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◇59 メタルの爪は厄介2

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 アキラたちは、《ファスト》の町から数キロ先にある森に来ていた。
 この森は緑が生い茂っていて、それでいて太陽の陽射しが適度い広がっている。
 そう、何のこともない平和そうな森だった。

「うわぁ、めちゃくちゃ綺麗な森だねー」
「森に対してそんな安い感想だな」
「だってさー、海とか言っても、綺麗な海だとか混んでる海だねとか波が高い海だねとかしか、感想って出ないでしょ」
「それはそうだが。まあ私も感想はないんだが」
「感想ないんかい」
「感想は特にない。しかし妙だ。ここまで人がいないことがあるのか」

 何でもここはネットでも話題になっている、有数な狩場らしい。
 しかし今日はどういうわけか、人が少ない。
 しかも変なことに、不自然なくらい静かだった。まるで、さっきまで騒がしかった光景が一瞬のうちに、なくなってみたいに。なんちゃって。

「もしかして、そのメタルクロー・ベアーのうわさが広がっちゃったんじゃないのかな?」
「可能性は確かにある。しかし、あの依頼書は、当分張り出されていたんだがな。私の勘違いだったのか?」
「うーん、そんなことがピンポイントで起こるのかな?」
「私はあんまりないと思うけど、だってNightだよ? そんなことが起こるかな」
「私を信用しすぎじゃないか」

 まるで自分がミスしたと言い張る、Night。
 しかし誰も責めたりはしなかった。
 何故なら、そんなことをしなくても、探索してしまえば一瞬で済む話だったからだ。

「でも、とりあえず、行ってみようよ」
「そうだねー。まずはとりあえず、行ってみないと始まらないよー」
「仕方ないか。しかし、警戒はしないとな」
「「はーい!」」
「子供か」

 Nightのいつものツッコみが冴え渡った。
 そんな中、三人の足取りは、森の中の整備された道を進む。
 余分な雑草などはなく、かなり綺麗な道筋だったが、それがどうにも怪しいのは、流石のアキラでも気になった。

「ねえ、なんでこの辺、妙に綺麗なのかな?」
「そう言われてもわからないよー」
「おそらくはモンスターの影響だろうな」
「「モンスター?」」
「そうだ。この辺りのモンスターの生態具合は知らないが、おそらくその線は極めて高い」
「じゃあさ、この傷はなにかなー?」

 そう言って、フェルノは急に木の幹を指さした。
 そこには爪痕みたいな、白い傷跡があった。
 これは完全に、偽物ではない。本物だ。

「これって、木の模様なのかな?」
「いや、どう見ても傷跡だろ。しかもこの痕は、おそらくはクマのものだろうな」
「「クマ?」」

 と言うことは、明らかにメタルクロー。
 そう思ったのも束の間のことだった。
 急に叫び声が上がった。

「や、やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「た、助けてくれ。頼むからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 男の叫び声が上がった。
 しかも二人はいる。
 それを聞いて、何かあったとすぐさま把握したアキラたちは、誰よりも先にアキラが声を上げた。

「行ってみようよ。きっと危ない状況かもしれないよ」
「行くのか? もし相手が、こちらの意表をついて、誘い出すために、わざと声を上げているとしたら如何する」
「そんなのはその時だよ。それに私たちは負けないでしょ」
「どうしてそう言い切れるんだ」
「そんなのー、Nightが常に毒ナイフを持っているからだよー」
「うっ……」

 スキルで作った毒ナイフだ。
 仮に町中で使っても、武器判定にならない。おまけにコーティングがされていて、並大抵では錆びたりしない。
 そんなものを持ち歩いているのだ。かなり警戒している。

「だから行ってみよ。ねっ」
「行かないとは言っていないだろ」

 そう言うと、Nightはすたすたと助走をつけていた。
 何だか扱いに困りそうとか思ったけど、二人は思わない。だって可愛いから。
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