24 / 32
意外に出るのは簡単?
しおりを挟む
真心とグレイスは十字路の中に居た。
まさかこんなことになるなんて。
グレイスも想定外だったが、なにも問題は無い。
「どうするの、グレイスちゃん!」
(どうするもなにも、私には問題にもならない)
「問題にもならないって。どうする気?」
真心は訊ねると、グレイスは一つ一つ説明する。
とりあえず、マヤカシのテリトリーから、いち早く脱出することが、最優先事項だった。
「どうしたらいいんだろう」
(落ち着け。ここに辻神はいない)
「辻神がいなくても、マヤカシはいるんでしょ?」
(その可能性は高いな。その前に、辻からは出るぞ。こんな所にいても、よくないからな)
真心の溜まりに溜まった不安を消し去るように、グレイスは常に頼もしい。
冷静に物事を見極めると、真心に指示を出す。
「どうしたらいいの?」
(いいか、辻道から出るには、辻から出ればいい)
「えっと、十字路の外に出るってこと?」
(そうだ。簡単だろ?)
「簡単だけど……それだけ?」
真心は拍子抜けしてしまった。
首を傾げると、とりあえず言われた通りにはしてみる。
クルンと振り返り、十字路から出ようとした。
「それじゃあ十字路から離れるよ」
(警戒はしろよ。何処から襲って来るか分からないからな)
「そんなこと言わないでよ」
クルンと振り返り、早速十字路から離れる。
するとグレイスはある違和感を覚えた。
(ちょっと待て、真心)
「今度はなに?」
(なにかおかしいぞ。よく周りを見ろ)
グレイスが感じた違和感。
その正体は目の前の景色にある。
この十字路は当然壁に囲まれている。けれど反対側は道路になっていて、車は一台も走っていない。
「おかしいって、なにが?」
(ちゃんと見てみろ。お前の目なら判る筈だ)
「判る筈って……えっと、えっと、あれ?」
真心も違和感の正体に気が付いた。
もしもそれが本当なら、この道はかなり危ない、
辻神はそれを教えてくれたのだろうか? グレイスと共に口を揃える。
「(縁石が無い)」
真心とグレイスは気が付いた。
道路に縁石が無いのだ。
当然、普通の道なら縁石の一つや二つ置いてある。
そうでなければ、非常に危ないからだ。
交通ルールを守るためにも、設置は義務付けられている筈。
にもかかわらず、さっきまであった筈の縁石が、全て消えていた。
「もしかして、トウメイリザードの仕業?」
(まず間違いなくな)
「えっと、なんの意味があるの?」
確かに危ないには危ない。
もしかすると、縁石が無いせいで、事故に繋がるかもしれない。
けれど、トウメイリザードには何の得も無い。
完全に意味の無い行動で、真心は顎に指を当てて考える。
「縁石が無くて困るのは、私達?」
(そうだ。陰の世界、魔妖導に通じる、マヤカシ達は、人間を困らせる。もし縁石が見えない状態で、足でも躓いてみろ。事故に発展しかねない)
「ぐ、偶然じゃなくて?」
(偶然でも起これば必然になる。人間、予測をいくらしても、それに対する回答は、常に札として持ってはいないからな)
グレイスの言葉は的を射ている。
いくら備えをしていても、分かり切っていることでも、いざ起きれば対応できない。
そんな脆さを、マヤカシは知っていた。
(もしこのまま放置すれば、誰かが引っかかりかねない)
「それって、マズくない?」
(そうだ。だから、早急に片づけるぞ)
グレイスはとてもカッコいい。
真心は惚れ惚れしてしまう中、十字路を抜ける。
すると全身を不思議な感覚が駆け抜けた。
ゾワッとしてしまい、身震いが起こる。
「うわぁ、なんだか変な感じがしたけど」
(テリトリーから脱出できた証拠だな)
「それじゃあもう大丈夫ってこと? よかった」
安堵する真心。
けれどそんな真心を嘲笑うかのように、背後から視線を感じる。
ゾクリとした感触が一瞬、髪の毛を撫でたような気がした。
「ひやっ!? い、今、なにか触れた?」
(なにも触れていないぞ)
「ってことは私の気のせい?」
グレイスが気が付かないのならば、真心の勘違いに違いない。
そうだ、きっとそうだと、思い込ませる。
しかしグレイスは想像する。もしも、自分より“感覚が優れている”のなら。
「それじゃあ改めてトウメイリザードを捜しに行こっか」
(いや、少し待て、真心)
「ん? どうしたの、グレイスちゃん」
グレイスは、真心の感覚を頼ることにした。
背筋を駆けた、冷たい旋律。
ゾクリとさせてくれるには充分で、何処となく髪を撫でたような気がした。
それを踏まえた瞬間、グレイスは叫んだ。
(真心、今すぐ走れ!)
