27 / 28
ROUTE2(風紀委員会潜入編)
2-08 作戦会議
しおりを挟む
「どうぞ入って~」
「お邪魔します」
風紀委員会室のある中央校舎から出てしばらく。
同じくアストラル学園の敷地内の南西に位置する魔導師科の学生寮である
緋音先輩の部屋へとやって来ていた。
「ふー、何とか誰にも見られずにこれたみたいで一安心だね」
「そうみたいですね」
部屋に到着し扉を閉めると二人してようやく一息入れる。
同じ学園内とはいえ、魔術師科である俺が魔導師科の寮を、それも女子の部屋に
出入りしていることが知れれば何かと面倒になる。
そう考慮した俺たちは出来る限り慎重に行動しここへとたどり着いたのだった。
「(実際、ここまで誰一人として寮の生徒とすれ違わなくて済んだのは幸い
だったな)」
しかし毎回こう上手くはいかないだろう。
寮はその構造上、一階と二階が男子部屋、三階と四階が女子部屋となっている。
そして先輩の部屋は四階。
ただでさえ魔術師科と魔導師科でエリアが分かれているにも拘わらず、
寮のエントランスから先輩の部屋まで誰一人に目撃されることなく移動することは
相当に困難なことだ。
「(次からはもっと別の方法で移動した方が良さそうだな)」
なんてことを考えつつ、とりあえず靴を脱ぎ先輩の部屋にお邪魔する。
といっても学園内にある学生寮の為、そこまでの広さはない。
中はよくあるワンルームマンションのような構造をしており、ベットや机、本棚と
いった備え付けの家具を中心とした平凡な感じだった。
しいていうならば所々に女の子らしい雑貨とスイーツ関連の本が置かれているのが
先輩らしさを物語っていた。
「適当に座ってて、今お茶入れるから」
「お構いなく」
彼女に促されるがままに部屋の中心に置かれたテーブルの前に腰掛ける。
何気に女性の部屋に入るのは初めてのことで、室内に充満した女子特有の甘い香り
に鼻腔をくすぐられ少しドギマギとする。
「おまたせ」
しばらくして先輩がお茶の入ったコップに手に隣に座る。
「どう私の部屋は?」
「思ったよりもシンプルですね」
「そうでしょそうでしょ」
「それに何だか甘い香りがします」
「え、嘘? くさい?」
「いえ、どちらかというといい匂いだと思います」
「そう? 自分ではあんまり分かんないんだけどな」
クンクンと自分や周囲の匂いを嗅ぐ先輩。
しかしピンとこないようで首をかしげる。
「自分の匂いって案外自分では気が付かないものですよね」
「まぁ臭いわけじゃないなら別にいいんだけど…………言われたら気になるわね。
もしかして柔軟剤の匂いかしら」
「どれどれ」
「ひゃっ」
確認の為、先輩に近づき制服の匂いを嗅ぐ。
「ちょっと司くん!」
「あ、すいません先輩。つい」
咄嗟のことに赤面する先輩を見て、乗り出した体を引っ込める。
「もう君って割とデリカシーがないよね」
「え、でもいい匂いですよ?」
「そういうことじゃないくて。いきなり女の子の匂いを嗅ぐなんて良くないんだー」
よっぽど恥ずかしかったからか、先輩は体をくねらせ頬を膨らませる。
「すいません。以後気を付けます」
「もー。わたしだったからよかったものの、他の子にこういうことはしちゃ
ダメだよ」
「はい」
「分かればよろしい」
すると先輩は姿勢を戻し再びこちらに向き直る。
「そういえば先輩。まだ聞いていませんでしたが、今日は何か俺に用事でもあったん
ですか?」
「用事って程のものじゃないけど、最近司くんもパレットに来てくれなくなった
から会う機会も減っちゃったし。ここらで近況の報告でもし合おうかと思って」
「なるほど。それもそうですね」
先輩から差し出されたコップの中身を口に含みつつ。
早速、脳内で言葉にする情報を整理する。
