていない。
 正直こんな道を通りたくない。だけど何故かアキラの意識は“この先に行け”を訴えかけている。
 だからかはわからない。自分の理性が言うことを聞かず、勝手に荒れた地面に踏み出していた。

「何処に行くんだアキラ!」
「その道はダメだよ。多分本物はこっち」
「本物って何だ。って、勝手に行くな! ……仕方ないな」

 アキラは森の中を走った。
 するとNightは頭を抱えてアキラを追いかけると、フェルノがガッツポーズをした。

「よし、私たちも行ってみよう!」
「大丈夫でしょうか? 向こうは道ではないようですよ」
「獣道でもないみたいね」

 雷斬もベルも首を捻っている。
 けれどフェルノは確信していた。こうなった時のアキラは何をするかわからない。
 だけどその行動はいつも……

「何か見えてきましたよ!」
「あれって、古い建造物ね」

 間違っていないのだ。
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