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◇131 満月斬り

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  アキラ達の反撃が始まった。

 まず先に駆け出したのは継ぎ接ぎの絆パッチワーク・フレンズの切り込み隊長でもあるフェルノだ。
 両の拳を竜に変え真っ赤な炎をメラメラと燃やす。

「いっくぞー! そりゃぁ」

 熱い拳を叩きつけた。
 白ウサギのHPが微かに削れる。けれどほんのちょっとで、まだ足りない。
 すると今度は白ウサギも反撃してきた。
 太い筋肉の拳をフェルノに叩きつけようとするが、難なくかわす。息が乱れていないのでフェルノは余裕で避けられた。

「フェルノ調子上がってるね」
「もっちろん。あれだけ空気に馴染めばこんなもんだよー」

 満月山に満ちた重たいどんよりとした空気になれ呼吸を取り戻したので、フェルノだけでなく全員の顔色がいい。
 ベルもスキルを使わずに冷静に射線を見極める。

「フェルノ、3秒後に頭を下げてね」
「オッケー」

 フェルノは前へと突進しながら突き進み、白ウサギと組み合った。
 パワー勝負なら勝てない。なので動きを止めるだけだ。

「それじゃあ行けっ!」

 ベルが射ると弦がたわんだ。
 矢は真っ直ぐに飛んでいき、物理を射抜く。白ウサギの赤い目の一つが潰れた。
 これで白ウサギの思考が怒りに飲まれる。Nightの狙い通りだ

「アキラ行くぞ。私達で隙を作り、フィニッシュは雷斬に決めさせる」
「うん。頼んだよ、雷斬」
「お任せください。私も覚悟が決まりました」

 ギュッと刀の鞘を握る雷斬。
 今のところ致命打になったのはアキラの蹴りが一発のみ。
 相手は相当強い。ならばどうすればいいのか。決まっている、このゲームにおける相手を一撃で仕留める方法を取るだけだ。

「狙いはわかっているな……ならば構わずやれ」

 Nightはそう言い残し、十字架のような剣を振りかざす。
 身の丈にあっておらず不格好だったが、マントをひらりと翻し夜天に浮かぶ暗黒騎士のように振舞う。
 その脇を相棒のアキラが突き進む。こちらはもっと不格好だ。
 白ウサギの脚力を引っ提げ、虫の籠手とオオカミの爪を剥き出しにしている。

「フェルノ、交代だ」
「ご苦労様。ベル、曲射は!」
「5秒待って。10本同時に行くからねっ!」

 Nightとアキラは剣と爪で白ウサギの腕を引き裂いた。
 しかし反動で腕を振り回され体が投飛ばされる。
 木の幹に叩きつけられたが構わないので一旦後退し、その隙にベルの曲射した矢が真上から襲い掛かる。まるで雨にようだ。

 バンバンバンバンバンッ!

 銃弾のような鈍い音だった。
 白ウサギも避けられず背中に何本もの矢が突き刺さり動きが完全に鈍っていた。
 けれどHPバーは黄色のままでかなり防御力が高い。
 普通のやり方をしていてもジリ貧になって、体力の消耗が激しいアキラたちが負けるのは必然だった。

「待ってよ、こんなに硬いの?」
「耐久力もエグいな。やはり単純な策ではダメか……まだか雷斬」
「タイミングを見ています。呼吸が乱れる瞬間が必ずあります。そこが隙です」
「その隙を待っている間に終わっちゃうよ」

 アキラは心配になった。けれど仲間を信じる意識に切り替えると突然勇気が湧いて来る。
 すると頭の中で妙な感覚に襲われた。
 白ウサギの呼吸のリズムがわかったんだ。

「えっ!?」
「どうしたアキラ」

 Nightの声は聞こえていない。
 ただし白ウサギの呼吸のリズムが脈拍のように脳内に流れてくる。これも何かのスキルなのかと思うと、頭のウサギ耳がピクピクしていた。ウサギの視野が呼吸として反映されていた。

「凄い。この能力凄い!」

 今までにない感覚だ。どちらかと言うとオロチコンダや幽霊の女の子に近いが、面白いスキルだった。
 アキラはジッと意識を集中させ呼吸を読むことに集中すると突然白ウサギのリズムが乱れたのを見つける。
 あまりに突然で見逃しそうになった。けれど雷斬もわかっていたのだろう。
 その隙を突いて飛び出した。

「そこです。満月斬り」

 雷斬は【雷鳴】を全身に纏い、白ウサギの顔面に近づく。
 すると地面を蹴って宙に舞い、一刀両断した。
 白ウサギの頭が兜割りのように簡単に真っ二つになる。
 あまりの速さと正確さにおぞましいものを感じるかもしれないが、アキラ達は月の光を受けた雷斬がパチパチと煌々としていて綺麗だった。
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