上 下
23 / 575

◇23 赤と青の瞳

しおりを挟む
 赤と青の瞳。
 銀の混じった不思議な色の髪。
 そこにいた少女は、いろんな要素を散りばめて詰め込んだような、不思議な印象を漂わせるとともに、一見して近寄りがたかった。

 それはその奇怪な瞳のせい。
 青いコンタクトが外れた赤い瞳をした右目。

 瞳を抑えながら、その顔は訝しい表情を浮かべ、忌み嫌う様子。
 だったのだが、今は違う。何故かポカンとした顔になっており、なよなよしていた。

「その言葉、言い方。お前はまさか……」
「ん?」

 肝心の明輝はわかっていなかった。
 しかしこの鈍感な感じが、より一層少女の想像を確信に変えた。そう、彼女は、

「見つかるなんてな」
「見つかる? うーん、誰かと待ち合わせしてたっけ? えーっと、えっとー。もしかして、Night?」
「そうだ。ここではその名前よりも、夜野蒼伊やのあおいの方がしっくりくるがな」

 明輝は目を丸くして、一瞬放心状態になった。
 意識は宇宙の彼方を流れ、無重力の空間に投げ出されたような感覚だった。
 そのまま時が数秒経ち、ようやく状況を理解すると、瞬きとともに、意識を振り切った。

「ほ、本当にNight?」
「だからその名前は止めろ。まさか、こんな反応をする奴が本当にいるなんてな。コンタクトをしてまで、コンプレックスを隠そうとする私が馬鹿らしく思える」
「コンプレックス? どれが」
「この目に決まっているだろ。デリカシーがないのか、単に鈍感なだけか、お前はどっちなんだ」
「うーん。どっちだろ?」
「お前なー」

 蒼伊は呆れ顔になって、顔を覆う。
 しかしその表情の口角は、少し笑みが窺えて、嬉しそうに見える。
 なにをどうではない。彼女にとって、この感覚こそが、何より未知の風だったからだろう。

「それより、お前の名前は?」
「はい?」
「名前だ。私は名乗ったんだ。お前も名乗るのが筋だろう」

 そう促され、そう言えばと思い、名乗っていないことを思い出す。
 明輝はすんなりと意識を切り替えて、名乗った。

「私は明輝。立花明輝たちばなあきらだよ。よろしくね、蒼伊」
「な、馴れ馴れしいな。まあいい。そのぐらいの方が、タメ口でも構わないな。ああ、明輝」

 二人は握手をするではなく、恥ずかしいので、ドライブでアドレスを交換した。
 それからこれで目的は達成した。
 つまり、

「じゃあパーティー、組んでくれるんよね」
「仕方ないか。ふん」
「な、なにそれ!」

 蒼伊は澄ました顔になると、どこかに行ってしまった。
 その先にはリムジンが停まっていて、さっきまでは停まっていなかったことから、いつの間に来たんだろう。
 しかし蒼伊は左手を上げて、手を振ると、明輝に対して、

「楽しみにしているぞ」
「うん。私もね」
「ふん」

 そう言い残して、リムジンに乗ってしまった。
 それは肯定か否定かどちらでもいいが、明輝はやり切った感に満たされていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...