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◇120 GEAR DESTRUCTIO

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 Nightは少し考えた。
 奥歯から血が出るぐらい考えた。今の戦力で勝てるかどうかじゃない。ましてや逃げる気もない。ここで倒す。倒さないとどのみち逃げ切れない。毎回こんな状況が続く中、今回は最大に悩んでいた。
 何故なら相手がモンスターではない。機械生命体だからだ。

「どうする。機械だぞ、相手は。硬度が違い過ぎる」
「ねえNight?」
「何だアキラ。今私は作戦を……」
「例えばなんだけど、当たったら一発アウト何だよね?」
「そうだ。だから当たった時点で負けだ」
「……では当たらなければいいんですよね」

 雷斬も何か勘づいた。
 アキラの思考にピンと来たのはNightもそうだ。
 「まさかな」と思い、頭を抱える。しかしアキラの考えそうなことだと思い、メッセージでフェルノとベルにも伝える。

「それじゃあみんな行くよ!」
「では私が先手を切ります。……当たらなければ、意味がありませんからね」

 雷斬は【雷鳴】を呼んだ。
 鋭い青い稲妻を纏った雷斬は、その場から一瞬で消える。
 圧倒的な速さ。それだけじゃない。纏ったのは刀もだ。

 ギギギギギィィィィィ!

 無数の歯車が発射された。
 しかし雷斬には当たらない。雷の速度を纏った雷斬を止めることはできない。流石はレア種族だ。

「私の【雷鳴】からは逃れられませんよ!」

 愛刀の刃を叩きつけた。
 しかし微かな傷が1つ付いただけで、他にはダメージらしきものはない。

「くっ!」

 一瞬だけ動きを止めただけだ。
 すぐさまその場を離れ、今度は真後ろから矢が放たれた。開いた口に突き刺さり、歯車を詰まらせる。

「よしっ! ちゃんと命中したわね」

 流石はベルの腕だ。ブリキ人形のようなモンスターは、ギギギ……ガガガァとけたたましい音を余計に鈍らせる。
 歯車の発射が完全に止まった。
 しかし次が来るかわからない。フェルノとアキラは各々がスキルを使い、ブリキ人形に叩き込む。これでも倒せない。

「炎込みの連続攻撃だよ! どんなボディ装甲してるのさー!」
「大丈夫だよ。Night、準備はできた!」
「当たり前だ。これでチェックメイトする!」

 Nightの指から解き放たれる。
 細長いナイフのようなものが、まるでダーツの矢のように投擲された。
 ブリキ人形の口の中に投擲されたダーツが突き刺さり、その隙にフェルノが点火し、アキラがブリキ人形を吹き飛ばした。

「吹き飛んでよねっ!」

 ブリキ人形は空中で分解した。
 けたたましい音を立てながら、炎を解き放ち爆散した。
 歯車や鉄板の装甲が吹き飛び、アキラ達に降りかかる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「嘘でしょ! 爆散した後に。残りが……」
「逃げますよ」

 雷斬は2人を連れてその場から離脱する。
 しかし致命傷を食らわなくすんだので、HPはレッドラインを切っていた。
 珍しく四つん這いになって、息を荒げていた。

「はぁはぁはぁはぁ、危ないところでした」
「ありがとう雷斬。まさか二次災害があるなんて……」
「大丈夫です。突然だったもので、体に堪えますね」

 雷斬は疲れていた。
 それもそのはず、筋力のパラメータはそこまで高くはない。敏捷性が売りの雷斬にとって刀を構えたままではなかなか体力を使うらしい。無理をしたのは言うまでもない。
 しかしそのおかげで2人は無事だった。
 雷斬に感謝をし、安堵したところでベルは雷斬の脇腹に肘を入れる。

「うっ!」
「うっ、じゃないから。爆散した時にナットが当たったんでしょ?」
「……気づいていたんですね。流石はベルです」
「当たり前よ。何年一緒にいると思っているの。無理しちゃダメだからね」

 ベルは雷斬を叱咤した。
 他に誰も気が付いていない中、流石は親友だと雷斬も安堵し心を落ち着かせる。
 しかし脇腹だけはやめて欲しかった。今一番痛むのは、ナットが直撃した脇腹なのだから。
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