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◇68 キングヤドカリに出会ってしまった1

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 洞窟の中は予想通りだった。
 予想通りと言われても、何がとはわからない。そこでご想像にお任せする地下ないが、とにかく歩きづらい上に、潮の匂いが強かった。
 しかしそのことに、誰よりも早く気づいている少女がいた。Nightだ。

「なるほどな。ここは満潮時には、沈んでいるのか」
「満潮だと沈むの? ここまで海水が上がって来るの?」
「まさかー」
「いいやそのまさかだ。周りをよく見てみろ、何か気が付くものはないか」

 そう言われても、暗い上に地面がぬるぬるしていてわからない。
 嫌このぬるぬるが原因なのかも。
 アキラとフェルノは揃って、周囲を見回すと、岩場の辺りに何か緑色のものがあった。

「これってわかめ?」
「いいや昆布でしょ」
「正解は昆布だ。このぬめりの影響は、この昆布から出たもの。しかもこんなに大量だ」

 気持ち悪かった。
 そこは昆布の群生地になっており、冷たい海じゃないのに、ここまであると壮観だ。
 むしろ鳥肌ものだった。

「き、キモい! 気持ち悪いよ!」
「食べ物に向かってそんなこと言うな」
「あはは。昆布は出汁取りだけどね」

 珍しく、フェルノが震えあがった。
 それにしてもこれだけの量、もったいない。
 しかも痩せ細っていて、食べられない。

「もしかして、フェルノは昆布駄目なのか?」
「そういうことじゃないけど、流石にこれはね。正直酸味のあるものは苦手だけど」
「それって、もずくじゃないの? ほら、もずくを酢でしめたやつ」
「あー、あれ駄目かも」

 フェルノは口を押えた。
 そんな中、三人は足元に注意しつつ、メダル探しに戻った。
 ここに来た目的を忘れるところだった。今のところ一枚しかないので、ここで何枚かは回収したい。って、こんなところにあるのかな?

「こんなところに、メダルってあるのかなー? なんて」
「おそらくあるだろう」
「どうしてそう言えるの?」
「メダルがあるエリアは限定されている。それらを加味すればいい。メダルが出るエリアにメダルが出ないことない上に、ちょうどここはエリア的にはドンピシャだ」
「ってことは、メダルが出るかもしれないんだね」
「そう言うことになるな」
「よーし、頑張るぞぉー!」

 フェルノが何故か、元気になった。
 こぶしを突き上げると、声が反響している。
 洞窟内にフェルノの声が響いたかと思うと、アキラはふと変なものを見てしまった。

「あれ?」
「如何した、アキラ」
「いや、何だろ。今、あの岩が動いたような」
「岩が動く?」

 Nightは首を傾げた。
 しかし警戒は怠らずに、腕組をしたままではあるが、動じなかった。
 するとアキラは、フェルノの声に反応して動いたように見えた岩に近づくと、コンコンと叩いてみた。

「おかしいなー。さっき、動いたように見えたのに」
「気のせいじゃないのか?」
「そんなことないよ! でも、この岩だけ、色んな装飾が……おかしいなー」

 アキラは首を傾げる。
 これじゃあ皆んな首を傾げてしまうと思い、フェルノだけは首を傾げない。空気を逆に読んだ。
 するとアキラも諦めてしまった。それから振り返りざまにだった。嫌な予感がした。

「な、なに? この感じ」
「アキラ、走って!」
「えっ!?」

 フェルノが叫んだ。
 すると、アキラは反射的に走り出していた。
 背後から、水がポンプの勢いで発射された。

「うわぁ!」
「ほら、危ない」
「そういう問題じゃない。これはモンスターだ」

 アキラは急いで戻ってきた。
 すると、そこにあったはずの大きな装飾付きの岩が動き出していた。
 岩に厚みがではなく、岩が上下に動いていた。それから目のようなものと、ハサミが出てきた。確かにモンスターだった。さっきの違和感はこれだった。やっぱり、あの岩は動いていたんだ。アキラは振動で反応したのかなと、勝手な推測を立てたんだ。
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