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◇92 風の中、真の一射
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アキラとNightがツインビーを相手取る中、弓を携えたベルは神経を研ぎ澄ませる。
すると彼女の周りを風が吹き抜けた。
柔らかい風、激しい風。全てを入り交えたみたいに、体中を駆け巡る。
「一射必中。心象の矢! 【心射必中】行けっ!」
指先から弦を放すまでに伝わったのは、僅か0.2秒。
今までにない集中力が功を奏したのか、矢は綺麗に放たれる。
風や気流の流れを完全に無視し、放たれた一射はツインビーの細い体を繋ぎ目から貫いた。
「言ったでしょ。私は風が吹いている時の方が精度がいいのよね」
ツインビーはバラバラになった。
空中分解してしまい、塵になるよりも早く本体が崩れていた。
「こんなに強いのに、ベルのスキル」
「大概だ。一射目は確実に敵を射抜き、精神にまでダメージを与えるなんてな」
「うーん、そこまでは考えたことはないかな。でもありがとう、助けに来てくれて」
「Nightに伝えたら、教えてくれたんだ。この場所は危険だって」
「そうらしいわね。でもなんで……」
ベルは考え出した。
それもそのはず、先程まで何も起きなかったはずなのに急に襲って来たんだ。
しかしNightは答えを知っていたので、空に向かって指を差した。
「正解はこれだ」
「太陽? もしかして陽が出ているときに襲って来るの?」
「そうだ。ツインビーはその性質で暗闇での行動は極力しない。理由は単独行動故に、群れでの戦闘には不向きだからだ。だから活動時間は昼間、しかも午後からに限られる。この世界では、例外を除いて時間帯が固定されていない。リアルの1日でこの世界は3日の時を過ごす。それを鑑みればわかるだろう」
つまりツインビーは午後から出てきて、1人でいるところを襲う。
強力な毒針で敵を殺してしまうんだ。何て恐ろしい。改めて言うが、怖いと思った。
「そっか。でもそんな相手の攻撃をよく受けきったわね」
「私のスキルです。って、Night上手くいったよ。久しぶりに獲得したみたい」
アキラはポップアウトしたメッセージを見て驚いた。
だけどいつもと少し違う様子だ。
固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを構築しました。ツインビー:【2段階攻撃】』
まさかの毒強化じゃなかった。
それもそうだ。私はオロチコンダを倒したから【毒無効】が使える。
その影響かは知らないが、いつもとは違う様相のスキルを奪い取っていた。
「【2段階攻撃】? テイストが違うな」
「そうだよね。もしかして、ダメージが倍加するのかな」
「そんなチートスキル……いやお前はチートみたいなものか」
「どういう意味それ!」
アキラは抗議を入れる。しかしNightは勝手に納得してしまい聞く耳を持たない。
本当に変わっていると感じた。しかしベルは何処となく自分の肌に合っていると思い、気が抜けてクスッと笑ってしまう。
「ふふっ。やっぱりこのパーティー面白いわね」
「パーティーじゃなくてギルドだけどね」
「どっちでもいいわよ。でも決めた。私も入ってみるわ、貴女達のギルド」
あまりに急すぎて理解が追い付かなかった。
アキラは意識の切り替えが早いとはいえ、Nightでさえ何も繋がりが見えないので一瞬動揺したが、すぐに気を取り直す。
「随分と風向きが変わったな」
「そうかな? 私はこんなよ」
「……まあいい。それで決め手は何だったんだ」
「決め手? うーん、面白いからかな」
Nightは言葉を失う。
長い沈黙の間アキラは考えていた。ベルが如何してパーティーにいやギルドに加入してくれたのか。それはきっとツインビーに襲われた自分を助けてくれたから。そのことに気が付いているのに、心のどこかで言い出せない気持ちがあるんだと、素直になれないベルの心を同調することで完全に見透かしていたんだ。
だけどそれがまた可愛いと思い眺める、いつものアキラなのだった。
すると彼女の周りを風が吹き抜けた。
柔らかい風、激しい風。全てを入り交えたみたいに、体中を駆け巡る。
「一射必中。心象の矢! 【心射必中】行けっ!」
指先から弦を放すまでに伝わったのは、僅か0.2秒。
今までにない集中力が功を奏したのか、矢は綺麗に放たれる。
風や気流の流れを完全に無視し、放たれた一射はツインビーの細い体を繋ぎ目から貫いた。
「言ったでしょ。私は風が吹いている時の方が精度がいいのよね」
ツインビーはバラバラになった。
空中分解してしまい、塵になるよりも早く本体が崩れていた。
「こんなに強いのに、ベルのスキル」
「大概だ。一射目は確実に敵を射抜き、精神にまでダメージを与えるなんてな」
「うーん、そこまでは考えたことはないかな。でもありがとう、助けに来てくれて」
「Nightに伝えたら、教えてくれたんだ。この場所は危険だって」
「そうらしいわね。でもなんで……」
ベルは考え出した。
それもそのはず、先程まで何も起きなかったはずなのに急に襲って来たんだ。
しかしNightは答えを知っていたので、空に向かって指を差した。
「正解はこれだ」
「太陽? もしかして陽が出ているときに襲って来るの?」
「そうだ。ツインビーはその性質で暗闇での行動は極力しない。理由は単独行動故に、群れでの戦闘には不向きだからだ。だから活動時間は昼間、しかも午後からに限られる。この世界では、例外を除いて時間帯が固定されていない。リアルの1日でこの世界は3日の時を過ごす。それを鑑みればわかるだろう」
つまりツインビーは午後から出てきて、1人でいるところを襲う。
強力な毒針で敵を殺してしまうんだ。何て恐ろしい。改めて言うが、怖いと思った。
「そっか。でもそんな相手の攻撃をよく受けきったわね」
「私のスキルです。って、Night上手くいったよ。久しぶりに獲得したみたい」
アキラはポップアウトしたメッセージを見て驚いた。
だけどいつもと少し違う様子だ。
固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを構築しました。ツインビー:【2段階攻撃】』
まさかの毒強化じゃなかった。
それもそうだ。私はオロチコンダを倒したから【毒無効】が使える。
その影響かは知らないが、いつもとは違う様相のスキルを奪い取っていた。
「【2段階攻撃】? テイストが違うな」
「そうだよね。もしかして、ダメージが倍加するのかな」
「そんなチートスキル……いやお前はチートみたいなものか」
「どういう意味それ!」
アキラは抗議を入れる。しかしNightは勝手に納得してしまい聞く耳を持たない。
本当に変わっていると感じた。しかしベルは何処となく自分の肌に合っていると思い、気が抜けてクスッと笑ってしまう。
「ふふっ。やっぱりこのパーティー面白いわね」
「パーティーじゃなくてギルドだけどね」
「どっちでもいいわよ。でも決めた。私も入ってみるわ、貴女達のギルド」
あまりに急すぎて理解が追い付かなかった。
アキラは意識の切り替えが早いとはいえ、Nightでさえ何も繋がりが見えないので一瞬動揺したが、すぐに気を取り直す。
「随分と風向きが変わったな」
「そうかな? 私はこんなよ」
「……まあいい。それで決め手は何だったんだ」
「決め手? うーん、面白いからかな」
Nightは言葉を失う。
長い沈黙の間アキラは考えていた。ベルが如何してパーティーにいやギルドに加入してくれたのか。それはきっとツインビーに襲われた自分を助けてくれたから。そのことに気が付いているのに、心のどこかで言い出せない気持ちがあるんだと、素直になれないベルの心を同調することで完全に見透かしていたんだ。
だけどそれがまた可愛いと思い眺める、いつものアキラなのだった。
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