70 / 100
第270章『匂い』
しおりを挟む
第270章『匂い』
「……親父が来るのか」
「そう嫌な顔するなよ……お前より俺の方が嫌だよ…統幕長が来るよりマシだと思おうぜ」
夜の海兵隊総司令執務室、ソファに腰を下ろした敦賀が心底嫌そうな面持ちで舌打ちをし、高根はそれに苦笑しつつ言葉を返した。統幕から派遣される将官が敦賀の父親である敦賀統幕副長になった、統幕長の須藤から高根がそう連絡を受けたのは夕方の事。よりによって彼か、勘が鋭く有能で次期統幕長は確実と言われている、そんな切れ者が来る事になるとはと頭を抱えた高根、同じ様に連絡を受けたであろう黒川も似た心境に違い無い。敦賀はそれ以前に折り合いが良いとは言えない父親の襲来が嫌らしく、あからさまに嫌悪の表情を浮かべて煙草に火を点ける。
「敦賀の親父さんが中央から派遣されて来るんだってー?」
そこにやって来たのはタカコ、扉を叩き入室を許可された後に室内へと入りながらの彼女のその言葉に高根が眉根を寄せて口を開く。
「そうだが、誰から聞いた?」
「タツさん。さっき大部屋に電話来たよ、『工廠の黒川ですが清水曹長いらっしゃいますか?』って」
「……何やってんだあいつは」
「んで、胃が痛くなるって愚痴聞かされた」
気持ちは分かるが何故お前に、そう言って頭を掻く高根を見て笑いながら敦賀の隣へと腰を下ろそうとしたタカコ、その彼女の表情は敦賀が手にした煙草を見て一気に険しくなった。
「この……アホンダラ!お前、私が言った事をもう忘れたのか!」
言葉と共に右手が敦賀が手にする煙草を取り上げ、左手が彼の後頭部へと手首を効かせて叩き込まれる。突然の事に動きを失いつつも後頭部を抱える敦賀、タカコはそんな彼を見下ろしつつ灰皿に煙草を押し付けて怒鳴り付けた。
「お前、今度は非正規兵役に回るから身体から体臭以外の臭いは消しておけって言っただろうが!煙草は当然厳禁、納豆も食うな食事に薬味も使うなって言っただろうがこの馬鹿!ボケ!童貞!」
「ああ、そういやそうだったな。だがよ、それでいきなり殴るとか――」
「やかましい!お前、部隊を全滅させる気か!人間の嗅覚侮るな、意識には上らなくても無意識下で察知するんだよ!それで気取られて反撃されたらどうするんだこのボンクラ!」
ムッとしつつも言葉を返す敦賀を叩き斬る勢いでタカコが怒鳴り返し、彼の隣へと腰を下ろす。
「しかしよ、お前もヤニ飲むだろうがよ」
「私は一連の訓練が確定してから吸ってないぞ。口に入れる物は徹底的に気を配って身体も念入りに洗ってるし、その時に使う石鹸も営舎のは使ってない、香料入ってないやつを買って来てそれ使ってるよ」
タカコも喫煙者だった筈だがと問い掛ける高根、タカコは彼のそんな言葉を受けて立ち上がり、執務机迄歩いて来て後ろで一つに束ねている自らの髪を差し出して来る。
「匂い嗅いでみ?」
そう言われて高根が髪の束を受け取りそれを鼻先へと持って行ってみれば、確かに香料の香りは全くせず、綺麗に洗ってあるからか体臭すら全く感じ取れなかった。
「今回非正規側に入れるケインとヴィンスも同じだぞ、訓練の予定も近いし、もう何の匂いもしなくなってるんじゃないかな。アリサは逆だな、私と入れ替わる時は匂いを付けさせてる、私の役をしてもらうのに匂いからばれると困るからね」
「……そこ迄徹底すんの?」
「すんの」
