上 下
79 / 575

◇79 砂の底の巣窟

しおりを挟む
  アキラと雷斬は砂漠の砂の中に飲み込まれてしまった。
 抗う術などもなく、流砂が発生し引きずり込まれてしまった。
 それからアキラたちが目覚めたのは、狭くて固められた砂の中だった。

「ううっ。ここは……」
「どこなのでしょうか。砂の中に飲み込まれたのは、記憶にあるのですが」
「ってことは、ここは砂の中?」

 砂漠の砂の中に飲み込まれるなんて、そんな体験したことがない。
 そもそもお目にかかることもない。
 けれどアキラは疑問に思った。砂の中に飲み込まれたはずなのに、自分たちが飲み込まれた流砂が存在していなかった。普通、飲み込んだ入り口が広がっていないとおかしい。

「如何やら閉じ込められてしまったみたいですね」
「そうでもないよ。ほら、向こう側に道が続いてる」

 アキラは指を差した。
 右手には道が続いている。けれどいかにも怪しい。絶対罠だった。

「明らかに罠でしょうね」
「多分。でも流砂があっても、どのみち上には上がれないんでしょ?」
「そうですね。流砂は飲み込む作用ですから。ここから地上に出るためには、その術を探さないといけません」

 だったら迷っている暇もない。
 アキラたちは餌としてここに連れ込まれた。だとしたら行動を起こさないと、ただやられるだけだった。そう思ったからこそ、少しでも慎重にでも行動は大胆にと気持ちを切り替える。

「行こう、雷斬。こんなところにいても、誰も助けてくれない」
「そうですね。天井も固いです。おや?」
「如何したの……って、メダルが埋まってる!」

 アキラは叫んだ。気が付いた場所の天井に、メダルが二枚埋まっていた。
 アキラと雷斬は手を伸ばして回収すると、表面には星が五つ描かれる。もしかしたら、皆んなこれを狙って……

「もしかしたら、皆さんこのメダルを狙ってここに落ちてきたのでしょうか?」
「だとしたら私たちは偶然だったね。こんなところにメダルが埋まっているなんて。しかも、まだ誰も入手してないよ?」
「と言うことは、皆さん流砂に飲まれた段階でやられてしまったのでしょうか」
「多分。そうだと思うよ」

 つまり私たちは運が少しだけよかったことになる。
 敵がどんなモンスターなのかはわからないれど、やってくる前に目が覚めたんだ。ホッと胸を撫で下ろすものの、まだ安心できない。早く行動に移そうと、アキラと雷斬はその場から移動した。


 砂漠の砂の中は、かなり涼しかった。
 炎天下、灼熱世界から解放された分体は整っているが、逆に寒い。
 砂漠は昼間は暑く、夜間は極寒の地と化す。それを砂の中にまで踏襲しているのだろうか? アキラはそんなことは一切考えず、何の気もなしに砂の中の道を進んだ。

「アキラさん、少し変ではありませんか?」
「何が変なの?」
「ここまで砂の道は一本です。左右は固い砂の壁で覆われていて、壊すこともかないませんね」
「そうだね。絶対おびき出されてる」
「やはりこの先に食事処があるのではないでしょうか?」
「うーん。もしそうなら倒せたら帰れるのかな」

 おそらくその線は極めて高い。なんて、Nightなら言うんだろうけど、私にはよくわからない。
 でもその可能性は高い気がした。何故かはわからないけれど、脳内でそう警告している。

「ではどのような相手だと思いますか?」
「うーん。私はアリジゴクかな」
「アリジゴクですか。確かにその線は濃厚ですね」
「そう思う! よかった。あてずっぽうだったから」
「そうなのですか?」
「うん。私流砂みたいな罠を張る生き物なんて他に知らないから」
「私もです。ですが、砂の中にまで引きずり込むのは随分と狡猾ですね。わざわざ偽の流砂を意識する範疇に置くことによって、本命を気付かれずに真下に展開するなどと言う戦法。恐れ入りました」

 仮にもモンスター。狡猾な性格は残っている。
 しかし雷斬はそんな相手でもリスペクトしている。確かに面白い作戦だけど、いざはまるときつい。Nightの作戦も全部怖いけど、自分たちがそれを味わうのは、もっと怖い。

「それはそうと雷斬。ちょっと気になっていることがあるんだけどね」
「如何なさいましたか?」
「さっきから道が迷路みたいに複雑になっているんだけど、これは如何してかな?」

 流砂に飲まれ、言われるがまま道を進むと迷路のように複雑めいた。
 今いるのは、分かれ道だった。目の前には全部で五本の道が広がっている。しかも道の大きさは全て違う。細いのから太いのまで、高いのから低いのまで幅広い。難しい問題だ。絶対一度でもミスったら終わりだよ。と脳内で警報が鳴る。

「どの道を進んでみる?」
「そうですね。こういう時は……」

 ごくりと喉を鳴らした。
 すると二人は揃って答える。

「「右」」

 同時だった。しかも全く同じ道を指さす。
 それは特になんと変哲もなく、それでいて安全と危険が五分な道だったが、何故か揃ってしまった。そこでもう恨みっこなし。アキラと雷斬はお互いに確認を取ると、迷わずその道を突き進んだのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...