「先に聞いちゃうけど、風紀委員会に潜入して有益な情報は得られた?」
「風紀委員室内に関しては特には。ただ学園のネットワークシステムを見る限り
重要な書類は生徒会室に集約されているみたいです」
「とすると生徒会室に忍び込む必要がありそうね」
「ええ。ですが入室権限があるのは役員以上の生徒のみ」
「生徒会長に副会長、あとは風紀委員長ね」
「はい」
「学園のビックスリー。正直、正面突破は不可能ね」
「生徒会室への入室は専用のカードキーが必要になります。入手できる可能性がある
のは風紀委員長の染谷ゆづはですが…………」
「当然肌身離さず持っているわよね」
仮に無事カードキーを入手できたとしても、生徒会室に侵入している間にカード
キーがないことがバレては意味がない。
できれば隠密に、危険を冒すことなく生徒会室に侵入したい。
「仕方ない。奴を頼るか」
そうして俺はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。
そう――――情報屋だ。
「――――ということなんだが」
連絡を取るや否や用件だけを手短に話し返答を伺う。
『話は分かった。つまり生徒会室に潜入する為のアイデアを寄こせということだな』
「そういうことだ」
『全く。久々に連絡が来たと思ったら、情報屋使いの荒い奴だぜ』
「それでいい案はあるのか?」
『…………』
情報屋はしばらく黙り込み熟考する。
『あるにはある』
「本当か」
『あぁ。だが問題もある』
続けて情報屋。
『遠乃緋音、そこにいるか』
「ええいるけど…………私に何か?」
『お前、最上司が好きか?』
「ふぇ!?」
思わぬ言葉に先輩が狼狽する。
「おい、なんのつもりだ。ふざけているのか」
『冗談ではないぞ。真面目な話だ』
「――――?」
『私の提案する作戦。それは染谷ゆづはとのデートでカードキーを奪っちゃおう
作戦だ』
「お邪魔します」
風紀委員会室のある中央校舎から出てしばらく。
同じくアストラル学園の敷地内の南西に位置する魔導師科の学生寮である
緋音先輩の部屋へとやって来ていた。
「ふー、何とか誰にも見られずにこれたみたいで一安心だね」
「そうみたいですね」
部屋に到着し扉を閉めると二人してようやく一息入れる。
同じ学園内とはいえ、魔術師科である俺が魔導師科の寮を、それも女子の部屋に
出入りしていることが知れれば何かと面倒になる。
そう考慮した俺たちは出来る限り慎重に行動しここへとたどり着いたのだった。
「(実際、ここまで誰一人として寮の生徒とすれ違わなくて済んだのは幸い
だったな)」
しかし毎回こう上手くはいかないだろう。
寮はその構造上、一階と二階が男子部屋、三階と四階が女子部屋となっている。
そして先輩の部屋は四階。
ただでさえ魔術師科と魔導師科でエリアが分かれているにも拘わらず、
寮のエントランスから先輩の部屋まで誰一人に目撃されることなく移動することは
相当に困難なことだ。
「(次からはもっと別の方法で移動した方が良さそうだな)」
なんてことを考えつつ、とりあえず靴を脱ぎ先輩の部屋にお邪魔する。
といっても学園内にある学生寮の為、そこまでの広さはない。
中はよくあるワンルームマンションのような構造をしており、ベットや机、本棚と
いった備え付けの家具を中心とした平凡な感じだった。
しいていうならば所々に女の子らしい雑貨とスイーツ関連の本が置かれているのが
先輩らしさを物語っていた。
「適当に座ってて、今お茶入れるから」
「お構いなく」
彼女に促されるがままに部屋の中心に置かれたテーブルの前に腰掛ける。
何気に女性の部屋に入るのは初めてのことで、室内に充満した女子特有の甘い香り
に鼻腔をくすぐられ少しドギマギとする。
「おまたせ」
しばらくして先輩がお茶の入ったコップに手に隣に座る。
