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サイドM④

不穏①

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 昨日から今日、大変忙しない1日を過ごしていた気がする。

「昨日、警察が来てたようだけどなにがあったの?」

 私の顔を優しそうな眼差しで覗く康介。そして心配そうに肩を抱いた。私は夫の瞳を逸らしながら口を開いた。

「わからない、全然わからないの。」

 私は本当にわからなかった。なぜあの時、黒いスーツの男たちが勝手に部屋に入ってきて、私を質問攻めにしたあげく、まるで事件の犯人のように扱われた酷い理由が全く理解できなかった。

「なぜ…?」

 私は逆に康介に聞き返した。夫はその質問に戸惑ったように私の肩をさらに硬く抱きしめた。

「みっちゃんはなにも悪くないよ。あいつらは、なんでうちに来たんだろうね。」

 康介は、私の味方だ。全て私の言葉に従わざるを得ない。そう、康介、あなたがいてくれたから、私はまだ生きている。

「康介さん、愛してる」

 その言葉に康介は、私の全身を抱きしめて耳元で囁いた。

「ぼくも、愛してるよ」

 このくだらない会話をすぐ終わらせる戦法にまんまとはまった夫は、私の肩に顔を埋めて嗚咽していた。この人は私のことを何も知らない。いや、知ろうともしない。知らずに私の全てを引き受けようとしている、馬鹿で、お人好しで、だけど浮気者。

「泣かないで、康介さん。」

 私は夫の肩を抱き、それから二人はお互いの存在を確かめ合うように、強く抱き締めあった。

 その晩、私は夫に抱かれた。ひどく優しく、長い夜だった。夫には何度も抱かれてきたはずなのに、私は今まで一度も経験したことのないほどの、優しく繊細な愛撫に何度も高められ、そしていかされた。悪くなかった。私は、康介さんの子供が欲しい。白色の天井を見上げ、夫のいびきを横目に、そう思った。康介さんの子供なら愛せる気がする。愛することを知らない私も、あなたの子供なら、きっと3人で幸せに暮らせる、そう思った。

 
 私は微睡の中、夢の世界へ落ちて行った。

「お前は、敵の海賊の一味か?」

 私の視界は彫りの深い髭の男と、太陽の照らす青色の海。周りには何人もの荒くれ者という風情の男らが私を囲っている。

「お前にはこれからこの船の風向きを調べる役割をしてもらうことにしよう」 

「お前はなかなかいいものを持っていそうだ」

 その声の主の男は、おもむろに私のシャツのボタンに手をかけた。ひとつ、ふたつ、みっつ、ぼたんが徐々に外されて行く。
  
「や、やめて…」

 下衆に私の拒む声は届かない。口元をゆるませた男は無言のままボタンを下まで外して行く。何、何?これから何をされると言うの?私はぎゅうとまぶたを閉じてその恐怖に身を硬らせた。男はにちゃりと笑いながら、私のシャツの前をガバッと広げる。下着が丸見えになった。私は、思わず胸元を腕で隠して小さな抵抗の声を上げた。

「や、やめて。どうしてこんなことするの」

 男はその声にも応じず、ただ己の欲望のおもむくままに私のブラジャーの上から胸をゆっくりと愛撫し始めた。気持ちの悪い下衆どもめ。でも、こんなに大勢の男たちに囲まれていては、抵抗することも出来ない。ブラジャーが外され、乳首が風に晒された。

「ここで風感じて、俺たちに報告するのがお前の役目だ」

 下衆は私の乳首を摘んでこう言った。私は男たちの思うがままに裸の上半身を愛撫された。「あ、あっ、あ」無意識に声が漏れてしまう。ああ、このまま犯されてしまうのだろうか。また、あの日のように。。。

 プツンと何かが弾けた。その刹那、私は私ではなくなった。

「てめえら、全員船底に沈めてやっから覚悟しとけコラ」

 私の豹変ぶりに、男たちは一瞬たじろいだが、女一人が粋がったところで大勢に影響があるわけではないとみると、からかうように、

「へえー、このお嬢ちゃんおっぱい丸出してなんかいってるぜええ」

 と軽口をたたく。私はその煽ってきた輩の腹に、無造作にストレートパンチをくらわせた。ウグッという嗚咽、派手に溢れ出た胃液が船床を彩った。いい感じだ。私は自分の体のキレに気を良くし、
「全員殺す」と呟いた。

「やるじゃねえか、嬢ちゃん、おうお前ら!この女ちゃんと抑えとけよ!」
「俺はこういうイキの良い女の子嫌いじゃねえんだよ」
「可愛いじゃねえか、殺すには勿体ない」

 私はその下衆どものありがちな言葉に唾を吐きかけた。

「かかってこいやオラァ!!!」

(続く)
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