127 / 550
◇126 ウサギ病
しおりを挟む
小雪に連れられやって来たのは、村長の家だった。
一際大きな平屋の家で、ここも静かだった。
小雪はゆっくりと扉を開くと、やはり静かだった。
「少し待っていてください」
小雪は村長の家に上がり込んだ。
するとNightは違和感を感じ取った。
アキラやフェルノ、雷斬にベルもおびただしい人の気配に飲まれそうだった。
「うわぁ! ここ人が集まっているよ」
「絶対に危ないよ。どれだけ人がいるのかわからないもん」
「おそらく村の人全員ですね。それにしても静かです」
「確かのそうよね。Nightはどう思うの」
「どうも思わない。静かなだけだ」
えらく淡白だった。けれど何か察しがついているようで、もう一度用紙を見た。
そこには今回の季節限定イベントのことが書いてある。
何度も流し目し、Nightは表情を歪めた。
「お待たせしました。村長を連れて参りました」
「小雪さん。どうもありがとうござ……えっ!?」
悲鳴を上げてしまった。
村長さんの肌が真っ白だった。しかも頭からウサギの耳を生やしている。
あまりに奇妙で継ぎ接ぎの絆の面々は顔を引き攣らせる。
「そんな顔をしないでください。と申しています」
村長さんは腰を曲げた男の人だった。
けれど自分からは話そうとせず、小雪に耳打ちする。まるで通訳だ。
小雪は耳を傾けるが、人間の耳の位置ではありえない。
「小雪さん?」
「すみません。もう少し、声を落としてはいただけませんか? 私は進行が遅いですが、流石に耳が痛いのです」
「進行が遅い?」
アキラ達は首を捻った。
小雪は「見て貰った方がわかりやすい」と告げ。頭の頭巾を剥がす。
ウサギの耳が生えていた。だけどまだ白くない。これは一体何なのか。
「小雪さんこれは!」
「この村の人々は皆、同じ病に侵されているんです。そのことをギルド会館に伝えたものの、一向に……」
どうやら、この季節限定イベントはいわゆる緊急依頼のようだった。
誰の受けないんではない。怪しんでいたらしい。
そこにまんまと飛び込んだアキラ達は断れない状況に迫られていた。
もっとも……
「この病はウサギ病と言って、あるモンスターの仕業何です」
「酷い。そんなことする何て」
空気が重くなった。
病気の人の話をするときは、みんなこんな空気に代わる。
だけどアキラは諦めてはいなかった。
空気をぶち壊しに行く。
「ねえみんな、私何とかしてあげたい」
「何とかってなんだ。もっとはっきりと言え」
「病気を治してあげたい。だから協力して」
どのみちこの依頼を引き受けたのなら、何かしら解決の余地がある事案だ。
となるとこのままイベントを進めた方がいいに決まっている。
すると小雪は村長から伝言を受け、アキラ達に説明した。
「ありがとうございます。ですが相手はとても危険なモンスターですよ」
「やっぱりモンスターの仕業か。ウサギ系だな」
「はい。満月山には古くから、白いウサギが棲まうという伝説があるそうです。篠月の刻、丑三つ時の頂上にて白き獣が踊る」
「仰々しすぎない。しかも丑三つって……」
「多分現実のだよね」
丑三つ時となると夜中の2時ごろだ。
その時間まで起きているのは次の日が学校だと厳しい。
とは言え、このイベントはゲリラ的に開始されたので影が薄く、これ以上誰かがやって来るとは思えない。この世界のNPC達は生きている。ただのNPCではなく自分の意思を持っているのだ。
「このままじゃ病気が治らないよね」
「そうだろうな。最悪この村は消滅する」
「それはすなわち、この世界で獲得できるアイテムの数も減るということですね」
「そうなるな」
ここが面倒ポイント。
滅多にプレイヤーが村を見殺さないのは、自分達の首を絞めるからだ。
そのためこの手のイベントには率先して参加する紳士プレイヤーもいるはずだが、今回は生憎と手が回っていなかった。
「仕方ないか。わかった、この村を助けるぞ」
Nightも了承し、継ぎ接ぎの絆メンバーは動き出した。
まずは深夜になるのを待つのかと思いきや、小雪はアキラ達を待たせる。
どうやらこのイベントはあるアイテムがなければ条件は整わなず、永遠に思考しないらしく、NPCの誰かがそのアイテムを譲渡してくれる。そんな仕様だった。
「皆さん待ってください。……これを持って行ってください」
「これは何ですか?」
「笹の葉のようですね」
手渡されたのは、ふっくらと盛り上がった笹の葉だった。
隙間から覗き込むと、中に包まれていたのは白いお月見団子だった。
中身は何も詰まっていないようで、餡のような甘みはない。
小雪が言うにはこの団子を備えないとモンスターは現れないらしい。闇雲にやらなくて正解だと、胸を撫で下ろした。
一際大きな平屋の家で、ここも静かだった。
小雪はゆっくりと扉を開くと、やはり静かだった。
「少し待っていてください」
小雪は村長の家に上がり込んだ。
するとNightは違和感を感じ取った。
アキラやフェルノ、雷斬にベルもおびただしい人の気配に飲まれそうだった。
「うわぁ! ここ人が集まっているよ」
「絶対に危ないよ。どれだけ人がいるのかわからないもん」
「おそらく村の人全員ですね。それにしても静かです」
「確かのそうよね。Nightはどう思うの」
「どうも思わない。静かなだけだ」
えらく淡白だった。けれど何か察しがついているようで、もう一度用紙を見た。
そこには今回の季節限定イベントのことが書いてある。
何度も流し目し、Nightは表情を歪めた。
「お待たせしました。村長を連れて参りました」
「小雪さん。どうもありがとうござ……えっ!?」
悲鳴を上げてしまった。