「どう私の部屋は?」
「思ったよりもシンプルですね」
「そうでしょそうでしょ」
「それに何だか甘い香りがします」
「え、嘘? くさい?」
「いえ、どちらかというといい匂いだと思います」
「そう? 自分ではあんまり分かんないんだけどな」
クンクンと自分や周囲の匂いを嗅ぐ先輩。
しかしピンとこないようで首をかしげる。
「自分の匂いって案外自分では気が付かないものですよね」
「まぁ臭いわけじゃないなら別にいいんだけど…………言われたら気になるわね。
もしかして柔軟剤の匂いかしら」
「どれどれ」
「ひゃっ」
確認の為、先輩に近づき制服の匂いを嗅ぐ。
「ちょっと司くん!」
「あ、すいません先輩。つい」
咄嗟のことに赤面する先輩を見て、乗り出した体を引っ込める。
「もう君って割とデリカシーがないよね」
「え、でもいい匂いですよ?」
「そういうことじゃないくて。いきなり女の子の匂いを嗅ぐなんて良くないんだー」
よっぽど恥ずかしかったからか、先輩は体をくねらせ頬を膨らませる。
「すいません。以後気を付けます」
「もー。わたしだったからよかったものの、他の子にこういうことはしちゃ
ダメだよ」
「はい」
「分かればよろしい」
すると先輩は姿勢を戻し再びこちらに向き直る。
「そういえば先輩。まだ聞いていませんでしたが、今日は何か俺に用事でもあったん
ですか?」
「用事って程のものじゃないけど、最近司くんもパレットに来てくれなくなった
から会う機会も減っちゃったし。ここらで近況の報告でもし合おうかと思って」
「なるほど。それもそうですね」
先輩から差し出されたコップの中身を口に含みつつ。
早速、脳内で言葉にする情報を整理する。
「先に聞いちゃうけど、風紀委員会に潜入して有益な情報は得られた?」
「風紀委員室内に関しては特には。ただ学園のネットワークシステムを見る限り
重要な書類は生徒会室に集約されているみたいです」
「とすると生徒会室に忍び込む必要がありそうね」
「ええ。ですが入室権限があるのは役員以上の生徒のみ」
「生徒会長に副会長、あとは風紀委員長ね」
「はい」
「学園のビックスリー。正直、正面突破は不可能ね」
「生徒会室への入室は専用のカードキーが必要になります。入手できる可能性がある
のは風紀委員長の染谷ゆづはですが…………」
「当然肌身離さず持っているわよね」
仮に無事カードキーを入手できたとしても、生徒会室に侵入している間にカード
キーがないことがバレては意味がない。
できれば隠密に、危険を冒すことなく生徒会室に侵入したい。
「仕方ない。奴を頼るか」
そうして俺はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。
そう――――情報屋だ。
「――――ということなんだが」
連絡を取るや否や用件だけを手短に話し返答を伺う。
『話は分かった。つまり生徒会室に潜入する為のアイデアを寄こせということだな』
「そういうことだ」
『全く。久々に連絡が来たと思ったら、情報屋使いの荒い奴だぜ』
「それでいい案はあるのか?」
『…………』
情報屋はしばらく黙り込み熟考する。
『あるにはある』
「本当か」
『あぁ。だが問題もある』
続けて情報屋。
『遠乃緋音、そこにいるか』
「ええいるけど…………私に何か?」
『お前、最上司が好きか?』
「ふぇ!?」
思わぬ言葉に先輩が狼狽する。
「おい、なんのつもりだ。ふざけているのか」
『冗談ではないぞ。真面目な話だ』
「――――?」
『私の提案する作戦。それは染谷ゆづはとのデートでカードキーを奪っちゃおう
作戦だ』
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる