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◇134 想いを繋ぐ力《メンタル》
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アキラ達がバックヤードから出ると、何やら騒がしかった。
当然困惑したのだが、どうやら何か口論にでも発展したのだろう。
Nightは関係ないとその場を立ち去ろうとするが、アキラ達はじっと見ていた。
「おい、とっとと行くぞ」
「ちょっと待ってよ。あれってプレイヤーだよね?」
アキラの視線の先にはプレイヤーとNPCが言い合いになっていた。
隣には倒れたプレイヤー。頬が真っ赤に腫れていて痛そうだ。
どうやら口論の前に殴り合いがあったのだろう。けれど町中での戦闘は禁止のはず。何故警備が来ないのか不思議だ。
「どうして警察が来ないのでしょうか?」
「武器判定ではないからだな」
「どういうこと?」
雷斬が代弁してくれた疑問をきっぱりと答えるNight。
武器判定かどうかで判断だけでされるのはちょっとおかしい気がする。
「正確には幾つかの状況が必要になるが、今回は大きく分けて三つだろうな」
「三つって一体何があったの?」
「まずはここがギルド会館だからだ。確かに武器の使用はほとんどの場合で認められておらず、戦闘もできない。けれどここギルド会館では武器の見せ合いが行われている。あんな感じだ」
Nightが指差したテーブルでは武器を自慢し合う男達がいた。
しかし戦闘はしていない。当然武器による戦闘は許可されていない。
「武器による戦闘は町中では禁止だ。例外として相手が多くのプレイヤーを故意に殺す殺人鬼を仕留める際や、プレイヤーやNPCに危害を加えようとする場合に仲裁により相手をプレイヤーのみ仕留めることが稀にある」
「しかしそのような場合はあくまでも例外。町中での戦闘は警備の目が厳しいので本来できないはずですよ」
「そうだ。だからおそらくあれは……」
Nightは訝しい目をしていた。
どうやら口論の発端はプレイヤー間にあるらしい。
「おい、ギルドでの暴行は禁止だろ!」
「うるせぇ。俺達に逆らってんじゃねえぞ」
「何だと。NPCキラーのくせに」
知らないワードが出てきた。
アキラは首を捻りながら、「NPCキラー?」と口にする。
するとNightは教えてくれた。町中での戦闘において、プレイヤー間で発生する戦闘禁止に最も関わらないものだ。
「NPCキラー。確かにプレイヤー同士における戦闘には制約がある。最も現実に戻る際に悪意がある側は現実に支障が出ないよう、記憶の改竄が発生するがNPCは違う。この世界の住人として生活している彼らを殺して楽しむ卑劣や輩もいる。その場合確かにプレイヤー間ではないからな。警備や他のプレイヤーからの怒りも買いやすいプレイヤー同士の殺人衝動とは異なり、警備を殺してしまえばいい。その快感に取り付かれた奴のメンタルは黒く変色する」
「最低な行為ですね」
「そうね。私ああ言う奴ら好きじゃないわ」
「だが関わらないが吉だ。とにかくこの場を去るぞ」
Nightは説明を終えるとギルドを去ろうとした。
プレイヤー同士の因縁は根深いが、現実に戻れば忘れてしまう。
しかしNPCをやるのも間違いだ。そんな自分勝手な本能を抑えられないような奴らはそのうち排除されるだろう。Nightは心の中で願っていた。
「私許せない」
「はっ?」
「ちょっと言って来るね」
アキラの意識が覚醒した。
とてつもない怒りが悍ましく包み込む、殺人鬼に面と向かって言いに行く。
それを止めようとするNightだったがもう遅い。
「ギルドでも町中でもそんなことしたらダメだよ」
「はぁっ? 何だお前。俺達に立てついてんじゃねえ!」
「プレイヤーへの戦闘は重たいんでしょ?」
「うるせぇ。どうせ記憶は無くなるんだ。そんなこと関係ねえんだよ!」
「ログインができないんだよ」
「くっ!」
男達はアキラに拳を振りかざした。