あっけらかんと言って笑うタカコ、何から何迄大和とは違うなと高根が頭を掻けば、彼の手から髪を外したタカコがソファへと戻り今度こそ敦賀の隣へと腰を下ろす。次回の訓練の予定は四日後、明日の朝からタカコが率いる非正規役部隊は鳥栖の演習場へと入り最終準備に着手する手筈となっている。習うより慣れろだ、そう言い切った彼女からは大まかな流れしか聞かされておらず、非正規側がどう迎え撃つのか仕掛けて来るのかは高根にも黒川にも何も分からない。同じ大和陣営である敦賀や他の選抜人員も現時点では何も聞かされておらず、明日朝の演習場入りと同時に連絡手段を失い、何がどう行われるかの詳細は大和勢には全く知らされないまま訓練を迎える事となっている。
そこ迄徹底した機密保持、副長がやって来たからといってそう簡単に事が露見するとも思えないが、高根の心中には拭いきれない不安が滓の様に残っていた。統幕長の須藤もそうだが副長も次期統幕長はほぼ確定と言われている程の人物、それも現在の役職から見ての事ではなく、統幕入りする前からそんな話はあちこちで聞いている。本来であれば総合的な運用に携わるのが職務の統幕、そこの副長が直々に派遣されて来るとは流石に思わなかった。統幕内の人間が来るにしても精々が佐官だと思っていたのだ、無論統幕の意向を全面的に受けた形となる事は当然だが、階級や立場も考えればその方が断然やり易かったのは明白だ。
副長が来れば一切の誤魔化しは利かないだろう、少しでも綻びを見せれば正面切ってそこを突っ込んで来るに違い無い。息子の嫁候補という事でタカコに対しても随分と関心を寄せている様子だが、その調子でマクギャレットに近付き替え玉である事を見破られる可能性も有る。こちらに関してはタカコ本人に接触されるよりは、マクギャレットに注意を向けている内は立案や実際の訓練にタカコが指導側で携わっている事を気取られる可能性は低くなるかも知れないから、一概に悪い事ではないのかも知れないが、いずれにせよ胃と頭が痛くなる事実は変わらない。
「大和人つーか東洋系は体臭無い方なんだからまだ楽だぞ、ジェフとかマリオなんか体臭自体が強めだから大変なんだって」
「そういうもんなのか」
「おお、マジマジ。いっぺんあいつ等が脱いだシャツに顔突っ込んで深呼吸してみ?食欲無くすぞ」
「……それは……体臭が無くても御免被りてぇんだが」
「私は足は臭いけど身体は無臭だぞ、ほれ、敦賀も私の髪の匂い嗅いでみ」
「止めろ馬鹿女、鼻に毛先が入る」
明日以降の事を考えてげんなりとした面持ちになる高根、その彼の目の前ではタカコと敦賀がじゃれ合っており、こいつ等は事の深刻さを理解しているのかと大きく溜息を吐く。
「……お前等さぁ……頼むぜ?本当に」
「えー?任せろって。少なくとも私はヘマはしねぇよ」
高根の言葉にそう言って軽い調子で返事をするタカコ、高根はそんな彼女の様子を見て、もう一つ溜息を吐いた。
「……親父が来るのか」
「そう嫌な顔するなよ……お前より俺の方が嫌だよ…統幕長が来るよりマシだと思おうぜ」
夜の海兵隊総司令執務室、ソファに腰を下ろした敦賀が心底嫌そうな面持ちで舌打ちをし、高根はそれに苦笑しつつ言葉を返した。統幕から派遣される将官が敦賀の父親である敦賀統幕副長になった、統幕長の須藤から高根がそう連絡を受けたのは夕方の事。よりによって彼か、勘が鋭く有能で次期統幕長は確実と言われている、そんな切れ者が来る事になるとはと頭を抱えた高根、同じ様に連絡を受けたであろう黒川も似た心境に違い無い。敦賀はそれ以前に折り合いが良いとは言えない父親の襲来が嫌らしく、あからさまに嫌悪の表情を浮かべて煙草に火を点ける。
「敦賀の親父さんが中央から派遣されて来るんだってー?」
そこにやって来たのはタカコ、扉を叩き入室を許可された後に室内へと入りながらの彼女のその言葉に高根が眉根を寄せて口を開く。
「そうだが、誰から聞いた?」
「タツさん。さっき大部屋に電話来たよ、『工廠の黒川ですが清水曹長いらっしゃいますか?』って」
「……何やってんだあいつは」
