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◇116 欲しいのはあの角

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 今回の依頼の品は、ブラックメタルライノスの角だ。
 硬くて丈夫な角は加工には手間暇がかかるが、その分鋭い武器になる。
 主に使われる用途は短剣や槍の先端だ。
 熱にも強く、武器以外には置物に加工もされる。
 黒くて艶のある角の表面は見ているだけで美しかった。
 しかしそれだけ入手も困難で、ブラックメタルライノス自体が頻繁でもない。

「ここで逃せば違約金も大きい。絶対に捕まえるぞ」
「それはそうだけど、あの角ってもう生えてこないの?」
「どうしてそんなことを気にするんだ」
「だ、だって。元々サイの角って毛でしょ? 確かその角を求めて乱獲された事例もあるって……」
「絶滅危惧もいたよね」

 今更だが忍びない。
 実際のリアルでは際の密猟や乱獲があって問題視された。
 それにより数を減らした種もいる。
 だからゲームで自分たちのしていることが、リアルのそれと重なってしまい、踏み込もうにも踏み込めない。

「こっちでのサイは違う。確かに似たような種はいるが、だからと言ってこっちはモンスターだ。勝手にリスポーンする上に、ブラックメタルライノスは鉱石を食べる。それを主原料に1日もあれば完全復活だ」
「「そんなに早いの!」」
「ああ。だから気にするな」

 急にリアリティが消えた。
 アキラとフェルノも気合を入れ直す。
 もちろんさっきの設定は本当で、2人を丸め込む嘘じゃない。

「とにかく今は祈るしかない。このまま直進してくれればいい」
「そうだね。万が一に備えて追ってるけど、このままいけば」
「苦労が実るねー」

 3人には確信があった。
 無策ではないのはまさにこのこと。
 ブラックメタルライノスはエンジンを吹かしながら、直進していた。

「行ける行ける。このままいけば……」

 ブラックメタルライノスが盛り上がった地面を上った。
 すると突然動きを止め、目の前から消えた。
 ドカーン! と爆発音にも似た落下音が聞こえてきた。

「よしっ!」

 Nightが珍しくガッツポーズをした。
 そのことに目を奪われながらも3人は盛り上がった地面を上る。
 崖でもない。ただの小さな斜面を上ると、そこに広がるのは思い描いた予想図。

「うわぁ、本当に落ちてるよ。深く掘っておいてよかったね」
「深すぎるのも大変でしょ」

 ブラックメタルライノスは地面に彫られた穴の中の落ちていた。
 ブルーシートを被せられ、その上には砂が盛ってある。
 完全に外からでは視認できないように細工をした完璧な落とし穴だ。
 もちろん自然物ではない。意図的に用意した。

「流石に製作時間に3時間を掛けた甲斐はあったね」
「そうだよ。Nightがもっと早く重機を作ってくれたらよかったのに」
「そんなもの部品ごとででしか間に合わないだろ」

 ちなみに作ったのは穴掘り用のドリルだ。
 1つ1つ【ライフ・オブ・メイク】で部品を作り、簡易的ではあったが作ることができた。
 そして今回新たに追加されたのは、Nightの【ライフ・オブ・メイク】で作ったものは耐久値があり、その内壊れて消滅してしまうこと。
 一度作ったものは次に作る際に精度が上がることが判明した。
 新事実に驚いたのは言うまでもないので、想像してほしい。

「でもさ、まさかこんな原始的な方法に頼るなんてね」
「一番成功率は高い。奇襲や奇策は人間の深層心理の外側にあるものだからな。ドッキリ番組でも落とし穴はあるだろ」
「クッション用の発泡スチロールが敷かれてるけどね」
「だが地雷を見てみろ」
「それは……言えません」

 とにかく、しょぼい罠でも規模と注意を散漫化させればはまる。
 にしても新しい戦法も現実味がありすぎるが、ブラックメタルライノスはすぐに這い上がる。
 その前に少しだけ角の先端を貰い、睨まれる前にとんずらするする姿が何とも滑稽だった。
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