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駆け出し冒険者の章
26.未来の剣
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武器屋の店主に売り物にならないと評価されている、樽の中の様々な中古の剣。愛莉はその中から、先ほど未来が店主に選んで貰った長さの剣と同じくらいの長さの物を選んで取る。その光景を店主が訝しげな表情で見ていたが、愛莉は気にせずに選んだ剣を未来に渡す。
「未来、持った感じどう?」
「え?ああ、うん。長さはさっきのと同じくらいだね。重さはさっきのより少し重いかな?」
「さっきの剣より少しだけ剣身が太いからな。ってかよ、そんなの選んでどうするんだ?多分あと何振りかしたら折れるぜその剣」
店主はそう言うと、剣の真ん中くらいの場所を指差す。よく見ると、剣には無数に細かいヒビが入っていた。確かにこのまま使い続ければすぐに折れそうなのは素人目にも理解出来た。
「この剣っておいくらですか?」
しかし愛莉は店主の説明など聞こえていないかのように値段を訊ねる。店主は「はあっ……」っと溜め息をついた。更には、未来までもが心配そうな表情で愛莉を見つめている。
「愛莉……?」
「あ、うん。未来ちょっとこっち来て」
そう言って未来の手を引くと、店主から少し離れた所でヒソヒソと未来の耳元で何かを呟く愛莉。すると、未来の表情が驚きの表情へと変わる。
「出来るの!?」
「多分。材料はある訳だし」
そして店主の元へと戻る二人。戻るなり、未来が元気よく店主に告げる。
「おじさん、この剣買うね!いくら!?」
驚愕の表情を浮かべる店主と、リーシャとサフィー。先ほどの店主の説明を聞いても尚、この剣を買おうとする未来と愛莉は、とてもまともだとは思えなかった。
「あのな嬢ちゃん達……いや、何事も経験か。さっきも言ったが、その剣は売り物になんかならねえ剣だ。だから剣の代金はいらねぇが、剣を挿しとくベルトは大銅貨二枚だ」
「うん!じゃあそれで!」
「あ、わたしも半分出すね」
未来と愛莉からそれぞれ大銅貨を一枚ずつ貰い、未来の腰にベルトを装着する店主。細いだけではなく、引き締まった未来の腰を見て思わず感嘆の声を上げる。
「嬢ちゃん、ただ細いだけじゃなく引き締まったいい身体だな。冒険者ってのは本当なんだな」
「本当だよ!ほら、プレートあるし」
「Dランクかよ!?って事はワイルドウルフ倒したのか!?嬢ちゃん達だけで?」
そんな会話をしながら、最後にベルトの説明をする店主と、しっかりと聞く未来。
「このポケットに鞘ごと通して、こっちの金具とこの小さいベルトで固定するんだ」
「ここかな?えい!」
「それでいい。ふむ、見た目には剣士になったが………」
剣を装備し、一気に剣士っぽくなった未来。だが、装備している剣はすぐに折れてしまいそうな中古の剣である。
「いいか、絶対にその剣で大物を相手になんてするなよ?ってか折れたらすぐに逃げろ。まだ若いし美人なんだから、死に急ぐなよ」
「はいはーい!無理言ってごめんね」
そして武器屋を後にする四人。未来は武器を手に入れてご満悦の表情、愛莉も何故か嬉しそうな顔をしていたが、リーシャとサフィーは不安な表情を浮かべている。一体この二人は、何を企んでいるのだろうかと。
■■■
ようやく全ての買い物が終わり、街を出る四人の美少女達。愛莉が腕時計に目を落とすと、時計の針は午前十時を差していた。この時間なら、グリーグの森へ行っても召喚獣の捜索をする時間はたっぷりあるだろう。
しかしリーシャとサフィーが気になっているのは、何故未来と愛莉は店主にすらダメ出しされた中古の剣を買ったのかという事。そんな剣を買うぐらいなら、それこそ足りない分のお金を貸してあげたのにとの思いでいっぱいだ。
「ねえ、そろそろ説明してくれない?何でわざわざそんな剣を買ったの?店のおじさんもすぐ折れるって言ってたじゃない」
街道を少し進み、人が完全に居なくなった所でサフィーが訊ねる。すると未来と愛莉は顔を見合わせ、こくりと頷いた。