「んで、胃が痛くなるって愚痴聞かされた」
気持ちは分かるが何故お前に、そう言って頭を掻く高根を見て笑いながら敦賀の隣へと腰を下ろそうとしたタカコ、その彼女の表情は敦賀が手にした煙草を見て一気に険しくなった。
「この……アホンダラ!お前、私が言った事をもう忘れたのか!」
言葉と共に右手が敦賀が手にする煙草を取り上げ、左手が彼の後頭部へと手首を効かせて叩き込まれる。突然の事に動きを失いつつも後頭部を抱える敦賀、タカコはそんな彼を見下ろしつつ灰皿に煙草を押し付けて怒鳴り付けた。
「お前、今度は非正規兵役に回るから身体から体臭以外の臭いは消しておけって言っただろうが!煙草は当然厳禁、納豆も食うな食事に薬味も使うなって言っただろうがこの馬鹿!ボケ!童貞!」
「ああ、そういやそうだったな。だがよ、それでいきなり殴るとか――」
「やかましい!お前、部隊を全滅させる気か!人間の嗅覚侮るな、意識には上らなくても無意識下で察知するんだよ!それで気取られて反撃されたらどうするんだこのボンクラ!」
ムッとしつつも言葉を返す敦賀を叩き斬る勢いでタカコが怒鳴り返し、彼の隣へと腰を下ろす。
「しかしよ、お前もヤニ飲むだろうがよ」
「私は一連の訓練が確定してから吸ってないぞ。口に入れる物は徹底的に気を配って身体も念入りに洗ってるし、その時に使う石鹸も営舎のは使ってない、香料入ってないやつを買って来てそれ使ってるよ」
タカコも喫煙者だった筈だがと問い掛ける高根、タカコは彼のそんな言葉を受けて立ち上がり、執務机迄歩いて来て後ろで一つに束ねている自らの髪を差し出して来る。
「匂い嗅いでみ?」
そう言われて高根が髪の束を受け取りそれを鼻先へと持って行ってみれば、確かに香料の香りは全くせず、綺麗に洗ってあるからか体臭すら全く感じ取れなかった。
「今回非正規側に入れるケインとヴィンスも同じだぞ、訓練の予定も近いし、もう何の匂いもしなくなってるんじゃないかな。アリサは逆だな、私と入れ替わる時は匂いを付けさせてる、私の役をしてもらうのに匂いからばれると困るからね」
「……そこ迄徹底すんの?」
「すんの」
あっけらかんと言って笑うタカコ、何から何迄大和とは違うなと高根が頭を掻けば、彼の手から髪を外したタカコがソファへと戻り今度こそ敦賀の隣へと腰を下ろす。次回の訓練の予定は四日後、明日の朝からタカコが率いる非正規役部隊は鳥栖の演習場へと入り最終準備に着手する手筈となっている。習うより慣れろだ、そう言い切った彼女からは大まかな流れしか聞かされておらず、非正規側がどう迎え撃つのか仕掛けて来るのかは高根にも黒川にも何も分からない。同じ大和陣営である敦賀や他の選抜人員も現時点では何も聞かされておらず、明日朝の演習場入りと同時に連絡手段を失い、何がどう行われるかの詳細は大和勢には全く知らされないまま訓練を迎える事となっている。
そこ迄徹底した機密保持、副長がやって来たからといってそう簡単に事が露見するとも思えないが、高根の心中には拭いきれない不安が滓の様に残っていた。統幕長の須藤もそうだが副長も次期統幕長はほぼ確定と言われている程の人物、それも現在の役職から見ての事ではなく、統幕入りする前からそんな話はあちこちで聞いている。本来であれば総合的な運用に携わるのが職務の統幕、そこの副長が直々に派遣されて来るとは流石に思わなかった。統幕内の人間が来るにしても精々が佐官だと思っていたのだ、無論統幕の意向を全面的に受けた形となる事は当然だが、階級や立場も考えればその方が断然やり易かったのは明白だ。
副長が来れば一切の誤魔化しは利かないだろう、少しでも綻びを見せれば正面切ってそこを突っ込んで来るに違い無い。息子の嫁候補という事でタカコに対しても随分と関心を寄せている様子だが、その調子でマクギャレットに近付き替え玉である事を見破られる可能性も有る。こちらに関してはタカコ本人に接触されるよりは、マクギャレットに注意を向けている内は立案や実際の訓練にタカコが指導側で携わっている事を気取られる可能性は低くなるかも知れないから、一概に悪い事ではないのかも知れないが、いずれにせよ胃と頭が痛くなる事実は変わらない。
「大和人つーか東洋系は体臭無い方なんだからまだ楽だぞ、ジェフとかマリオなんか体臭自体が強めだから大変なんだって」
「そういうもんなのか」
「おお、マジマジ。いっぺんあいつ等が脱いだシャツに顔突っ込んで深呼吸してみ?食欲無くすぞ」
「……それは……体臭が無くても御免被りてぇんだが」
「私は足は臭いけど身体は無臭だぞ、ほれ、敦賀も私の髪の匂い嗅いでみ」
「止めろ馬鹿女、鼻に毛先が入る」
明日以降の事を考えてげんなりとした面持ちになる高根、その彼の目の前ではタカコと敦賀がじゃれ合っており、こいつ等は事の深刻さを理解しているのかと大きく溜息を吐く。
「……お前等さぁ……頼むぜ?本当に」
「えー?任せろって。少なくとも私はヘマはしねぇよ」
高根の言葉にそう言って軽い調子で返事をするタカコ、高根はそんな彼女の様子を見て、もう一つ溜息を吐いた。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
大和―YAMATO― 第五部
良治堂 馬琴
ファンタジー
同じ民族を祖先に持ち違う国に生まれた二人、戦う為、一人は刀を、一人は銃をその手にとった。
大災害により一度文明が滅びた後の日本、福岡。
ユーラシア大陸とは海底の隆起により朝鮮半島を通じて地続きとなり、大災害を生き残った人々は、そこを通ってやって来る異形の化け物との戦いを長年続けていた。
そんな彼等の前に、或る日突然一人の人間が現れた。
更新は月水金曜日の0時です。
シリーズものとなっています、上部の作者情報からどうぞ。
2月13日をもちまして完結となります。
2月15日より番外編の連載を開始します、作者情報からどうぞ。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
異世界転生したので、のんびり冒険したい!
藤なごみ
ファンタジー
アラサーのサラリーマンのサトーは、仕事帰りに道端にいた白い子犬を撫でていた所、事故に巻き込まれてしまい死んでしまった。
実は神様の眷属だった白い子犬にサトーの魂を神様の所に連れて行かれた事により、現世からの輪廻から外れてしまう。
そこで神様からお詫びとして異世界転生を進められ、異世界で生きて行く事になる。
異世界で冒険者をする事になったサトーだか、冒険者登録する前に王族を助けた事により、本人の意図とは関係なく様々な事件に巻き込まれていく。
貴族のしがらみに加えて、異世界を股にかける犯罪組織にも顔を覚えられ、悪戦苦闘する日々。
ちょっとチート気味な仲間に囲まれながらも、チームの頭脳としてサトーは事件に立ち向かって行きます。
いつか訪れるだろうのんびりと冒険をする事が出来る日々を目指して!
……何時になったらのんびり冒険できるのかな?
小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しました(20220930)
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ユウ
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる