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ROUTE1(プロローグ)
1-04 就寝
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高価そうなシャンデリアに照らされた長い廊下を進みしばらく。
二階の途中にある一室を前に藤咲は立ち止まる。
「諏訪様、今日はこちらのお部屋をお使いください」
「どうも」
中に入ると客室だろうか。
最低限のテーブルやベット、雑貨が置かれたごく普通で部屋に通される。
とはいえ一般的には客室と呼ぶには十分すぎる程に広い。
「いいんですかこんないい部屋を」
「これでも屋敷の中ではまだ小さい方の部屋なんですよ」
「マジかよ」
やはりこの屋敷の構図は、庶民には理解できないくらい大胆な
設計になっているようだった。
「ミサ様のお部屋は二階一番奥、その手前にわたくしの部屋があるので
必要があればいつでもお呼びください」
「分かりました。それで警備システムのアクセスキーは?」
「こちらに」
すると藤咲が自身の懐から小さな長方形の立方体を取り出す。
それは言葉通り。この屋敷の警備システムに接続するためのアイテムであった。
一応トクサでもアクセスキー無しにシステムに入り込むことは可能では
あるものの、やはり正規のルートでの方が何かと面倒ごとが無くて済むと
いう訳である。
「流石、準備がいいですね」
「恐れ入ります。それと屋敷内での行動に関してですが、常識的な範囲内であれば
自由にしていただいて構いません」
「感謝します」
俺はアクセスキーを受け取ると、それをトクサへと接続し屋敷内にある
警備システムの確認をお願いする。
「ところで先程から屋敷に人が見当たりませんが、他の使用人さんたちは?」
「この屋敷に私以外の使用人はいません」
「どうしてですか?」
「ミサ様のご要望なのです。今回の警護の件が来た時点で、私以外の使用人の
立ち入りを制限なされたのです」
「いいんですかそれ?」
「はい。それだけミサ様がわたくしに対し信用を置いてくださっている
証ですから」
「なるほど――――とはいえ、これだけの屋敷を一人で管理されるのは
大変では?」
「そこは今のところ問題はございません。これでも幼少の頃より家事全般を
叩きこまれてきましたから」
と、清々しく言ってのける藤咲の表情からは気苦労のような
感情は読み取れない。しかし逆を言えばそれだけ感情を押し殺すだけの
技量が彼女にはあるということになる。
「まさにプロだな」
「では私はこれで。ミサ様にタオルを届けないといけませんから」
「あぁ」
部屋の前まで藤咲を見送る。
「(――――さてと、じゃ俺もさっさと仕事に戻るとするかな)」
藤崎と別れ、早速車両から大きめのバック一つ分の必要物資を部屋へと
運び入れる。
「よしっと。どうだトクサ、システムの様子は」
『全く以て問題ありません。流石は大手IT企業の屋敷だと言う他ありません』
「そうか」
屋敷図、屋敷内ネットワーク、警備システムなどの確認を終えると
俺は持ってきた荷物からタブレットを取り出すと本部に向け、
報告書の作成に取り掛かる。
『それにしても藤咲という少女、凄いですね。
これだけ広大な屋敷を一人で管理しているなんて』
「あぁ、全くだ」
普通ならそんなことできるはずがないと言いたいところだが…………。
それでも今日の様子を見る限り、彼女はほぼ完ぺきに従者としての
仕事をこなしている。
「世の中色々な人がいるんだなと、この仕事をしていてつくづく思うよ」
『――――あなたがそれを言いますか』
と、トクサは呆れた様子で言葉を続ける。
『私としては透次ほど奇妙な人生を送っている人はそうは
居ないと思っていますよ』
「どうだかな」
なんて話をしながらも、その日は報告書の作成を終え、明日からの任務に備え
早々にベットへと潜り込んだ。
二階の途中にある一室を前に藤咲は立ち止まる。
「諏訪様、今日はこちらのお部屋をお使いください」
「どうも」
中に入ると客室だろうか。
最低限のテーブルやベット、雑貨が置かれたごく普通で部屋に通される。
とはいえ一般的には客室と呼ぶには十分すぎる程に広い。
「いいんですかこんないい部屋を」
「これでも屋敷の中ではまだ小さい方の部屋なんですよ」
「マジかよ」
やはりこの屋敷の構図は、庶民には理解できないくらい大胆な
設計になっているようだった。
「ミサ様のお部屋は二階一番奥、その手前にわたくしの部屋があるので
必要があればいつでもお呼びください」
「分かりました。それで警備システムのアクセスキーは?」
「こちらに」
すると藤咲が自身の懐から小さな長方形の立方体を取り出す。
それは言葉通り。この屋敷の警備システムに接続するためのアイテムであった。
一応トクサでもアクセスキー無しにシステムに入り込むことは可能では
あるものの、やはり正規のルートでの方が何かと面倒ごとが無くて済むと
いう訳である。
「流石、準備がいいですね」
「恐れ入ります。それと屋敷内での行動に関してですが、常識的な範囲内であれば
自由にしていただいて構いません」
「感謝します」
俺はアクセスキーを受け取ると、それをトクサへと接続し屋敷内にある
警備システムの確認をお願いする。
「ところで先程から屋敷に人が見当たりませんが、他の使用人さんたちは?」
「この屋敷に私以外の使用人はいません」
「どうしてですか?」
「ミサ様のご要望なのです。今回の警護の件が来た時点で、私以外の使用人の
立ち入りを制限なされたのです」
「いいんですかそれ?」
「はい。それだけミサ様がわたくしに対し信用を置いてくださっている
証ですから」
「なるほど――――とはいえ、これだけの屋敷を一人で管理されるのは
大変では?」
「そこは今のところ問題はございません。これでも幼少の頃より家事全般を
叩きこまれてきましたから」
と、清々しく言ってのける藤咲の表情からは気苦労のような
感情は読み取れない。しかし逆を言えばそれだけ感情を押し殺すだけの
技量が彼女にはあるということになる。
「まさにプロだな」
「では私はこれで。ミサ様にタオルを届けないといけませんから」
「あぁ」
部屋の前まで藤咲を見送る。
「(――――さてと、じゃ俺もさっさと仕事に戻るとするかな)」
藤崎と別れ、早速車両から大きめのバック一つ分の必要物資を部屋へと
運び入れる。
「よしっと。どうだトクサ、システムの様子は」
『全く以て問題ありません。流石は大手IT企業の屋敷だと言う他ありません』
「そうか」
屋敷図、屋敷内ネットワーク、警備システムなどの確認を終えると
俺は持ってきた荷物からタブレットを取り出すと本部に向け、
報告書の作成に取り掛かる。
『それにしても藤咲という少女、凄いですね。
これだけ広大な屋敷を一人で管理しているなんて』
「あぁ、全くだ」
普通ならそんなことできるはずがないと言いたいところだが…………。
それでも今日の様子を見る限り、彼女はほぼ完ぺきに従者としての
仕事をこなしている。
「世の中色々な人がいるんだなと、この仕事をしていてつくづく思うよ」
『――――あなたがそれを言いますか』
と、トクサは呆れた様子で言葉を続ける。
『私としては透次ほど奇妙な人生を送っている人はそうは
居ないと思っていますよ』
「どうだかな」
なんて話をしながらも、その日は報告書の作成を終え、明日からの任務に備え
早々にベットへと潜り込んだ。
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