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◇9 VSラクーン

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 そろそろ町が見えてくるはずだ。
 早く帰ってログアウトしたい。

 一応ここでも、ログアウトはできるが、結構危ない。
 やっぱり町の方が、安全だ。
 別にここでログアウトしても、次のログインが面倒になる。

「うーん。如何しようかなー」

 腕組をして考えていた。
 森の中は明るくて、変な気配もない。
 そのおかげか、あまり警戒もしていない。

「それにしてもいきなりモンスターに三体も。こんなことって、ある?」

 まあなんにせよ。経験がたくさん入った。
 そのおかげで、一気にレベル3。
 しかも、スキルも二つ手に入った。感じ的にも、かなりの好スタートな気がして、とっても楽しかった。

「うーん。でもあのクマは強そうだったし、レベルいくつかなー」

 正直そんな余裕はない。
 だけどスライムはレベル1で、甲冑兜はレベル2だった。
 あの威圧感のある圧倒的迫力。敵意剥き出しの行動。多分、レベル15ぐらいかも。
 逃げて正解と、心から胸を撫で下ろす。
 きっとこれが安堵ってやつだ。

「さてと、もう流石に出ないでよね」

 そう願ったのもほんの一瞬の出来事。
 束の間のことで、アキラの目の前にモンスターの姿はないが、ガサゴソと、草木が揺れる。

 アキラは剣を構えるも、姿はない。
 木の上を移動しているのか、上の方に視野を移動させた。

「何がいるのかな」

 小さな声で口にする。
 すると、目を凝らしてみた。そこにいたのはムササビみたいなアライグマだった。

「あ、アライグマ? だけど、色がオレンジ……」

 不思議な色合いだ。
 だけどそんなこと言ってられない。
 いつ敵対させるかわからないんだ。

 だけど妙なこともある。
 襲ってこない上に、こんなにもおとなしいなんて。
 確かアライグマって、気性が荒いんだよね。こんなに何もしてこないなんて、やっぱり手を出さないからかな?
 でもレベルは向こうの方がちょっとだけ上。なんと、レベル5だった。

「まあいいや。戦いたくないもんね」

 ここまで連戦。
 さっぱりってぐらい、疲れてないけど、ここはもう素直に帰りたい。

 そう思って歩き出した。
 するとクマじゃないけど、アライグマは急にアキラに敵対行為を示す。
 それに驚いたアキラは、一歩身を退いた。

「な、なんで!」

 さっぱりわからない。
 だけどアライグマのモンスター。もとい、オレンジラクーンは、アキラを睨んだ。

「も、もしかして縄張りに入っちゃったの!」

 こんな突然のこと。そうとしか考えられない。
 だけどそれだけに止まらず、オレンジラクーンは、アキラに向かって飛びかかった。
 その白い牙は黄ばんでいて、剥き出しにされている。
 そうなったら、仕方ない。

「もうやるしかないよね。ごめんね!」

 剣を振りかざした。
 しかし虚空を切る。オレンジラクーンは、お腹を広げて、滑空して躱したんだ。

「そんな! 本当にムササビだよ!」

 キシャァ!

 オレンジラクーンは剣を躱して、後ろに回る。
 配合種のこのモンスター。まるで恐れを知らない。
 それどころか、自分の向きを最大限に利用して、獲物を翻弄する。

「も、もう。こうなったら、また同じ方法しか!」

 そう思って、スライムの【半液状化】を使おうとした。
 しかし発動しない。
 言わばインターバルだった。

「つ、使えないの!」

 キシャァ!

 満足に対処ができなかった。
 そのせいで、身動きも取れない。
 オレンジラクーンの鋭い爪で引っかかれ、少しダメージを受けた。

「いったぁ!」

 痛い。普通に痛い。
 こんなにリアリティが追及されているなんて、そんなにの食らいたくないよ。
 そう思った瞬間、アキラはさっき奪ったスキルを使っていた。

「な、なにこれ! 腕が変になった」

 カキーン!

 オレンジラクーンの通らない。
 むしろ弾かれたみたいで、目を丸くする。
 見たところ、腕が緑色の甲冑に覆われていた。そんな甲殻に包まれていたんだ。
 それを見て閃いた。
 これが例のスキルだ。

「これが、甲冑兜の【甲蟲】? 結構便利そう」

 アキラは気に入っていた。
 キモいとかは二の次。何せ、自分の腕から昆虫の甲殻が身を守る、籠手と言うか、甲冑だったからだ。

「まあいいや。これで行ってみよう!」

 キシィ!

 常に楽しんでいた。
 使えないものはない。
 発想と、何となく出突き進めるから、このスキルはアキラにあったんだ。
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