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白秋
はくしゅう5
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再び目を開いた時には、終点の駅に到着していた。
軽快な音が流れた後にドアが開き、乗客が続々と電車から出ていく。
俺も座席から立ち上がり、電車から出た。
駅に隣接している商業施設は賑やかで、都会に出てきたことを嫌でも実感する。
目的地がない俺は、人の波に合わせて移動し、南口から出た。
タクシーやバスの停留所がひしめく中、居酒屋やパン屋、ネカフェなどが立ち並ぶ。
とりあえず、以前行ったことのある中古ゲームショップへ行くことにした。
運動も兼ねて、交通機関は使わず歩いて行くことにする。
駅前を過ぎ、裏通りに入ると、回転しそうにない寿司屋や居酒屋、地元の人物が営んでいそうな中華料理屋などが増えてきた。
ホストクラブやキャバクラらしい店もその間に並び、太陽が登る今は眠っている。
こんな裏通りの隅に、なぜか行列が出来ていた。
広くないこの裏通りで行列が出来ているため、嫌でも近くを通ることになる。
建物に近づくにつれ、徐々に全貌が明らかになっていく。
それは新しく開店したカフェらしい。
ゲームから出てきたような、ゴシックな服装を纏った男性が看板を持って立っており、呼び込みを行っていたり、並んでいる列の整理を行っている。
立て看板には、『イセカイトビラ』と書いてある。
「映え体験できるカフェでーす! ただいまキャンペーンを行っておりまーす!」
コスプレにも近い、サイバーパンクな服装を身に纏った小柄の女性が声を張り上げている。
笑顔を絶やさずビラを配り、動くたびに外にはねた金髪のショートヘアが揺れていた。
同じ店舗だとは思うが、世界観合わなすぎだろ。
世界観の違いに寒気がするわ。
目を合わさないよう、目を逸らして歩くことにした。
「こんにちは!今日開店した『イセカイトビラ』です!」
しかし、捕まってしまった。
どうやらこれは、強制イベントだったらしい。
金髪ショートヘアの女性は、笑顔を絶やさないまま、俺に小さなビラを渡す。
「本日、チャージ料金が半額になっております!」
目の前に出されてしまうと、受け取らないわけにはいかなかった。
渋々、ビラを受け取る。
「このビルの3階、ワンフロア分使っていて、サイバーパンクな世界観と、ゴスロリな世界観、魔法学校の生活が楽しめるんです!」
「へえ、すごいですね」
すぐ離れたら良いものの、異色の施設への驚きが隠せず、思わず感想をこぼしてしまう。
コンカフェが三軒合体したようなものならば、ゴシックな服とサイバーな服の従業員がいてもおかしくない。
充分客が並んでいると思うが、オープンまでの費用や従業員雇用などを考えると、これでも赤字だろうと余計な想像をしてしまう。
「私、午前中はサイバーパンク担当なんですけど、午後からは魔法学校担当なんですよね。よければ私達と青春しませんか?」
首を傾げながら、女性は俺に笑いかけた。
サラサラと金髪が揺れ、光が反射する。
「せいしゅん」
それだけを復唱する俺は、とても間抜けに映っただろう。
しかし、今の俺はそのキーワードだけが見事に引っかかってしまった。
「青春かあ」
「素敵な青春、お手伝いしますよ?」
今度はウインクされる。
カラコンを付けているのだろう。日本人離れした真っ青な瞳に吸い込まれそうになる。
「じゃあ、午後行きます」
「ありがとうございます!」
女性はその場で飛び跳ねる。腰から下げているクリアポーチから、名刺と思われる紙を取り出した。
「私の名刺です。二時くらいから魔法学校ゾーンの方にいますから! 楽しみにしてますね!」
両手で渡された紙を、両手で受け取る。
俺が受け取ったのを確認すると、女性は俺の前から離れ、他の通行人の元へ向かった。
