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第二章
第十七話 油断
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俺は油断した。
目の前の怨霊七人と、少し離れた怨霊二人が消えてほっとしていたのだろう。
全て終わったと思って食べる牛丼はうまかった。
腹が膨れ椅子に深く腰掛けて、大きくため息をついた。
普段は、威勢の良いエマが何故かおしとやかに牛丼を口に運ぶ。
その姿を、目を細めて眺めていた。
暇なので周囲を何気なく見回した。
「!?……!!!!」
――驚いた
そして、二度見してもう一度驚いた。
「エマ、すぐに店を出るぞ!!」
「えっ? えっ? ま、まだ途中です。もったいない事は出来ません」
――な、何だこいつー! おしとやかかー!!
エマの食べている牛丼が、まだ丼に四分の一くらい残っている。
「ほれで、もったいらくないらろ。行くぞ!!」
俺はエマの箸をもぎ取って、残りの牛丼をかき込んでお茶で流し込んだ。
当然自分の分のお茶は飲み終わっているので、エマの飲みさしのお茶を使った。
「にゃ、か、かか、間接キッ…………、あっ! ちょ、ちょっと待って……」
エマの腕をつかんで店の外に向った。
エマの奴は真っ赤な顔をして、足がもつれている。
先払いのチケット制は、急いでいる時にはとても便利だ。
素早く外に出られる。
「ちょっ、ちょっと!!」
おっ、いつものエマの顔に戻った。
「奴だ!! こっちに近づいている!!」
「えっ!?」
「キョロキョロするな。勘づかれる。自然体で移動するぞ」
「は、はい!」
日本の首都、たいした街では無いがその場末の歓楽街。
ここが奴の住みかなのか仕事場なのか、それはわからない。
だがここでの奴との出会いは偶然ではなさそうだ。
気の緩みから油断をしてしまったが、何とか先に気づけて無事逃げる事が出来たようだ。
「どうやら、気づかれなかったようだ」
「ほーーっ……、よかった」
エマはぺったんこの胸の前に両手をやりほっとしている。
文字通り胸をなで下ろしている。
「俺はこのまま帰る、後輩さんは無事だといいな。じゃあな」
「えっ!? あっ! うん! ありがとう。またね」
エマの笑顔が美しかった。
ドカッ!!!!
俺の自宅兼事務所のドアが蹴破られた。
「おっ、おい!! 何てことをするんだ。鍵なんて閉めてねーのによー!!」
「ほう、鍵が閉めてねーのか! 物騒じゃねえか!!」
目つきの悪い、痩せたスーツ姿の男が入って来た。
身なりは小綺麗で紳士的だが、滅茶苦茶物騒な顔をしている。
だが、怨霊は憑いていない。
「おめーが言うんじゃねえ!!」
「ふはっ!! ちげーねえ!! おいっ!」
男は、後ろを振り返って、誰かを呼んだ。
入って来たのは、先日カラオケ屋にいた厚化粧の美人二人と、がたいの良い男が入って来た。
がたいの良い男の人相は最悪で、悪の権化のような顔をしている。
一人、二人と順番に入って来て、四人目の男が入って来たときに俺は驚きの余り声が出た。
「うわっ!!!!」
四人の男には、ご丁寧にそれぞれ全員に怨霊までついている。
だが驚いたのはそれでは無い。
「ふひっ! 処女でしたよ」
悪党紳士がうれしそうに笑いやがった。
「てめーー!!」
四人目の男の手には、ボロボロになったエマが髪をつかまれて、ぶら下がっていた。
目の前の怨霊七人と、少し離れた怨霊二人が消えてほっとしていたのだろう。
全て終わったと思って食べる牛丼はうまかった。
腹が膨れ椅子に深く腰掛けて、大きくため息をついた。
普段は、威勢の良いエマが何故かおしとやかに牛丼を口に運ぶ。
その姿を、目を細めて眺めていた。
暇なので周囲を何気なく見回した。
「!?……!!!!」
――驚いた
そして、二度見してもう一度驚いた。
「エマ、すぐに店を出るぞ!!」
「えっ? えっ? ま、まだ途中です。もったいない事は出来ません」
――な、何だこいつー! おしとやかかー!!
エマの食べている牛丼が、まだ丼に四分の一くらい残っている。
「ほれで、もったいらくないらろ。行くぞ!!」
俺はエマの箸をもぎ取って、残りの牛丼をかき込んでお茶で流し込んだ。
当然自分の分のお茶は飲み終わっているので、エマの飲みさしのお茶を使った。
「にゃ、か、かか、間接キッ…………、あっ! ちょ、ちょっと待って……」
エマの腕をつかんで店の外に向った。
エマの奴は真っ赤な顔をして、足がもつれている。
先払いのチケット制は、急いでいる時にはとても便利だ。
素早く外に出られる。
「ちょっ、ちょっと!!」
おっ、いつものエマの顔に戻った。
「奴だ!! こっちに近づいている!!」
「えっ!?」
「キョロキョロするな。勘づかれる。自然体で移動するぞ」
「は、はい!」
日本の首都、たいした街では無いがその場末の歓楽街。
ここが奴の住みかなのか仕事場なのか、それはわからない。
だがここでの奴との出会いは偶然ではなさそうだ。
気の緩みから油断をしてしまったが、何とか先に気づけて無事逃げる事が出来たようだ。
「どうやら、気づかれなかったようだ」
「ほーーっ……、よかった」
エマはぺったんこの胸の前に両手をやりほっとしている。
文字通り胸をなで下ろしている。
「俺はこのまま帰る、後輩さんは無事だといいな。じゃあな」
「えっ!? あっ! うん! ありがとう。またね」
エマの笑顔が美しかった。
ドカッ!!!!
俺の自宅兼事務所のドアが蹴破られた。
「おっ、おい!! 何てことをするんだ。鍵なんて閉めてねーのによー!!」
「ほう、鍵が閉めてねーのか! 物騒じゃねえか!!」
目つきの悪い、痩せたスーツ姿の男が入って来た。
身なりは小綺麗で紳士的だが、滅茶苦茶物騒な顔をしている。
だが、怨霊は憑いていない。
「おめーが言うんじゃねえ!!」
「ふはっ!! ちげーねえ!! おいっ!」
男は、後ろを振り返って、誰かを呼んだ。
入って来たのは、先日カラオケ屋にいた厚化粧の美人二人と、がたいの良い男が入って来た。
がたいの良い男の人相は最悪で、悪の権化のような顔をしている。
一人、二人と順番に入って来て、四人目の男が入って来たときに俺は驚きの余り声が出た。
「うわっ!!!!」
四人の男には、ご丁寧にそれぞれ全員に怨霊までついている。
だが驚いたのはそれでは無い。
「ふひっ! 処女でしたよ」
悪党紳士がうれしそうに笑いやがった。
「てめーー!!」
四人目の男の手には、ボロボロになったエマが髪をつかまれて、ぶら下がっていた。
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