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◇121 謎の歯車

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 5人はギルド会館に向かっていた。
 足早になっている理由は、アキラが所持しているアイテムにある。
 見たこともないアイテムなので、冒険者ギルドに行けば何かわかるかと思った。
 そのアイテムを手にしたのは、今からつい1時間前に遡る——


 謎の歯車モンスターを討伐した。
 雷斬は深手を負い、雷のスキルを連続で発動したため体力を消耗している。
 しかし剣を心得ているためか、ある程度は平気そう。だけどベルの口から雷斬が疲れを隠していたことを伝えられ、無性に心配していた。

「ごめんね、雷斬。私のせいで」
「アキラだけじゃないよ! 私だって……」
「大丈夫ですよ。皆さん、心配してくださってありがとうございます」

 雷斬は何故か頭を下げた。
 アキラ達は「どうして雷斬が謝るんだろう」と思い首を捻るが、もう1つ気になるのはNightの反応だ。
 周囲一帯を観察し警戒しているみたいに見える。
 雷斬がこんなに頑張ってくれたのに、それはないとアキラは思う。

「Nightは心配してあげないの?」
「そうだよ。気づいていたけど、こんなに無理して疲れているんだよ!」
「疲れているのバレてるじゃない」
「そうでしたね。無理に隠す必要もありませんでした」

 雷斬が必死に隠そうとしていたことをフェルノはあっさりとバラした。
 にしても「最初から気づいてたのに、合わせてくれたんだ」とフェルノに対して思うアキラ。けれどNightはすぐさま話を流し、武器を構える。

「警戒しろ。まだ似たようなのがいるかもしれない」
「あんなのがまだいるの!」

 アキラは正直だった。
 フェルノたちも驚いたが、すぐに警戒し始める。
 けれど歯車の鈍い音は聞こえてこない。
 どうやら安心して良さそうだ。

「大丈夫みたいだね」
「そうだな。武器は下ろしていいぞ」

 Nightは指示し、アキラたちは武器を下ろす。
 けれど警戒を解いたわけじゃない。またいつ襲われるかわからないので、迂闊うかつに足を踏み出せない。
 そこで、見えている限りで安全そうなエリアだけを探索した。
 範囲は限られるが、地雷などの設置系の罠も見たところなさそうだ。

「うーん、何にもないね」
「そうだねー。あれだけ苦労したんだったら、何か1つくらいアイテムを落としてほしいよねー」
「爆散した時に歯車の破片が落ちていたようだが、全く見当たらないな」
「そうですね。しかも地面の修復もかなり早いです」

 雷斬の目線も大事だった。
 あれだけ派手にやったのに、地面の抉れが見当たらない。
 派手に爆発した際には、微かに穴ができていた。だけど今はダンジョンの再生の性質で消えている。苦労が水の泡。そう思っても無理はない。

「あれ?」

 などと落胆していると、アキラはキラリと光るものを見つける。
 岩の影に落ちていたので見落とすところだった。
 どうやら1つだけアイテムがドロップしたらしい。

「これは……歯車?」

 見たことのないアイテムだった。
 ただの歯車のようだけど、この世界でこの手のアイテムをモンスターから手に入れた例を聞いたことがない。少なくとも、アキラの経験上ない。

「ねえみんな、こんなのが落ちてたよ!」

 すぐに全員を集め、手にしたアイテムを見せる。
 1人だけ食いついたが、残りの3人はポカンとして興味を失っていた。
 何せ使い方がわからないからだ。
 けれど5人中1人だけ……Nightは目を見開いている。

「これは歯車か。たった1つでも貴重なアイテムだぞ」
「そうなの? 私にはガラクタにしか見えないけど」
「同じくです」

 アキラと雷斬は正直者。
 Nightが興奮している理由もさっぱりで、フェルノとベルもお手上げだった。
 この中で唯一機械に興味があるNightだけが喜んでも、あまり一体感はない。

「このアイテムは今ネット上でも……」
「騒がれているの!」
「いいや、全く情報がない。つまり新アイテムだ。私たちはそれを先に手に入れた、幸運者と言うわけだな」

 Night的には褒めているつもり。
 しかし温度差があるのは、疲労感に対しての達成からの報酬の謎感にある。
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