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玄冬
げんとう8
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WINGを起動し、青春活動のアカウントにログインした。
反応、コメント数は大きく増減は見られない。
カメラに背中を向けて三人でジャンプした写真は、大きく反応を貰えた訳ではない。
しかし、青春らしさが溢れているといくつものコメントを貰うことができた。
第三者が見て青春を感じるのは当たり前だ。
それを見た俺が青春を感じたのだから。
俺の考える青春。
それはきっと、心を許せる相手と高揚した空気を共有し、同じ行為を楽しんだ結果得る可能性があるものなのだろう。
毎回得られるものではなく、様々な要素が絡んだ結果生まれるもの。
もっと具体的に分かりやすく表すことができたら、WINGの投稿にも書いてみたいと思う。
これで青春活動を終了することも出来るだろうが、そんなの最高のエンドではないと思う。
ノベルゲームで例えるなら、ここで終わったらトゥルーエンドだ。
俺がトゥルーエンドで終わらせない。グッドエンドを見たい。
もっと青春を求めたいし、何よりこの心に生じてしまった感情を整理するのに、青春活動という重要な繋がりを消滅させたくない。
彼女はチートを疑う程簡単に、時間を掛けず、俺の心を掴んだ。
掴んだ挙句、熱量を与えてきた。
相変わらず三宅さんは、バイトでは鋭い目線を向けてくる。
あの後も、日曜日を中心に青春活動として集まっているが、バイトの時よりも目つきは穏やかだ。
「もしかして、バイト嫌いなの?」
ピークを過ぎた、余裕がある時間。
同じシフトに入っている悠二が離れたのを見計らい、思い切って三宅さんに聞いてみた。
「いや、そんなことないですけど。嫌いなら辞めてますよ」
「青春活動の時より目が吊り上がってるけど」
こんな感じで、と言いつつ、オーバー気味に自分の目尻を吊り上げてみる攻撃を仕掛けてみた。
三宅さんは俺を直視すると猫に負けないくらい目を開き、猫も舌を巻く程の速さで厨房の隅に逃げ込んだ。
予想外の反応に、吊り上げていた手を放し、俺も負けじと目を丸くしながら、状況確認のため後を追い、横に立つ。
どうやら隅で小さくなり、肩を震わせて笑っているようだ。
「不意打ちっ、ダメっ」
笑いを堪えながらそう言い、俺の足をポカポカ叩く。
か弱く、可愛らしい声が心のどす黒いものをくすぐり、絡め、表面に引き出そうとする。
「りょーちゃん」
我慢できずに、ふざけた調子を演出しながらそう呼んでみる。
結果、殴る力が数倍に跳ね上がった。
「ごめんごめん。痛い、痛いから! そこ骨!」
素早く三宅さんから離れ、補充用の箸を持って逃げる。
俺は、三宅さんと呼ばないと怒られる。蒼依は怒られないのに。
本人曰く、バイト中にうっかりそう呼ばれてしまうと恥ずかしいからとのことだが、正直信じられない。
三人で飛ぶ前に蒼依に向けたあの表情。
思い切って告白し、好きな相手がいるからと振られ続けた俺はその表情を知っている。
それは、恋。もしかしたら、愛。
俺以外の男に恋をしている女性に何度も振られ、俺の本能はそれを嗅ぎ分ける能力を習得してしまった。
反応、コメント数は大きく増減は見られない。
カメラに背中を向けて三人でジャンプした写真は、大きく反応を貰えた訳ではない。
しかし、青春らしさが溢れているといくつものコメントを貰うことができた。
第三者が見て青春を感じるのは当たり前だ。
それを見た俺が青春を感じたのだから。
俺の考える青春。
それはきっと、心を許せる相手と高揚した空気を共有し、同じ行為を楽しんだ結果得る可能性があるものなのだろう。
毎回得られるものではなく、様々な要素が絡んだ結果生まれるもの。
もっと具体的に分かりやすく表すことができたら、WINGの投稿にも書いてみたいと思う。
これで青春活動を終了することも出来るだろうが、そんなの最高のエンドではないと思う。
ノベルゲームで例えるなら、ここで終わったらトゥルーエンドだ。
俺がトゥルーエンドで終わらせない。グッドエンドを見たい。
もっと青春を求めたいし、何よりこの心に生じてしまった感情を整理するのに、青春活動という重要な繋がりを消滅させたくない。
彼女はチートを疑う程簡単に、時間を掛けず、俺の心を掴んだ。
掴んだ挙句、熱量を与えてきた。
相変わらず三宅さんは、バイトでは鋭い目線を向けてくる。
あの後も、日曜日を中心に青春活動として集まっているが、バイトの時よりも目つきは穏やかだ。
「もしかして、バイト嫌いなの?」
ピークを過ぎた、余裕がある時間。
同じシフトに入っている悠二が離れたのを見計らい、思い切って三宅さんに聞いてみた。
「いや、そんなことないですけど。嫌いなら辞めてますよ」
「青春活動の時より目が吊り上がってるけど」
こんな感じで、と言いつつ、オーバー気味に自分の目尻を吊り上げてみる攻撃を仕掛けてみた。
三宅さんは俺を直視すると猫に負けないくらい目を開き、猫も舌を巻く程の速さで厨房の隅に逃げ込んだ。
予想外の反応に、吊り上げていた手を放し、俺も負けじと目を丸くしながら、状況確認のため後を追い、横に立つ。
どうやら隅で小さくなり、肩を震わせて笑っているようだ。
「不意打ちっ、ダメっ」
笑いを堪えながらそう言い、俺の足をポカポカ叩く。
か弱く、可愛らしい声が心のどす黒いものをくすぐり、絡め、表面に引き出そうとする。
「りょーちゃん」
我慢できずに、ふざけた調子を演出しながらそう呼んでみる。
結果、殴る力が数倍に跳ね上がった。
「ごめんごめん。痛い、痛いから! そこ骨!」
素早く三宅さんから離れ、補充用の箸を持って逃げる。
俺は、三宅さんと呼ばないと怒られる。蒼依は怒られないのに。
本人曰く、バイト中にうっかりそう呼ばれてしまうと恥ずかしいからとのことだが、正直信じられない。
三人で飛ぶ前に蒼依に向けたあの表情。
思い切って告白し、好きな相手がいるからと振られ続けた俺はその表情を知っている。
それは、恋。もしかしたら、愛。
俺以外の男に恋をしている女性に何度も振られ、俺の本能はそれを嗅ぎ分ける能力を習得してしまった。
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