0からの社会政治経済学_まとめ

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日本が中国とのデカップリングが難しい理由

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バイデン政権に入って中国とのデカップリングが話題になりました。
日本でも中国国内の法律改正により、デカップリングの動きは出ています。
しかし、米国はともかく日本は米国に見習ったデカップリングが可能なのでしょうか。
筆者自身の感覚からすると難しい様に感じます。

それは戦後の日本と中国と、現在の中国と日本の政治体制はかなり変わっている事が起因しています。
そもそも日本の戦後体制は一貫して反米主義でした。
今でこそ保守派や右に相当する人の多くは親米派ですが、学生運動や55年体制といった経験を経て日本は左翼的な考え方が一般的には間違っている事に気付き始めます。
ここ最近では赤軍に関する報道や、東アジア反日武装戦線の活動がニュースで話題になりました。
どれも反社会的な行動であり、価値観の押し付けや罪のない人に被害を出す行動は許されない行為です。

日本の政治家は現在進行形で政治家の内、内閣に就任した政治家の中で米国の政治意図に反する行為を行えば自動的に更迭される様になっています。
ですから、本来は親米主義の元になっている原因の一つはメディアなどを利用した米国側の政治誘導にあります。
残念ですが、ルーピーという名前が定着化している鳩山元首相が「米国の意見に何でも沿う政権は長く続く」といった発言に間違いはありません。

日本は現在進行形で戦犯国であり、ドイツと共に制裁の続いている国家の一つです。
日本が戦後、反米体制を貫いた理由の一つは実質的な日本の植民地化の阻止でした。
当時、中国には軍事抑止力が無かったため、日本は政治的な意図でもって中国に寄りました。
理由は反米主義を貫く為には、軍事力を除くと経済力をつけなければ勝てないからでした。
また、中国も反米主義を掲げていた都合で日本に対して中国の政治的な発言力を持つ意味でも、日本とのサプライチェーンの共有が必要でした。
生産や在庫管理を中国に任せる事によって日本はコストカットが可能であり、中国は政治的な意図でもって都合が悪くなった時に日本へ脅しをかける為の外交カードを手に入れる事が出来ました。
経団連が親中寄りで自民党の中にも親中議員が存在する理由も、需給関係が成立しての話なのです。
ですから経団連が親中寄りから脱さない限り、日本は中国政府の意図を読みながら中国の意向を聞いていくしかありません。そして安い労働力に依存する限り、残念ですが日本の労働生産力や労働賃金の改革も進まないでしょう。
米国に出来て日本に出来ないデカップリングの根底は、中国に製造を任せる裁量の領域や依存する部分が大きく異なるからです。


戦後、70年以上が経過した中で、中国は日本の戦争責任を追及しながらも、大日本帝国時代の研究は熱心に続けていました。その結果が今の中国の軍拡に繋がっているのです。
日本共産党を始めとする左派の政党は「軍事力は不要、国民の為に税金を使え」と連呼していますが、実際には共産主義や社会主義を掲げる団体は同じ民族間でも対立は起きます。
民族の違う社会主義や共産主義の団体が政治的な交渉は民族主義が優先されるので、絶対に双方が譲る事はありません。結果的に軍拡のイタチごっこになるでしょう。
ですから、日本共産党が主張する「ロシア、中国とは独立した団体」という主張自体は正しいでしょう。
ですが、その主張は裏を変えすと現実的には平和主義とは程遠い結果になるという話です。

つまり、日本が資本主義を継続しても共産主義に転換したとしても、中国が軍拡を続ける限り、日本は国家としての主張を守る為に対抗して軍事抑止力を増強しなければならない結果になります。
この事実や現実を大半の左翼の方々は認識をされていないという事です。
そして、戦後の日本が70年先に中国が飛躍的な経済発展を遂げて軍拡を行うという想定は無く、米国側にも中国を共産主義体制から解放する意図でもって中国政府の主張する合弁による技術搾取を事実上容認してきました。
これも中国の軍拡や中国の国際的な政治的な主張を容認しなければならない結果になるとは米国側にも想定は無かった事でしょう。


では、中国とのデカップリングを行う為に希望とされてる国は中国の人口に匹敵するインドです。
しかし、インドに中国に依存していた労働力を転嫁するには、様々なハードルがあります。
今まで日本が中国に労働力を依存してきた背景には、日本人が中国語を理解していなくても漢字である程度の意思疎通が可能だったからです。

第一にマナーの問題があります。
良くも悪くも諸外国が中国に製造拠点を作ったおかげで一定のモラルは認知される様になりました。
一方で先進国の枠に入る韓国ですら日本が常識と考えるモラルやマナーはありません。
インドではフードデリバリーを受けたバイトがデリバリーする商品の一部を食べたものをそのまま配達するといったような事が現実的に存在するのです。

第二に宗教や地域思想の問題があります。
小さい集落で決まりごとが存在し、価値観もバラバラです。
価値観がバラバラなので、本店と支店が少しでも離れていると、主義主張の違いから喧嘩やボイコットが発生します。そういった理由で仕事を組織化する事が非常に難しい訳です。

第三にインドは中国と敵対する国家ですが、敵対するという事は似たもの同士とも言えます。
インドは中国の体制とは違うと思われるかもしれませんが、カースト制は現在進行形で存続している制度です。
そして政治体制も中国と似ているからこそ、主義主張の対立が起きているのです。
もし、単純に中国とのデカップリングが目的でインドへ移管すれば、今度はインドが第二の中国化を誘発する事になるでしょう。

そして最大の理由は、米国も欧米諸国も色んな理由をつけて中国へ政治的な圧力や非難を続けていますが、中国の消費経済や製造力が無ければ資本主義としての利益が生まれないというのが現実です。
何処かで折り合いをつけなければならないのです。
今、バイデン政権では中国とのデカップリングを頑張っていますがトランプ政権に入れば、日本や韓国に政治的な圧力をかける為にあっさり中国とのデカップリングを辞めてしまうかもしれません。
そうなれば、困るのは中国に敵対して真面目にデカップリングを目指そうとしている日本です。
今まで製造拠点の分散化を考えて来なかった日本に、今さらフィリピンやベトナムなどに拠点を移そうとしても漢字で疎通が出来なければ今度は英語の出来る人をブリッジ管理者として用意しなければなりません。
但し、地域によっては英語ではなく、現地の言葉を使わなければ人が動いてくれない可能性もあります。
人を動かす為には人が動いて貰える為の共感が無ければ難しいのです。
日本が他国との合弁で失敗するケースの中には、合弁する前の会社の体制や文化や考え方を尊重できず、体制転換を行ったが為に機能せずに事実上の崩壊が起きた事例もあります。

このような事情で、中国とのデカップリングはメディアが発言する程、簡単には進まないものと思われます。
中国の製造品質や一定のモラルを構築するまでに50年近くの時間を要しています。
習近平は現在、70歳なので100歳まで政権を握るとしても30年しかありません。
その中で中国の製造移管を別の国家へ簡単に迅速に移す事は容易ではない様に思われます。
もし、それでも絶対的に中国とのデカップリングが必要とあらば、教育した日本人を先に半数分用意して現地稼働させた後、徐々に現地の人を引き入れて拡張していく様な方法しかないでしょう。
もし、日本の低所得者層をターゲットに海外移住を進め、現地法人枠で雇えば日本の法律は適用されないため、大手企業を中心に人的コスト削減を目的に日本人が海外に移動して低所得のまま製造作業に従事するといった方向も生まれるかもしれません。
但し、その枠に入る人は海外移住希望ないし、海外語学を学ぶ意思などの条件が無ければ難しい様にも思えますが。
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