83 / 575
◇83 古代トンボモチーフ
しおりを挟む
ギュィーン!
ギュイーン!
バイクのエンジン音のような、鋭くて破裂的な音が耳をつんざく。
けたたましくてうるさい。
頭が壊れそうになって、身動きがまともに取れなくなる。
アキラたちはそんな相手の潜む森の中にいた。
「うっ、うるさい」
「だから耳栓を付けろと言ったんだ」
「だ、だって。流石にこれだけうるさいなんて……」
アキラはNightに叱咤された。
渡されていた耳栓を付けようにも、今更遅い。
すでに耳の奥は、鳴りやまない音のバイブレーションで苦しかった。
「アキラ大丈夫?」
「う、うん。でも、これは酷いね。こんなのが町中にいたら……」
「窓ガラスは吹き飛ぶだろうな」
衝撃波のビートが刻む。
目を凝らしてみてみると、森の中に赤い点が窺えた。大きい。
遠目から見ているのに、大きさは80センチ強。ホバリングしてそこに停滞しているが、無数の超高速回転で羽を揺らし続ける。
本当にあれがトンボなのか。
そう思ってもおかしくないレベルで、害悪だったが、アキラたちはあれを何とかするしかない。今回はそういう依頼で、ギルド設立後二度目となるまともな依頼だった。
だから落としたくない。落としたくないんだけど……
「う、動けない」
「うるさすぎるな。これ以上近づけば、耳が破壊される」
「確かに、この距離では私たちの攻撃は届きませんね」
雷斬の言っていることはもっともだ。
アキラもフェルノも苦汁をなめるが、一番悲しいのは雷斬だった。何せ、刀の長さじゃどうにもならない。
それぐらい敵は離れている。大体10メートル? 流石に攻撃は届かない。
NightもNightで試行錯誤を繰り返してくれる。
「【ライフ・オブ・メイク】!」
Nightの手の中にナイフが生まれる。
お得意の武器だ。使い慣れているので、投げつけてみるがちゃんと届いた。だけど金属部分が少し振動してブレる。届いたは届いたが、当たることはなかった。
「くそっ。駄目か」
「駄目なんだ」
次行こう。Nightは【ライフ・オブ・メイク】を使った。
失ったHPをポーションで回復させながら、完全に流れ作業で検証していく。すると、ナイフではなく槍を作った。投げ槍って言うやつだ。
「フェルノ、これを投げてくれ」
「これを? 適当でいいんだよね?」
受け取った投げ槍はかなり重いモデルだったみたい。
一瞬持ってみたが、投げられる気はしない。けれどフェルノは、圧倒的なパワーで投げつけた。
単純にパワーが、筋力パラメータがとっても高いんだ。
「フルパワーで投げでもいいの?」
「いや、敵に感知されると面倒だ。これ以上音が大きくなれば、流石に鼓膜が保たない」
「そっかー。じゃあこんぐらいかなー!」
フェルノは槍を軽々投げた。普通じゃない。ここがゲームだからだと思いたいが、アキラには「現実でもできそうで怖い」と率直な感想を抱く。
ぶっちゃけると、もしかしたらこれで倒せるかもと淡い期待を抱いていた。
しかしそんな期待は泡に消えた。
パシュッ!
槍の先端が地面を貫く。
木製も棒部分がしなりを上げ、惜しいけど届かなかった。トンボ型のモンスター、メガビートは羽音を無数の音域に変えて直接的には攻撃してこないが、4人に精神的ダメージを与えた。幸い、誰1人としてダウンはしない。しかし、これ以上何をしても埒が明かないのは目に見えている。
苦渋の決断だが、Nightは真っ先に挙げた。
「撤退だ」
「撤退!」
反論するようにアキラは声を上げる。
しかし自分でもわかっていた。絶対に届かない。奥歯を噛んだアキラは、やがて溜息交じりに同意する。
「そうだね。ここは一回戻ろう」
「そうですね。この羽音の振動域から出れば、問題ないでしょうから」
雷斬は冷静に答える。
フェルノも否定することはなく賛同し、継ぎ接ぎの絆は迷わず撤退したんだ。
けれど1人、この状況を見て思うところがあった。
「このパーティーには足りないですね」と口にする。
ギュイーン!
