小さな鏡

覧都

文字の大きさ
上 下
13 / 18

第十三話 出てくれた意味

しおりを挟む
私は映像の中の、白いぬいぐるみを見つめながら、恐怖を感じていました。
可愛い白いぬいぐるみが、かえって恐く感じます。
クリッとした黒い目は、かわいいはずなのに、何だか深い闇の様に感じます。
三枚目のディスクの映像に嫌な感じを覚えながら映像が終わり、廃墟の映像の入ったディスクに入れ替えました。

流れる映像を見ながら、私は頭の中で別の事を考えています。
それは、私がなぜこんな恐い映像を見るようになったのかについてです。

――いつから見るようになったのかしら。
最初はテレビでした。
色々な、不思議な現象を特集している番組だった。
UFOやUMA、そして幽霊、心霊写真。
幽霊なんて本当にいるのかしら。この疑問がきっかけ。

漫画家を目指していた私は、自分の目で見た幽霊の漫画を書けば、面白いのじゃ無いかと考えたのよ。
そしていつか、皆が恐いと言ってくれるホラー漫画が書きたくて始めました。

映像は、進みます。
相変わらず鳥肌が止りません。
私は、資料として、心霊ビデオ、最近ではユーツベで大量の映像を見ています。
この映像は、今のところその中で一番恐い。

「すごい映像よね。現地ならもっと恐かったはず」

私は、建物自体からまず違和感を覚えた。
昼間の二階の様子と、夜の廃墟全体からの恐ろしい感じ。
きっと何かを見落としている。
そして、スピリットボックスの声、ここでも何かを感じた。

「そういえば、安崎さんは髪の長い少女って言った時、すごく怖がっていたわよねー」

なんだか私は、なにか安崎さんがまだ、秘密を隠しているような気がしました。
そして、もう一度ディスクを入れ替えます。
映像はザブさんの自宅に変わります。
真っ暗な部屋です。
隣の部屋からザブさんの寝息とうめき声、そして闇の中に響く音。

光が入った無人の部屋。
そして、一瞬見える人影。

ここで私は、全身に悪寒が走った。
全身に弱い電気が流れるような感じ。
とっさに人影が、何かを伝えたがっている感じがした。

「だ、だめよ、わからない」

私は、映像の中に話しかけていた。
そして、ハッとした。
すでに、明るくなっている部屋の、人影があった所から視線を感じたのです。
私は体の震えが収まらなくなり、いったん映像を見るのをやめました。

「うふふ、この感じ久しぶり」

私は以前、同じ思いをしたことがあります。
その映像は、廃神社を写した映像でした。
草に覆い尽くされた境内を、淡々と写しただけの映像でした。
しかも昼間明るい時に撮影された映像です。

参道と鳥居は石で出来ている為、そこまで朽ちていませんが、その他の場所は、一面緑に染まっています。
その映像は特に怪現象が映っているわけでも無く、撮影者の声も無く、ただ歩く足音が入っているだけの、廃神社を散歩しているだけの映像でした。
でも私は、寒気が収まらず、ずっと嫌な感じがしていました。
そして、崩れ落ちたお社を写した時に、強い吐き気に襲われて、映像の再生を止めたことがあります。
その時以来です。

ふふふ、私に映像を止めさせるとはすごい映像です。
余裕をかましていますが、本当はもう見たくなくなっています。
でも、気合いを入れてもう一度再生し始めます。

いよいよ明るい部屋の中央にザブさんが座っている映像です。
ザブさんがすぐに眠ります。
そして、あの音です。

ガチャーーン!!

「ぎゃああああああーーっ」

ザブさんが驚いて、手足を動かします。
その時カメラが倒れて、あの人影が見えます。

「あーーっ」

私は声を上げてしまいました。
あの子の姿が見えたのです。

「もう一度出てくれたのね」

恐らく何度再生しても、黒いぼやっとした影なのでしょうが、でも私の目には、はっきり見えました。髪の長い、鼻と口しか見えない少女の姿が。
でも何故、ここで

「だめよ、それだけじゃ、わからない」

私には出てくれた意味がわかりませんでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ゴーストバスター幽野怜

蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。 山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。 そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。 肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性―― 悲しい呪いをかけられている同級生―― 一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊―― そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王! ゴーストバスターVS悪霊達 笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける! 現代ホラーバトル、いざ開幕!! 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

(ほぼ)5分で読める怖い話

アタリメ部長
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火
ホラー
怖い話の短編集です

怨霊師

覧都
ホラー
怨霊師とは怨念を纏いて怨霊を使役する者也 一人の少年の両親が目の前で怨霊となり、少年はそれが見えるようになります。 そのせいか、人々の黒い物、怨念まで見えるようになりました。 見えるようになった少年の目には、世の中に黒い怨念があふれているように見えます。 そして、その中でも強い怨念は人に悪影響を及ぼす事を知り、人知れずそれを取り除いていました。 あるとき怨霊に取り憑かれた暴走族が、殺人をするところを目撃します。 少年は怒りに我を忘れます。 我を忘れた少年の体から、取り除いていたはずの大量の怨念が飛び出しました。 飛び出した大量の怨念は怨霊に吸収されると、とりついている暴走族を自由に動かし、殺してしまいました。 その時、少年は自分の出来る事を理解し、自らを怨霊師と名のる事にしました。 怨霊師となった少年は、その力で怨霊に取り憑かれてもなお悪事を働く者達に正義の鉄槌を加えます。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...