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あずさと札幌ライフ

第三百八十四話 闇市

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 札幌へ向うのはUFOを使う事にした。
 UFOには賊の親玉と俺とあずさそれとヒマリ、クザンにシュラ、フォリスさん、赤穂さんと数人の配下、アドとオオエは姿を消して同行しているはずだ。
 賊の親玉がUFOを見て大きく口を開けて驚いていたが、声が出ないので静かで良い。
 UFOに乗り込み、札幌の状態を確認するため地図を開いた。

「札幌の北部のこのあたりに、北海道国政府は移動しています」

 赤穂さんの配下が教えてくれた。
 戦争状態になり北部の川沿いの施設に移動して、川を天然の堀として利用し防衛するつもりのようだ。
 住民も移動をして、政府の近くに引っ越しをしたようだ。
 そのため、俺が隠れ家にする美術館のまわりには人はいない。

 いったん美術館に降りてここから、住民のいる場所を目指した。
 住民のいる住宅地に着くと住民は学校の校庭に集っている。
 賊の親玉は、クザンを身につけさせて自由を奪った。
 クザンは透明にして、その上に大きめの服を着せた。

 あずさとヒマリは髪で顔の半分を隠し、男の子の格好をしている。
 きっと学校でもこうしているのだろう。
 それだけ、木田家の娘というのは目立つと言うことなのだろうなあ。苦労をかける。
 俺も目立たないオタクのおじさんの格好をした。
 他の者は全員透明化して、見えない様にしてもらった。

「なんだよー! 又、減っているじゃないか! これじゃあ生きていけないよ!! 乳飲み子を抱えた者は乳も出なくなっているんだ。政府はわかっているのかい」

 婦人会の人だろうか、役人に文句を言っている。

「うるせーなー、ババアー! これを読んでみろーー!!」

 そこには、欲しがりません勝つまでは、と書いてある。
 おいおい、いつの時代の標語だよ。
 俺達は、校庭が見える民家の影で隠れながら、校庭の様子を見ている。

「とうさん、あれは何をやっているの?」

 あずさが真剣な顔で聞いてきた。

「あれは、配給だ。政府が住民に食糧を配っているのさ。少ないから生きていけないと言っているみたいだな。しかし、この暑いのに皆、真面目に整列している。日本人はとてもえらいなあ」

 そう言っていたら、目の前の家で食事が始まった。
 窓から失礼と思いながら、中を見つめてしまった。

 机の上には、白く濁った碗と緑の浅漬けの様な物があるだけだった。

「うちより酷い」

 なっ!! あずさのやろーー!!
 うちより酷いって、なんて言いぐさだ。
 痩せてしまったお母さんと、ガリガリに痩せた子供が手を合せて、「いただきます」をしてから、それをゆっくりたべている。ゆっくり、ゆっくり時間をかけている。
 時間をかければそれだけ、おなかがふくれるというように……。
 俺は気付くとあずさとヒマリを抱きしめていた。
 賊の親玉はそれを見てニヤリと笑っている。

「八兵衛さん、報告します」

「どうぞ」

「闇市は郊外の野球場のような場所に開かれています」

 俺は赤穂さんに頼んで闇市を探してもらっていた。
 物資が不足すれば、闇市が出来ると思っていたのだが、やっぱり出来ていたようだ。

「ありがとうございます」

「あずさ、ヒマリ、今度はそっちへ行ってみよう。赤穂さん案内をお願いします」

「はい」

「とうさん、闇市ってなに?」

 あずさは走りながら、俺に聞いてきた。

「今の北海道国は全ての物資が統制下にある。だから自由に物を手に入れる事が出来ないんだ。でも、それでは生きては行けない。だから政府に隠れて物資の売買をする。その売買をする場所のことをそう呼ぶのさ。もちろん違法で捕まれば物資が没収される。北海道国政府はもっと厳しい罰を与えているかもしれないなあ」

「ギリギリね」

「ふふふ、そうでもないのさ。そこには恐い人達がいて、役人にワイロを渡して、お目こぼしをしてもらっている。そうそう邪魔をされることがないのさ」

「いいのか、悪いのかわからないわ」

 ヒマリが言った。
 俺は、簡単に返事ができなかった。
 法には反しているが、これがなければ生きていけない。

「あそこです」

 赤穂さんが指をさした。
 大勢の人がいて賑やかだ。
 いくつも屋台が出ていて、ちゃんと日陰を作っている。
 まあ、それでも暑いのだが。
 俺達は、雑踏の中に入った。

「おい、でぶ!!」

 はーーっ!!
 いきなり、恐い顔をした奴にからまれた。
 まじかー!! はやすぎるだろー!!

「てめー、見ねー顔だなあ!!」

 俺は目を合せないようにした。
 隣で賊の親玉も同じ仕草をしている。

 ――くっくっくっ!! こいつも怖がっているのか! 笑える!

「なに、俺じゃねえ見たいな顔をしてやあがる。てめーら二人だよ!!」

 うわぁ! 次々人相の悪いお兄さんが集ってきた。
 俺は、あずさとヒマリにだけ見えるように小さく、手をあっちへ行きなさいと振った。

「げえっ……あなた様は……」

 なんだか、人相の悪い奴が、びびっている。
 まさか俺の正体がばれたのか?
 いや、違うはずだ。
 バレる訳がない、北海道国に俺の顔を知っている奴なんかいないはずだ。

「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」

 集って来た、人相の悪いお兄さん達がパニックになっている。
 俺には、意味が全くわからなかった。
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