「未来、剣貸して」
「はい。お願いします愛莉先生!」
クスクスと笑い合う未来と愛莉。リーシャとサフィーが怪訝そうな顔をする中、愛莉は未来から預かった剣を鞘から抜いて地面に置いた。そして自身も膝を折り、その場にしゃがみ込むと剣に手を乗せる。きっと今、愛莉の正面に移動すれば愛莉のパンツ見えるよねと、未来がかなりどうでもいい事を考えている矢先、愛莉の手が輝き出した。
「まさか………」
「そ、そういう事!?」
ようやく愛莉のしようとしている事がリーシャとサフィーにも伝わる。そう、このヒビだらけの今にも折れそうな剣を、錬金術で全く新しい別の剣に作り変えようとしているのだ。
愛莉は言った、材料は有ると。材料さえあればそこから何かを作り出すのが錬金術。その材料が、愛莉の手の中にある。
剣身は鋼鉄、柄の部分は加工しやすい銅、そして柄には握りやすいように革が打ち付けられている。
合成のスキルがあれば、複数の素材から一つの物を作る事が出来る。あとは錬金術と合成のレベル次第だが、何故か愛莉には自信があった。
(イメージするのは、新しくて切れ味の鋭い未来の剣。わたしが未来だけの為に作る、未来専用の剣)
剣なら先ほど武器屋でたくさん見て来た。ゲームの知識だってある。だから、オリジナルの剣を想像する事だって出来る。
愛莉の手の中で、形を変える中古の剣。その光景を、未来、リーシャ、サフィーは固唾を呑んで見守った。やがてーーーーー
ーー合成のレベルが上がりました。
ーー想像力上昇のレベルが上がりました。
ーー想像力上昇のレベルが上がりました。
ーー具現化上昇のレベルが上がりました。
ーー具現化上昇のレベルが上がりました。
愛莉の頭の中に響くいつもの声。そして愛莉が手を乗せている中古の剣は、剣身が輝く真新しい剣へと生まれ変わっていた。その剣を持ち上げ、未来に手渡す。
「はい未来」
「うわぁ!チョー格好いい剣じゃん!これって愛莉のオリジナル!?」
「うん。魔王を倒しに行く勇者が持ってそうな剣をイメージしてみたよ」
もちろん材質は一般的な鋼鉄製の剣だが、そのフォルムは見る者を引きつける見事な出来だった。もちろん未来のテンションも上がり、剣を何度も素振りしてみる。
ーー日下未来がパッシブスキル【剣舞】を会得しました。
「うっひゃえ!?」
「未来?」
「何かスキル会得したって!」
よく分からないが喜ぶ未来と、未来の新しいスキルを鑑定眼で確認する愛莉。そんな二人を見つめながら、呆然としているのはリーシャとサフィー。
「古い剣から新しい剣を作るって……どうなってんのよアイリのスキルは……」
「そうよねぇ……あのスキルがあれば、ずっと同じ剣を使い続けられるわよね……折れても刃こぼれしてもまた作ればいいんですもの」
何と言う商売人泣かせのスキルだろうかと、思わず戦々恐々としてしまう。考えてみればこれから作ろうとしている魔法鞄だって、店で買うと恐ろしい値段がするのだ。そんな物がもしも本当に作れてしまったら、そしてその事を誰かに知られてしまったら、きっと愛莉の身に危険が迫るだろう事は容易に想像出来た。
「アイリのスキルについては……絶対に口外出来ないわね」
「ええ。わたし達の中だけに秘めておきましょう」
それから更にグリーグの森の方角へと進み、スライムの群生地でスライム狩りを始める四人。主に活躍したのはサフィーと未来。サフィーは炎の魔法で次々にスライムを狩り、未来も剣でズバズバと斬ってゆく。
あまり近づきすぎると襲い掛かってくるらしいが、未来は持ち前の反射神経の良さと、素早い斬撃で危なげなくスライムを倒していった。
そして役に立たないかと思われた愛莉とリーシャだが、愛莉がその辺に落ちていた木材と石を合成錬金し、先端が石の鏃になっている柄の長い槍を作った。槍なら一定の距離が保てるからと、試しに攻撃してみたら何度目かで倒す事が出来たのだ。
(一応レベル十だもんね、わたしもリーシャも)
流石にスライム程度は倒せると分かったのだが、剣を素振りしただけでスキルを覚えた未来に対して、愛莉もリーシャもいくら槍で攻撃しようとスキルは覚えなかった。
おそらく二人には槍の素質が無い、そういう事なのだろうと愛莉は結論付ける。
そして宣言通り、僅か三十分足らずでスライムの魔石(大)三十個が集まったのだった。
「未来、持った感じどう?」
「え?ああ、うん。長さはさっきのと同じくらいだね。重さはさっきのより少し重いかな?」
「さっきの剣より少しだけ剣身が太いからな。ってかよ、そんなの選んでどうするんだ?多分あと何振りかしたら折れるぜその剣」
店主はそう言うと、剣の真ん中くらいの場所を指差す。よく見ると、剣には無数に細かいヒビが入っていた。確かにこのまま使い続ければすぐに折れそうなのは素人目にも理解出来た。
「この剣っておいくらですか?」
しかし愛莉は店主の説明など聞こえていないかのように値段を訊ねる。店主は「はあっ……」っと溜め息をついた。更には、未来までもが心配そうな表情で愛莉を見つめている。
「愛莉……?」
「あ、うん。未来ちょっとこっち来て」
そう言って未来の手を引くと、店主から少し離れた所でヒソヒソと未来の耳元で何かを呟く愛莉。すると、未来の表情が驚きの表情へと変わる。
「出来るの!?」
「多分。材料はある訳だし」
そして店主の元へと戻る二人。戻るなり、未来が元気よく店主に告げる。
「おじさん、この剣買うね!いくら!?」
驚愕の表情を浮かべる店主と、リーシャとサフィー。先ほどの店主の説明を聞いても尚、この剣を買おうとする未来と愛莉は、とてもまともだとは思えなかった。
「あのな嬢ちゃん達……いや、何事も経験か。さっきも言ったが、その剣は売り物になんかならねえ剣だ。だから剣の代金はいらねぇが、剣を挿しとくベルトは大銅貨二枚だ」
「うん!じゃあそれで!」
「あ、わたしも半分出すね」
未来と愛莉からそれぞれ大銅貨を一枚ずつ貰い、未来の腰にベルトを装着する店主。細いだけではなく、引き締まった未来の腰を見て思わず感嘆の声を上げる。
「嬢ちゃん、ただ細いだけじゃなく引き締まったいい身体だな。冒険者ってのは本当なんだな」
「本当だよ!ほら、プレートあるし」
「Dランクかよ!?って事はワイルドウルフ倒したのか!?嬢ちゃん達だけで?」
そんな会話をしながら、最後にベルトの説明をする店主と、しっかりと聞く未来。
「このポケットに鞘ごと通して、こっちの金具とこの小さいベルトで固定するんだ」
「ここかな?えい!」
「それでいい。ふむ、見た目には剣士になったが………」
剣を装備し、一気に剣士っぽくなった未来。だが、装備している剣はすぐに折れてしまいそうな中古の剣である。
「いいか、絶対にその剣で大物を相手になんてするなよ?ってか折れたらすぐに逃げろ。まだ若いし美人なんだから、死に急ぐなよ」
「はいはーい!無理言ってごめんね」
そして武器屋を後にする四人。未来は武器を手に入れてご満悦の表情、愛莉も何故か嬉しそうな顔をしていたが、リーシャとサフィーは不安な表情を浮かべている。一体この二人は、何を企んでいるのだろうかと。
■■■
ようやく全ての買い物が終わり、街を出る四人の美少女達。愛莉が腕時計に目を落とすと、時計の針は午前十時を差していた。この時間なら、グリーグの森へ行っても召喚獣の捜索をする時間はたっぷりあるだろう。
しかしリーシャとサフィーが気になっているのは、何故未来と愛莉は店主にすらダメ出しされた中古の剣を買ったのかという事。そんな剣を買うぐらいなら、それこそ足りない分のお金を貸してあげたのにとの思いでいっぱいだ。
「ねえ、そろそろ説明してくれない?何でわざわざそんな剣を買ったの?店のおじさんもすぐ折れるって言ってたじゃない」
街道を少し進み、人が完全に居なくなった所でサフィーが訊ねる。すると未来と愛莉は顔を見合わせ、こくりと頷いた。
「未来、剣貸して」
「はい。お願いします愛莉先生!」
クスクスと笑い合う未来と愛莉。リーシャとサフィーが怪訝そうな顔をする中、愛莉は未来から預かった剣を鞘から抜いて地面に置いた。そして自身も膝を折り、その場にしゃがみ込むと剣に手を乗せる。きっと今、愛莉の正面に移動すれば愛莉のパンツ見えるよねと、未来がかなりどうでもいい事を考えている矢先、愛莉の手が輝き出した。