その姿を見送り、俺も中古ゲームショップに向けて歩き始める。
軽快な音が流れた後にドアが開き、乗客が続々と電車から出ていく。
俺も座席から立ち上がり、電車から出た。
駅に隣接している商業施設は賑やかで、都会に出てきたことを嫌でも実感する。
目的地がない俺は、人の波に合わせて移動し、南口から出た。
タクシーやバスの停留所がひしめく中、居酒屋やパン屋、ネカフェなどが立ち並ぶ。
とりあえず、以前行ったことのある中古ゲームショップへ行くことにした。
運動も兼ねて、交通機関は使わず歩いて行くことにする。
駅前を過ぎ、裏通りに入ると、回転しそうにない寿司屋や居酒屋、地元の人物が営んでいそうな中華料理屋などが増えてきた。
ホストクラブやキャバクラらしい店もその間に並び、太陽が登る今は眠っている。
こんな裏通りの隅に、なぜか行列が出来ていた。
広くないこの裏通りで行列が出来ているため、嫌でも近くを通ることになる。
建物に近づくにつれ、徐々に全貌が明らかになっていく。
それは新しく開店したカフェらしい。
ゲームから出てきたような、ゴシックな服装を纏った男性が看板を持って立っており、呼び込みを行っていたり、並んでいる列の整理を行っている。
立て看板には、『イセカイトビラ』と書いてある。
「映え体験できるカフェでーす! ただいまキャンペーンを行っておりまーす!」
コスプレにも近い、サイバーパンクな服装を身に纏った小柄の女性が声を張り上げている。
笑顔を絶やさずビラを配り、動くたびに外にはねた金髪のショートヘアが揺れていた。
同じ店舗だとは思うが、世界観合わなすぎだろ。
世界観の違いに寒気がするわ。
目を合わさないよう、目を逸らして歩くことにした。
「こんにちは!今日開店した『イセカイトビラ』です!」
しかし、捕まってしまった。
どうやらこれは、強制イベントだったらしい。
金髪ショートヘアの女性は、笑顔を絶やさないまま、俺に小さなビラを渡す。
「本日、チャージ料金が半額になっております!」
目の前に出されてしまうと、受け取らないわけにはいかなかった。
渋々、ビラを受け取る。
「このビルの3階、ワンフロア分使っていて、サイバーパンクな世界観と、ゴスロリな世界観、魔法学校の生活が楽しめるんです!」
「へえ、すごいですね」
すぐ離れたら良いものの、異色の施設への驚きが隠せず、思わず感想をこぼしてしまう。
コンカフェが三軒合体したようなものならば、ゴシックな服とサイバーな服の従業員がいてもおかしくない。
充分客が並んでいると思うが、オープンまでの費用や従業員雇用などを考えると、これでも赤字だろうと余計な想像をしてしまう。
「私、午前中はサイバーパンク担当なんですけど、午後からは魔法学校担当なんですよね。よければ私達と青春しませんか?」
首を傾げながら、女性は俺に笑いかけた。
サラサラと金髪が揺れ、光が反射する。
「せいしゅん」
それだけを復唱する俺は、とても間抜けに映っただろう。
しかし、今の俺はそのキーワードだけが見事に引っかかってしまった。
「青春かあ」
「素敵な青春、お手伝いしますよ?」
今度はウインクされる。
カラコンを付けているのだろう。日本人離れした真っ青な瞳に吸い込まれそうになる。
「じゃあ、午後行きます」
「ありがとうございます!」
女性はその場で飛び跳ねる。腰から下げているクリアポーチから、名刺と思われる紙を取り出した。
「私の名刺です。二時くらいから魔法学校ゾーンの方にいますから! 楽しみにしてますね!」
両手で渡された紙を、両手で受け取る。
俺が受け取ったのを確認すると、女性は俺の前から離れ、他の通行人の元へ向かった。
その姿を見送り、俺も中古ゲームショップに向けて歩き始める。
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