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◇119 ギギギギア

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 メタルアントを討伐した。
 急襲になったのは流石に卑怯だった気がする。しかしくよくよしていても仕方ない。
 数に振りがある以上、Nightの作戦に乗るしかない。

「終わったな」
「うん。レベルもかなり上がったよー!」

 フェルノは一気にレベル30。
 とは言えステータスにそこまで大きな変化はない。
 ただ動きが洗練されてきている。少ない炎で次々にメタルアントを薙ぎ払っていた。

「よかったねフェルノ」
「うん。これで少しは追いついたよねー」
「……うん」

 アキラは濁した。
 フェルノは気づいていないのだろうか。パーティーを組んでメタルアントに挑んだ。1人1人が得られる経験値は貢献度によって決まる。
 そのことを念頭に入れていれば、すぐに気が付いたはずだ。
 アキラたち高レベル組のレベルも自然と上がっていることに。
 そのことにいち早く感づいたアキラは、Nightに耳打ちする。

「今レベル何?」
「45だ。アキラはどうだ」
「私は40。何だかレベル差が開いているよ」
「結局変わらなかったな」

 意味がなかった。以上、メタル狩りでした……と締めくくりたいところだが、さっきから嫌な音が聞こえていることに雷斬は眉根を寄せる。

「皆さん、何か聞こえませんか?」
「聞こえるって何が?」
「この音です。ギギギと鈍い音がしませんか?」

 アキラ達は首を捻り、耳を澄ました。
 すると鈍くて重たい音がした。ギギギと言っているようにも聞こえる。
 しかもすぐ近くから聞こえていた。
 この音は歯車?

「それに何だか近づいている気も……えっ!?」

 振り返ると異物がいた。
 足のようなものが生えていて、何だかモンスターらしくない。この間のトカゲ戦車やブラックメタルライノスとはまた雰囲気が違う。その見た目は人形。古いアンティークのブリキの人形のようだった。

「何だこれ? 超合金か」
「気を付けてNight……何だか嫌な予感がするよ」
「それはわかる。しかし何だこれは。モンスター判定のようだが……」

 Nightは近づいて調べようとした。
 するとブリキの人形のようなものが動き出す。口の部分を開き、音を奏でる。
 耳鳴りのような鈍い音だったが、一番近くにいたNightはマントで自分の身を包む。

 ギギギギギィィィィィ!

 口から歯車が飛んできた。
 まるで銃弾の嵐のようで、アキラたちは身を屈めて攻撃を躱す。
 完全に敵対反応を示していた。
 周りの地形何て構わず、大量の錆び付いた歯車を発射する。

「うわぁ! ちょっと待ってよ」
「アキラさん、こっちです」

 雷斬に腕を引かれて岩の後ろに隠れる。
 しかし隠れたはずの岩の破片が破壊された。どうやら岩すら破壊する一撃らしい。

(うえっ、食らったら死ぬよね)

 間違いなくHPの残りは吹き飛ぶ。
 今のうちに回復しておこうと思い、ベルトのポーチからポーションを取り出す。
 一気に飲み干すも、その間もずっと歯車が飛び交う。
 Nightも黒マントに歯車の直撃を受け、ボコボコに凹ませながら何とか岩の傍まで駆け寄る。

「大丈夫、Night?」
「大丈夫に見えるのか。あいつはヤバいぞ」
「うん。無限に口から歯車を出しているよ。でもレベルはそんなに高くないみたい……うわぁ!」

 目の前に歯車が飛んできた。
 間一髪のところで岩の中に戻り、直撃をかわす。殺気からこんなやり取りばかりで、緊張感が絶えない。アキラは胸を撫で下ろす。

「安心している場合か! 今は直線状にしか歯車を放っていないが、このままだと逃げきれないぞ」

 既に標的なんて関係なし。
 アキラたちは銃弾のように無限に発射される歯車の攻撃をガトリングガンと仮定し、チャンスを待った。このまま隠れていてもいずれやられると思ったからだ。

「フェルノとベルは……」
「無事みたいだ」

 奥の方で親指を立てている。
 どうやら2人は無事なようで、ピンチなのはアキラ達らしい。
 またしても前衛的な立ち回りになりそうだが、どうするべきか必死に頭を使って考えていたNightは奥歯を噛み締めていた。
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