「まさか………」
「そ、そういう事!?」
ようやく愛莉のしようとしている事がリーシャとサフィーにも伝わる。そう、このヒビだらけの今にも折れそうな剣を、錬金術で全く新しい別の剣に作り変えようとしているのだ。
愛莉は言った、材料は有ると。材料さえあればそこから何かを作り出すのが錬金術。その材料が、愛莉の手の中にある。
剣身は鋼鉄、柄の部分は加工しやすい銅、そして柄には握りやすいように革が打ち付けられている。
合成のスキルがあれば、複数の素材から一つの物を作る事が出来る。あとは錬金術と合成のレベル次第だが、何故か愛莉には自信があった。
(イメージするのは、新しくて切れ味の鋭い未来の剣。わたしが未来だけの為に作る、未来専用の剣)
剣なら先ほど武器屋でたくさん見て来た。ゲームの知識だってある。だから、オリジナルの剣を想像する事だって出来る。
愛莉の手の中で、形を変える中古の剣。その光景を、未来、リーシャ、サフィーは固唾を呑んで見守った。やがてーーーーー
ーー合成のレベルが上がりました。
ーー想像力上昇のレベルが上がりました。
ーー想像力上昇のレベルが上がりました。
ーー具現化上昇のレベルが上がりました。
ーー具現化上昇のレベルが上がりました。
愛莉の頭の中に響くいつもの声。そして愛莉が手を乗せている中古の剣は、剣身が輝く真新しい剣へと生まれ変わっていた。その剣を持ち上げ、未来に手渡す。
「はい未来」
「うわぁ!チョー格好いい剣じゃん!これって愛莉のオリジナル!?」
「うん。魔王を倒しに行く勇者が持ってそうな剣をイメージしてみたよ」
もちろん材質は一般的な鋼鉄製の剣だが、そのフォルムは見る者を引きつける見事な出来だった。もちろん未来のテンションも上がり、剣を何度も素振りしてみる。
ーー日下未来がパッシブスキル【剣舞】を会得しました。
「うっひゃえ!?」
「未来?」
「何かスキル会得したって!」
よく分からないが喜ぶ未来と、未来の新しいスキルを鑑定眼で確認する愛莉。そんな二人を見つめながら、呆然としているのはリーシャとサフィー。
「古い剣から新しい剣を作るって……どうなってんのよアイリのスキルは……」
「そうよねぇ……あのスキルがあれば、ずっと同じ剣を使い続けられるわよね……折れても刃こぼれしてもまた作ればいいんですもの」
何と言う商売人泣かせのスキルだろうかと、思わず戦々恐々としてしまう。考えてみればこれから作ろうとしている魔法鞄だって、店で買うと恐ろしい値段がするのだ。そんな物がもしも本当に作れてしまったら、そしてその事を誰かに知られてしまったら、きっと愛莉の身に危険が迫るだろう事は容易に想像出来た。
「アイリのスキルについては……絶対に口外出来ないわね」
「ええ。わたし達の中だけに秘めておきましょう」
それから更にグリーグの森の方角へと進み、スライムの群生地でスライム狩りを始める四人。主に活躍したのはサフィーと未来。サフィーは炎の魔法で次々にスライムを狩り、未来も剣でズバズバと斬ってゆく。
あまり近づきすぎると襲い掛かってくるらしいが、未来は持ち前の反射神経の良さと、素早い斬撃で危なげなくスライムを倒していった。
そして役に立たないかと思われた愛莉とリーシャだが、愛莉がその辺に落ちていた木材と石を合成錬金し、先端が石の鏃になっている柄の長い槍を作った。槍なら一定の距離が保てるからと、試しに攻撃してみたら何度目かで倒す事が出来たのだ。
(一応レベル十だもんね、わたしもリーシャも)
流石にスライム程度は倒せると分かったのだが、剣を素振りしただけでスキルを覚えた未来に対して、愛莉もリーシャもいくら槍で攻撃しようとスキルは覚えなかった。
おそらく二人には槍の素質が無い、そういう事なのだろうと愛莉は結論付ける。
そして宣言通り、僅か三十分足らずでスライムの魔石(大)三十個が集まったのだった。
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