村長さんの肌が真っ白だった。しかも頭からウサギの耳を生やしている。
あまりに奇妙で継ぎ接ぎの絆の面々は顔を引き攣らせる。
「そんな顔をしないでください。と申しています」
村長さんは腰を曲げた男の人だった。
けれど自分からは話そうとせず、小雪に耳打ちする。まるで通訳だ。
小雪は耳を傾けるが、人間の耳の位置ではありえない。
「小雪さん?」
「すみません。もう少し、声を落としてはいただけませんか? 私は進行が遅いですが、流石に耳が痛いのです」
「進行が遅い?」
アキラ達は首を捻った。
小雪は「見て貰った方がわかりやすい」と告げ。頭の頭巾を剥がす。
ウサギの耳が生えていた。だけどまだ白くない。これは一体何なのか。
「小雪さんこれは!」
「この村の人々は皆、同じ病に侵されているんです。そのことをギルド会館に伝えたものの、一向に……」
どうやら、この季節限定イベントはいわゆる緊急依頼のようだった。
誰の受けないんではない。怪しんでいたらしい。
そこにまんまと飛び込んだアキラ達は断れない状況に迫られていた。
もっとも……
「この病はウサギ病と言って、あるモンスターの仕業何です」
「酷い。そんなことする何て」
空気が重くなった。
病気の人の話をするときは、みんなこんな空気に代わる。
だけどアキラは諦めてはいなかった。
空気をぶち壊しに行く。
「ねえみんな、私何とかしてあげたい」
「何とかってなんだ。もっとはっきりと言え」
「病気を治してあげたい。だから協力して」
どのみちこの依頼を引き受けたのなら、何かしら解決の余地がある事案だ。
となるとこのままイベントを進めた方がいいに決まっている。
すると小雪は村長から伝言を受け、アキラ達に説明した。
「ありがとうございます。ですが相手はとても危険なモンスターですよ」
「やっぱりモンスターの仕業か。ウサギ系だな」
「はい。満月山には古くから、白いウサギが棲まうという伝説があるそうです。篠月の刻、丑三つ時の頂上にて白き獣が踊る」
「仰々しすぎない。しかも丑三つって……」
「多分現実のだよね」
丑三つ時となると夜中の2時ごろだ。
その時間まで起きているのは次の日が学校だと厳しい。
とは言え、このイベントはゲリラ的に開始されたので影が薄く、これ以上誰かがやって来るとは思えない。この世界のNPC達は生きている。ただのNPCではなく自分の意思を持っているのだ。
「このままじゃ病気が治らないよね」
「そうだろうな。最悪この村は消滅する」
「それはすなわち、この世界で獲得できるアイテムの数も減るということですね」
「そうなるな」
ここが面倒ポイント。
滅多にプレイヤーが村を見殺さないのは、自分達の首を絞めるからだ。
そのためこの手のイベントには率先して参加する紳士プレイヤーもいるはずだが、今回は生憎と手が回っていなかった。
「仕方ないか。わかった、この村を助けるぞ」
Nightも了承し、継ぎ接ぎの絆メンバーは動き出した。
まずは深夜になるのを待つのかと思いきや、小雪はアキラ達を待たせる。
どうやらこのイベントはあるアイテムがなければ条件は整わなず、永遠に思考しないらしく、NPCの誰かがそのアイテムを譲渡してくれる。そんな仕様だった。
「皆さん待ってください。……これを持って行ってください」
「これは何ですか?」
「笹の葉のようですね」
手渡されたのは、ふっくらと盛り上がった笹の葉だった。
隙間から覗き込むと、中に包まれていたのは白いお月見団子だった。
中身は何も詰まっていないようで、餡のような甘みはない。
小雪が言うにはこの団子を備えないとモンスターは現れないらしい。闇雲にやらなくて正解だと、胸を撫で下ろした。
10
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
いや、一応苦労してますけども。
GURA
ファンタジー
「ここどこ?」
仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。
気がつくと見知らぬ草原にポツリ。
レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。
オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!?
しかも男キャラって...。
何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか?
なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。
お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。
※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。
※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。
べちてん
SF
生まれつき体の弱い少女、夏凪夕日は、ある日『サンライズファンタジー』というフルダイブ型VRMMOのゲームに出会う。現実ではできないことがたくさんできて、気が付くとこのゲームのとりこになってしまっていた。スキルを手に入れて敵と戦ってみたり、少し食事をしてみたり、大会に出てみたり。初めての友達もできて毎日が充実しています。朝起きてご飯を食べてゲームをして寝る。そんな生活を続けていたらいつの間にかゲーム最強のプレイヤーになっていた!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる