小さな鏡

覧都

文字の大きさ
上 下
4 / 18

第四話 不自然な内容

しおりを挟む
映像の中のザブさんは、明らかに様子が違った。
だいたいこんな廃墟に夜中に一人で、まともでいられるはずもありません。
眉毛が下がり、まるで泣き顔です。
唇も小刻みに震えています。

「で、では、トリフィールドで検証を続けましょう」

えっ、この人ある意味すごい。
この状態でまだ検証を続けるつもりらしい。

「スイッチを入れます」

ピーーーッ!!
トリフィールドが、精一杯最大で泣き出しました。

「うおおおー」

ザブさんが取り乱しました。

「おおおお」

うなりながらスイッチを切っています。
こんな山奥は携帯の電波すらありません。
トリフィールドが反応するのは何が原因でしょうか。

「ききき、きをを、取りな、直してスピリットボックスで、検証したいと思います」

ザブさんはスピリットボックスのスイッチを入れました。
この人を突き動かしているものは何でしょうか。
私はザブさんに少し恐怖しています。

ザッ、ザッ、ザッ
リズミカルに鳴りだした。
普通はここで近くに何かいるものとして話しかけるのですが、それよりも早くスピリットボックスが反応した。

ザザザ、ゼゼゼー、ザー

「うお、おお、女の人の声です」

ザブさんが驚きましたが、何とか耐えています。

ザザザ、ガエデーー、ザザザーザ

「うわあーー!!」

ザブさんが大声を出して叫びました。
それに呼応するように、スイッチも触っていないのに、ばけたんが赤く光り、トリフィールドがピーーと最大音量で鳴り出しました。

「か、帰ります、帰りますー―!!」

絶叫しながら走り出しました。
その時カメラにぶつかり、映像が大きく揺れました。
最後のスピリットボックスの声は男の人のように感じました。
私は、色々な配信を見てきましたが、これ程激しい反応を見たのは、はじめてです。ザブさんは大丈夫でしょうか。



そして映像が、車内に切り替わりました。
真っ暗な中に、運転席だけが浮かび上がっています。
ザブさんはまだ肩で息をしています。

「いやー、これ以上は撮影できませんでした。機材を残したまま帰って来てしまいました。明日、明るくなってから取りに戻りたいと思います。本日の配信はここまでです。ご視聴ありがとうございました」

そして、エンディングテーマが流れだし配信は終了しました。
なんだか撮れ高、最高の配信になっています。
私は、続いて編集をしていない方の、映像を見てみようと、ディスクをパソコンにセットしました。

そこには明るい山奥の緑美しい景色と、落ち着いているザブさんの姿がありました。
先程までの恐怖に怯える姿がまだ脳裏に残っている私には、すごくリラックスしている様に映りました。

そして、一軒目のつぶれた廃屋をじっくり写し、二軒目の廃屋に移動します。
そして、すぐに廃屋の中に入っていきます。

「編集後の映像では、中には入ってなかったわね」

私は思わずつぶやいてしまいました。
そして、中に入ったザブさんは、ゆっくり廃屋を写すと床の抜けていない部屋に入ります。
部屋に入ると、配信映像の時と同じく、部屋のきしむ音が部屋のあちこちから聞こえます。

「やっぱり、昼間にこの音を確認していたのですね」

私の独り言です。
そして部屋の中央に来るとパチンという音が出ました。
ザブさんは「おっ」と声を出しました。
そして、体重移動をして、何度でもこの音が出せることを、確認しています。

「ふふふ、これも確認済みでしたか。私の思ったとおり夜に怖がっていたのは演技ですね。やるもんです」

そして外にでたザブさんは、まるで中に入っていないように、コメントして「夜はここから入っていきましょうかねー」の言葉で締めくくりました。
続いて三軒目に移動していきます。
そして私は、全身に寒気が走りました。

「すごい、全身がゾーッとしたわ。こんなの久しぶり」

私は全身の寒気に両手で体をこすっていました。
今のこの家からは、他の廃屋同様に何も感じ無いのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

合宿先での恐怖体験

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

機織姫

ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり

【実体験アリ】怖い話まとめ

スキマ
ホラー
自身の体験や友人から聞いた怖い話のまとめになります。修学旅行後の怖い体験、お墓参り、出産前に起きた不思議な出来事、最近の怖い話など。個人や地域の特定を防ぐために名前や地名などを変更して紹介しています。

ChatGPTが綴るホラー短編集

月歌(ツキウタ)
ホラー
ChatGPTにホラー短編集を作ってもらう実験です。

処理中です...