「えっ?」
真心はポカンとしてしまった。
けれどグレイスの言葉は強く荒い、鋭いナイフの様。
不思議になった真心だったが、その頬を、鋭い爪が引っ掻いた。
まさかこんなことになるなんて。
グレイスも想定外だったが、なにも問題は無い。
「どうするの、グレイスちゃん!」
(どうするもなにも、私には問題にもならない)
「問題にもならないって。どうする気?」
真心は訊ねると、グレイスは一つ一つ説明する。
とりあえず、マヤカシのテリトリーから、いち早く脱出することが、最優先事項だった。
「どうしたらいいんだろう」
(落ち着け。ここに辻神はいない)
「辻神がいなくても、マヤカシはいるんでしょ?」
(その可能性は高いな。その前に、辻からは出るぞ。こんな所にいても、よくないからな)
真心の溜まりに溜まった不安を消し去るように、グレイスは常に頼もしい。
冷静に物事を見極めると、真心に指示を出す。
「どうしたらいいの?」
(いいか、辻道から出るには、辻から出ればいい)
「えっと、十字路の外に出るってこと?」
(そうだ。簡単だろ?)
「簡単だけど……それだけ?」
真心は拍子抜けしてしまった。
首を傾げると、とりあえず言われた通りにはしてみる。
クルンと振り返り、十字路から出ようとした。
「それじゃあ十字路から離れるよ」
(警戒はしろよ。何処から襲って来るか分からないからな)
「そんなこと言わないでよ」
クルンと振り返り、早速十字路から離れる。
するとグレイスはある違和感を覚えた。
(ちょっと待て、真心)
「今度はなに?」
(なにかおかしいぞ。よく周りを見ろ)
グレイスが感じた違和感。
その正体は目の前の景色にある。
この十字路は当然壁に囲まれている。けれど反対側は道路になっていて、車は一台も走っていない。
「おかしいって、なにが?」
(ちゃんと見てみろ。お前の目なら判る筈だ)
「判る筈って……えっと、えっと、あれ?」
真心も違和感の正体に気が付いた。
もしもそれが本当なら、この道はかなり危ない、
辻神はそれを教えてくれたのだろうか? グレイスと共に口を揃える。
「(縁石が無い)」
真心とグレイスは気が付いた。
道路に縁石が無いのだ。
当然、普通の道なら縁石の一つや二つ置いてある。
そうでなければ、非常に危ないからだ。
交通ルールを守るためにも、設置は義務付けられている筈。
にもかかわらず、さっきまであった筈の縁石が、全て消えていた。
「もしかして、トウメイリザードの仕業?」
(まず間違いなくな)
「えっと、なんの意味があるの?」
確かに危ないには危ない。
もしかすると、縁石が無いせいで、事故に繋がるかもしれない。
けれど、トウメイリザードには何の得も無い。
完全に意味の無い行動で、真心は顎に指を当てて考える。
「縁石が無くて困るのは、私達?」
(そうだ。陰の世界、魔妖導に通じる、マヤカシ達は、人間を困らせる。もし縁石が見えない状態で、足でも躓いてみろ。事故に発展しかねない)
「ぐ、偶然じゃなくて?」
(偶然でも起これば必然になる。人間、予測をいくらしても、それに対する回答は、常に札として持ってはいないからな)
グレイスの言葉は的を射ている。
いくら備えをしていても、分かり切っていることでも、いざ起きれば対応できない。
そんな脆さを、マヤカシは知っていた。
(もしこのまま放置すれば、誰かが引っかかりかねない)
「それって、マズくない?」
(そうだ。だから、早急に片づけるぞ)
グレイスはとてもカッコいい。
真心は惚れ惚れしてしまう中、十字路を抜ける。
すると全身を不思議な感覚が駆け抜けた。
ゾワッとしてしまい、身震いが起こる。
「うわぁ、なんだか変な感じがしたけど」
(テリトリーから脱出できた証拠だな)
「それじゃあもう大丈夫ってこと? よかった」
安堵する真心。
けれどそんな真心を嘲笑うかのように、背後から視線を感じる。
ゾクリとした感触が一瞬、髪の毛を撫でたような気がした。
「ひやっ!? い、今、なにか触れた?」
(なにも触れていないぞ)
「ってことは私の気のせい?」
グレイスが気が付かないのならば、真心の勘違いに違いない。
そうだ、きっとそうだと、思い込ませる。
しかしグレイスは想像する。もしも、自分より“感覚が優れている”のなら。
「それじゃあ改めてトウメイリザードを捜しに行こっか」
(いや、少し待て、真心)
「ん? どうしたの、グレイスちゃん」
グレイスは、真心の感覚を頼ることにした。
背筋を駆けた、冷たい旋律。
ゾクリとさせてくれるには充分で、何処となく髪を撫でたような気がした。
それを踏まえた瞬間、グレイスは叫んだ。
(真心、今すぐ走れ!)
「えっ?」
真心はポカンとしてしまった。
けれどグレイスの言葉は強く荒い、鋭いナイフの様。
不思議になった真心だったが、その頬を、鋭い爪が引っ掻いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる