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第十四話 小さな鏡に映るもの
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私はザブさんが病院にいることで、気が緩んでいたのかもしれない。
すでに二日が過ぎていました。
相変わらず映像を垂れ流しながら、パソコンの前で作業をしています。
だからなのか映像から、あまり恐さを感じなくなっています。
そして、少女が現れた意味や、映像から感じた違和感もぼやけた感じになっていました。
「あれ?」
私は画面の中の小さな変化に気が付きました。
「なにか、動いた気がする」
それは、ザブさんが部屋の中央に座っている時の、映像の中にあった。
ガチャーーン、という音の出ている時の小さな鏡の中にあった。
鏡面が少し水色になったのです。
鏡だけに注目して見ていると、確かに音がしてからしばらく、水色になっているのがわかります。
小さな鏡が映っている映像は、音がしていない時は天井を写したまま変化がありません。
何度確認しても、音がした時に水色が入ります。
「うわああああー」
私は驚いて悲鳴を上げてしまいました。
ザブさんが口をパクパクしながら、目から涙が出ているのです。
今まで何度も見てきたザブさんの目からは、涙は出ていませんでした。
「え、映像がかわった。そんなことが……」
いいえ、私は知識としては知っています。
心霊写真の後ろを向いた顔が年々少しずつ振り返るものや、映像の中にある顔の表情が、見るたびに変わっていく映像などが存在していることを。
「うわああ」
タイミング良く電話がかかってきました。
あまりにもタイミングが良すぎて驚いてしまいました。
「もしもし、安崎です」
「あー、恵美子です」
「ザブが姿を消しました」
「えっ……」
私はその時に、感じていた違和感が一つになった気がしました。
一つだけ、最初から、感じすぎて忘れていた存在のことを。
「恵美子先生に、注意するように言われていたのに、病院にいることで安心してしまい、それを忘れていました」
それは私も同じでした。
でも、私はそれを言うことが出来ませんでした。
「あのー、安崎さんは今、お忙しいですか」
「いいえ、ザブの行方には、見当がつきません。警察に任せたので時間はあります」
「では、いつもの居酒屋でよろしいですか」
「すぐに行きます」
居酒屋貴賓席
私の方が早く着いたのでいつもの注文をします。
「お待たせしました」
安崎さんはウーロン茶を注文すると席についた。
「あの、すみません。私がもっとしっかり注意していれば……」
頭を下げようとしたら、安崎さんはそれを制して逆に謝ってくれました。
「いいえ、こちらこそすみません。先生の気遣いを台無しにしてしまって……」
「いいえ、いいえ」
私は、ここまで本当に役に立っていない。
ただ、ザブさんの行方には見当がついていた。
「先生はザブの行き先がわかるのですか」
「恐らく、わかります。この映像を見て下さい」
私はザブさんが部屋の中央で照明を付けたままの映像を出した。
そして、音が出る瞬間の小さな鏡を見てもらった。
「色が変化しますね」
「はい、拡大出来ると良いのですが」
私が必死で顔を近づけて見ていると、安崎さんはノートパソコンを少し操作した。
小さな鏡の中が画面半分ぐらいに表示された。
「こ、これは」
画面の中の水色は、布のように見える。
それがゆらゆら揺れる映像だった。
その背景に白いぼやけたものが見える。
安崎さんはまた、パソコンを操作した。
少しだけ見やすくなった。
「神社の鳥居ですね」
「ええ」
私は自宅で目をこらして映像を見た時に、すでに鳥居ということはわかっていた。
「安崎さん、あの廃村がどこにあるかわかりますか」
「わかります」
「ザブさんは、廃村の神社にいます」
私は、この映像をみて、ザブさんはあの廃村の神社にいるとそう感じていた。
「……では、私が行ってみてきます。しかし先生は、すごいですなー。こんな小さな微かな映像の動きまで見落とさないのですから」
そう言いながらひとしきり感心すると、安崎さんは真剣な顔になり廃村に向かった。
私は、映像を見ながら、ザブさんの口をパクパクしている顔が、笑顔にならないかとじっと見つめた
すでに二日が過ぎていました。
相変わらず映像を垂れ流しながら、パソコンの前で作業をしています。
だからなのか映像から、あまり恐さを感じなくなっています。
そして、少女が現れた意味や、映像から感じた違和感もぼやけた感じになっていました。
「あれ?」
私は画面の中の小さな変化に気が付きました。
「なにか、動いた気がする」
それは、ザブさんが部屋の中央に座っている時の、映像の中にあった。
ガチャーーン、という音の出ている時の小さな鏡の中にあった。
鏡面が少し水色になったのです。
鏡だけに注目して見ていると、確かに音がしてからしばらく、水色になっているのがわかります。
小さな鏡が映っている映像は、音がしていない時は天井を写したまま変化がありません。
何度確認しても、音がした時に水色が入ります。
「うわああああー」
私は驚いて悲鳴を上げてしまいました。
ザブさんが口をパクパクしながら、目から涙が出ているのです。
今まで何度も見てきたザブさんの目からは、涙は出ていませんでした。
「え、映像がかわった。そんなことが……」
いいえ、私は知識としては知っています。
心霊写真の後ろを向いた顔が年々少しずつ振り返るものや、映像の中にある顔の表情が、見るたびに変わっていく映像などが存在していることを。
「うわああ」
タイミング良く電話がかかってきました。
あまりにもタイミングが良すぎて驚いてしまいました。
「もしもし、安崎です」
「あー、恵美子です」
「ザブが姿を消しました」
「えっ……」
私はその時に、感じていた違和感が一つになった気がしました。
一つだけ、最初から、感じすぎて忘れていた存在のことを。
「恵美子先生に、注意するように言われていたのに、病院にいることで安心してしまい、それを忘れていました」
それは私も同じでした。
でも、私はそれを言うことが出来ませんでした。
「あのー、安崎さんは今、お忙しいですか」
「いいえ、ザブの行方には、見当がつきません。警察に任せたので時間はあります」
「では、いつもの居酒屋でよろしいですか」
「すぐに行きます」
居酒屋貴賓席
私の方が早く着いたのでいつもの注文をします。
「お待たせしました」
安崎さんはウーロン茶を注文すると席についた。
「あの、すみません。私がもっとしっかり注意していれば……」
頭を下げようとしたら、安崎さんはそれを制して逆に謝ってくれました。
「いいえ、こちらこそすみません。先生の気遣いを台無しにしてしまって……」
「いいえ、いいえ」
私は、ここまで本当に役に立っていない。
ただ、ザブさんの行方には見当がついていた。
「先生はザブの行き先がわかるのですか」
「恐らく、わかります。この映像を見て下さい」
私はザブさんが部屋の中央で照明を付けたままの映像を出した。
そして、音が出る瞬間の小さな鏡を見てもらった。
「色が変化しますね」
「はい、拡大出来ると良いのですが」
私が必死で顔を近づけて見ていると、安崎さんはノートパソコンを少し操作した。
小さな鏡の中が画面半分ぐらいに表示された。
「こ、これは」
画面の中の水色は、布のように見える。
それがゆらゆら揺れる映像だった。
その背景に白いぼやけたものが見える。
安崎さんはまた、パソコンを操作した。
少しだけ見やすくなった。
「神社の鳥居ですね」
「ええ」
私は自宅で目をこらして映像を見た時に、すでに鳥居ということはわかっていた。
「安崎さん、あの廃村がどこにあるかわかりますか」
「わかります」
「ザブさんは、廃村の神社にいます」
私は、この映像をみて、ザブさんはあの廃村の神社にいるとそう感じていた。
「……では、私が行ってみてきます。しかし先生は、すごいですなー。こんな小さな微かな映像の動きまで見落とさないのですから」
そう言いながらひとしきり感心すると、安崎さんは真剣な顔になり廃村に向かった。
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