しかし咄嗟にやめる。どうやらゲームができなくなるのは嫌何だ。
けれど凄まじいのはアキラのメンタルだ。全く動じないまま、悍ましかった怒りを自分のものに制御している。メンタルが据わり過ぎていて、逆に不気味だ。
「おい、行こうぜ」
「そうだよな。こんなガキに付き合ってられるかよ。無意味な正義感でしかねえ」
「そうだな……せいぜい命拾いしたな」
男達はその場を後にしようとした。
しかしアキラは鋭い眼光を向けたまま威圧的なものを放つ。
「待ってよ」
「「「うっ!?」」」
男達は逃げられなかった。背中を突き刺されたような鋭い痛みが走る。
もちろんダメージはない。けれど逃げることを許されなかった。
「もう傷付けないことを約束して。ここにいるみんながルールを守っているんだよ。それぐらいできるよね?」
「何だよお前。急に出てきやがって」
「そうだぜ。俺らはこのゲームでもトップクラスに強いんだぞ」
「そうだ。無名のお前が何を言えるんだよ」
痛いところを突かれた。
しかしアキラはめげず、男達に担架を切った。
「じゃあ私が貴方達よりも強かったから、聞いてくれるんだよね?」
すると男達はアキラの目を見て怖くなった。
その目には力が宿っている。歪ませることのできない凄まじい覚悟と想いが滲み出ており、男達は奥歯を強く噛んだ。
「面白れぇ。じゃあ俺達3人に勝ってみろよ。そうすれば舎弟にでも何でもなってやる。もちろんこんな真似は一切しねえ」
「そうだぜ。でもお前が負けたら、ここにいる奴ら全員の金を貰う。装備もアイテムもだ」
アキラは一瞬だけ動揺した。この歯車を奪われたら面倒なことになる。それだけは避けないといけなかったが、言いだした手前逃げることはできないしもちろんしない。
アキラの掛け声にギルド会館の全員の想いが重なった。
心優しい人たちが多いので、背中に受けた感情の束も太くて強靭だ。
人の気持ちを昂らせ一つにする。それができるのは統率力を抜きにした純粋な才能だとNightはアキラのことを見て思う。
それはきっとこの世界で誰よりも輝いているもののはずだ。見えない絆。それを繋ぐことができるのが、アキラのメンタルの真骨頂だ。
当然困惑したのだが、どうやら何か口論にでも発展したのだろう。
Nightは関係ないとその場を立ち去ろうとするが、アキラ達はじっと見ていた。
「おい、とっとと行くぞ」
「ちょっと待ってよ。あれってプレイヤーだよね?」
アキラの視線の先にはプレイヤーとNPCが言い合いになっていた。
隣には倒れたプレイヤー。頬が真っ赤に腫れていて痛そうだ。
どうやら口論の前に殴り合いがあったのだろう。けれど町中での戦闘は禁止のはず。何故警備が来ないのか不思議だ。
「どうして警察が来ないのでしょうか?」
「武器判定ではないからだな」
「どういうこと?」
雷斬が代弁してくれた疑問をきっぱりと答えるNight。
武器判定かどうかで判断だけでされるのはちょっとおかしい気がする。
「正確には幾つかの状況が必要になるが、今回は大きく分けて三つだろうな」
「三つって一体何があったの?」
「まずはここがギルド会館だからだ。確かに武器の使用はほとんどの場合で認められておらず、戦闘もできない。けれどここギルド会館では武器の見せ合いが行われている。あんな感じだ」
Nightが指差したテーブルでは武器を自慢し合う男達がいた。
しかし戦闘はしていない。当然武器による戦闘は許可されていない。
「武器による戦闘は町中では禁止だ。例外として相手が多くのプレイヤーを故意に殺す殺人鬼を仕留める際や、プレイヤーやNPCに危害を加えようとする場合に仲裁により相手をプレイヤーのみ仕留めることが稀にある」
「しかしそのような場合はあくまでも例外。町中での戦闘は警備の目が厳しいので本来できないはずですよ」
「そうだ。だからおそらくあれは……」
Nightは訝しい目をしていた。
どうやら口論の発端はプレイヤー間にあるらしい。
「おい、ギルドでの暴行は禁止だろ!」
「うるせぇ。俺達に逆らってんじゃねえぞ」
「何だと。NPCキラーのくせに」
知らないワードが出てきた。
アキラは首を捻りながら、「NPCキラー?」と口にする。
するとNightは教えてくれた。町中での戦闘において、プレイヤー間で発生する戦闘禁止に最も関わらないものだ。
「NPCキラー。確かにプレイヤー同士における戦闘には制約がある。最も現実に戻る際に悪意がある側は現実に支障が出ないよう、記憶の改竄が発生するがNPCは違う。この世界の住人として生活している彼らを殺して楽しむ卑劣や輩もいる。その場合確かにプレイヤー間ではないからな。警備や他のプレイヤーからの怒りも買いやすいプレイヤー同士の殺人衝動とは異なり、警備を殺してしまえばいい。その快感に取り付かれた奴のメンタルは黒く変色する」
「最低な行為ですね」
「そうね。私ああ言う奴ら好きじゃないわ」
「だが関わらないが吉だ。とにかくこの場を去るぞ」
Nightは説明を終えるとギルドを去ろうとした。
プレイヤー同士の因縁は根深いが、現実に戻れば忘れてしまう。
しかしNPCをやるのも間違いだ。そんな自分勝手な本能を抑えられないような奴らはそのうち排除されるだろう。Nightは心の中で願っていた。
「私許せない」
「はっ?」
「ちょっと言って来るね」
アキラの意識が覚醒した。
とてつもない怒りが悍ましく包み込む、殺人鬼に面と向かって言いに行く。
それを止めようとするNightだったがもう遅い。
「ギルドでも町中でもそんなことしたらダメだよ」
「はぁっ? 何だお前。俺達に立てついてんじゃねえ!」
「プレイヤーへの戦闘は重たいんでしょ?」
「うるせぇ。どうせ記憶は無くなるんだ。そんなこと関係ねえんだよ!」
「ログインができないんだよ」
「くっ!」
男達はアキラに拳を振りかざした。
しかし咄嗟にやめる。どうやらゲームができなくなるのは嫌何だ。
けれど凄まじいのはアキラのメンタルだ。全く動じないまま、悍ましかった怒りを自分のものに制御している。メンタルが据わり過ぎていて、逆に不気味だ。
「おい、行こうぜ」
「そうだよな。こんなガキに付き合ってられるかよ。無意味な正義感でしかねえ」
「そうだな……せいぜい命拾いしたな」
男達はその場を後にしようとした。
しかしアキラは鋭い眼光を向けたまま威圧的なものを放つ。
「待ってよ」
「「「うっ!?」」」
男達は逃げられなかった。背中を突き刺されたような鋭い痛みが走る。
もちろんダメージはない。けれど逃げることを許されなかった。
「もう傷付けないことを約束して。ここにいるみんながルールを守っているんだよ。それぐらいできるよね?」
「何だよお前。急に出てきやがって」
「そうだぜ。俺らはこのゲームでもトップクラスに強いんだぞ」
「そうだ。無名のお前が何を言えるんだよ」
痛いところを突かれた。
しかしアキラはめげず、男達に担架を切った。
「じゃあ私が貴方達よりも強かったから、聞いてくれるんだよね?」
すると男達はアキラの目を見て怖くなった。
その目には力が宿っている。歪ませることのできない凄まじい覚悟と想いが滲み出ており、男達は奥歯を強く噛んだ。
「面白れぇ。じゃあ俺達3人に勝ってみろよ。そうすれば舎弟にでも何でもなってやる。もちろんこんな真似は一切しねえ」
「そうだぜ。でもお前が負けたら、ここにいる奴ら全員の金を貰う。装備もアイテムもだ」
アキラは一瞬だけ動揺した。この歯車を奪われたら面倒なことになる。それだけは避けないといけなかったが、言いだした手前逃げることはできないしもちろんしない。
アキラの掛け声にギルド会館の全員の想いが重なった。
心優しい人たちが多いので、背中に受けた感情の束も太くて強靭だ。
人の気持ちを昂らせ一つにする。それができるのは統率力を抜きにした純粋な才能だとNightはアキラのことを見て思う。
それはきっとこの世界で誰よりも輝いているもののはずだ。見えない絆。それを繋ぐことができるのが、アキラのメンタルの真骨頂だ。
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