バイクのエンジン音のような、鋭くて破裂的な音が耳をつんざく。
けたたましくてうるさい。
頭が壊れそうになって、身動きがまともに取れなくなる。
アキラたちはそんな相手の潜む森の中にいた。
「うっ、うるさい」
「だから耳栓を付けろと言ったんだ」
「だ、だって。流石にこれだけうるさいなんて……」
アキラはNightに叱咤された。
渡されていた耳栓を付けようにも、今更遅い。
すでに耳の奥は、鳴りやまない音のバイブレーションで苦しかった。
「アキラ大丈夫?」
「う、うん。でも、これは酷いね。こんなのが町中にいたら……」
「窓ガラスは吹き飛ぶだろうな」
衝撃波のビートが刻む。
目を凝らしてみてみると、森の中に赤い点が窺えた。大きい。
遠目から見ているのに、大きさは80センチ強。ホバリングしてそこに停滞しているが、無数の超高速回転で羽を揺らし続ける。
本当にあれがトンボなのか。
そう思ってもおかしくないレベルで、害悪だったが、アキラたちはあれを何とかするしかない。今回はそういう依頼で、ギルド設立後二度目となるまともな依頼だった。
だから落としたくない。落としたくないんだけど……
「う、動けない」
「うるさすぎるな。これ以上近づけば、耳が破壊される」
「確かに、この距離では私たちの攻撃は届きませんね」
雷斬の言っていることはもっともだ。
アキラもフェルノも苦汁をなめるが、一番悲しいのは雷斬だった。何せ、刀の長さじゃどうにもならない。
それぐらい敵は離れている。大体10メートル? 流石に攻撃は届かない。
NightもNightで試行錯誤を繰り返してくれる。
「【ライフ・オブ・メイク】!」
Nightの手の中にナイフが生まれる。
お得意の武器だ。使い慣れているので、投げつけてみるがちゃんと届いた。だけど金属部分が少し振動してブレる。届いたは届いたが、当たることはなかった。
「くそっ。駄目か」
「駄目なんだ」
次行こう。Nightは【ライフ・オブ・メイク】を使った。
失ったHPをポーションで回復させながら、完全に流れ作業で検証していく。すると、ナイフではなく槍を作った。投げ槍って言うやつだ。
「フェルノ、これを投げてくれ」
「これを? 適当でいいんだよね?」
受け取った投げ槍はかなり重いモデルだったみたい。
一瞬持ってみたが、投げられる気はしない。けれどフェルノは、圧倒的なパワーで投げつけた。
単純にパワーが、筋力パラメータがとっても高いんだ。
「フルパワーで投げでもいいの?」
「いや、敵に感知されると面倒だ。これ以上音が大きくなれば、流石に鼓膜が保たない」
「そっかー。じゃあこんぐらいかなー!」
フェルノは槍を軽々投げた。普通じゃない。ここがゲームだからだと思いたいが、アキラには「現実でもできそうで怖い」と率直な感想を抱く。
ぶっちゃけると、もしかしたらこれで倒せるかもと淡い期待を抱いていた。
しかしそんな期待は泡に消えた。
パシュッ!
槍の先端が地面を貫く。
木製も棒部分がしなりを上げ、惜しいけど届かなかった。トンボ型のモンスター、メガビートは羽音を無数の音域に変えて直接的には攻撃してこないが、4人に精神的ダメージを与えた。幸い、誰1人としてダウンはしない。しかし、これ以上何をしても埒が明かないのは目に見えている。
苦渋の決断だが、Nightは真っ先に挙げた。
「撤退だ」
「撤退!」
反論するようにアキラは声を上げる。
しかし自分でもわかっていた。絶対に届かない。奥歯を噛んだアキラは、やがて溜息交じりに同意する。
「そうだね。ここは一回戻ろう」
「そうですね。この羽音の振動域から出れば、問題ないでしょうから」
雷斬は冷静に答える。
フェルノも否定することはなく賛同し、継ぎ接ぎの絆は迷わず撤退したんだ。
けれど1人、この状況を見て思うところがあった。
「このパーティーには足りないですね」と口にする。
1
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
ゴブリンに棍棒で頭を殴られた蛇モンスターは前世の記憶を取り戻す。すぐ死ぬのも癪なので頑張ってたら何か大変な事になったっぽい
竹井ゴールド
ファンタジー
ゴブリンに攻撃された哀れな蛇モンスターのこのオレは、ダメージのショックで蛇生辰巳だった時の前世の記憶を取り戻す。
あれ、オレ、いつ死んだんだ?
別にトラックにひかれてないんだけど?
普通に眠っただけだよな?
ってか、モンスターに転生って?
それも蛇って。
オレ、前世で何にも悪い事してないでしょ。
そもそも高校生だったんだから。
断固やり直しを要求するっ!
モンスターに転生するにしても、せめて悪魔とか魔神といった人型にしてくれよな〜。
蛇って。
あ〜あ、テンションがダダ下がりなんだけど〜。
ってか、さっきからこのゴブリン、攻撃しやがって。
オレは何もしてないだろうが。
とりあえずおまえは倒すぞ。
ってな感じで、すぐに死ぬのも癪だから頑張ったら、どんどん大変な事になっていき・・・
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】
しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け
壊滅状態となった。
地球外からもたされたのは破壊のみならず、
ゾンビウイルスが蔓延した。
1人のおとぼけハク青年は、それでも
のんびり性格は変わらない、疲れようが
疲れまいがのほほん生活
いつか貴方の生きるバイブルになるかも
知れない貴重なサバイバル術!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる