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◇13 VSグレーウルフ

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 二人の間合いは全くと言っていいほど同じ。

 剣を捨て、構えたアキラと巧みな牙と爪の兼ね合いで、戦おうとするグレーウルフ。
 いざ剣を持てば、リーチの差は広がる。
 けれど、グレーウルフは牙を剥き出しにして、向かってきた。

 ウォフ!——

 いざ襲い掛かるグレーウルフ。
 しかし、その牙が通ることはない。腕だけは。
 拳を振るって、軽く応戦。

 しかし、グレーウルフの爪が一度、太腿を引っ掻くと、

「痛い!」

 早速と言うか、アキラはダメージを受けた。
 普通に痛い。でも、限りなく耐えられないわけじゃない。
 多少だけど、アキラは苦い顔をする。
 少しHPが削れた。

「もう。やってくれたね」

 アキラはちょっと怒った。
 耐えられなくはないけど、痛いは痛いんだ。
 そこでアキラから今度は打って出た。

「この距離なら、躱せないね」

 一瞬で間合いを詰めることは流石にできない。
 そこで受けたときのノックバックを利用して、反動をつけた。
 原理は本人にもわかっていないけど、烈火と同じで、ここは直感を信じて、頭よりも先に体が動いていた。

 反動を生み出したことで、腰が自然と落ちていて、その結果最初の踏み込みが早かった的な感じのはずだ。きっとそうに違いない。
 アキラの頭ではそう処理をして、自然とフックを食らわせていた。

 ワフッ!——

 しかしここは野生の勘的なやつだ。
 自然と体を丸めて、最小限で躱す。
 するとHPは微かに削れたものの、元の防御が低くて、結構なダメージが入った。

「うわぁ。あれ、耐えるんだ」

 普通に驚いた。
 目を丸めて「結構ちゃんとやったのに」と項垂れる。
 だけどそうしている合間にも、グレーウルフの牙が襲ってきた。
 脆いとわかった、腕以外を狙ってくるので、ここは剣を使う。
 投げていた剣を拾い、構えると、真下にやって来たグレーウルフを突き刺した。

「ごめんね!」

 ちょっと可哀そう。
 だけど流石に弱点が見えたら、足元狙って襲ってくるよね。
 あくまで自然な流れでそう察していたからこそ、体が先に動いていた。

「ま、まさか倒してないよね?」

 そのまさかだった。
 剣で突き刺すと、ぴくりとも動かなくなって、そのまま光になって消滅してしまった。
 これにはアキラも動揺する。あたふたが止まらない。
 そう、パニックだった。

「えええええええええええ! ちょっと待ってよ。私、まだそんなに攻撃してないよ! えっ!? 何このゲームって、急所とかあるの!」

 そう、このゲームには急所があった。

 それもそのはず、だった。
 例えば、頭をやられたり、心臓を貫かれれば、一発アウト。
 溺れても焼けても、落下しても死亡。
 結構シビアと言うか、「それやったら、死ぬよね?」と当たり前を追求していた。だからこそのリアリティが混ざっていて、現実味があるから人気なんだけどね。

「で、でもさ。勝ったんだよね、私。あ、あはははは……はー。喜べない。喜べないんだけど」

 アキラはがっくしと崩れた。
 まさかこんなことになるなんて。流石に罪悪感メーターがかなり上昇する。
 とはいえ、まだこれがゲームだからよかった。
 
 ほんと、人間って、色々な生き物のおかげで生きられてますって言うのが、よく伝わる道徳だよね。

「って、変に考えてる。あれ?」

 ふと見れば、またレベルアップしていた。
 今度はレベル6。だけどスキルも落ちていた。

『新しいスキルを略奪しました。グレーウルフ:【灰爪】』

「ううっ。なんだか、悪い気がしてならない」

 軽く身震いを起こした。
 だけどやることはやらないといけない。その一心で、天然炭木を採取すると、インベントリの中に突っ込んだ。
 そしてアキラはホッと一息ついてから、もう割り切っちゃうことにして、切り替えた。
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