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夏休み編

第三百七十二話 来客

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 夜は深まり、おなか一杯のファミリー達は、大阪城の天守閣最上階に畳をひいて、そこでごろ寝をしている。
 さっきまで横にいたあずさも夢の中だ。

「ふー、いつになったら木田に帰れるのかなあ」

 俺は、食事の片付けが終わったテーブルに日本地図を置いてつぶやいた。
 九州は何とか新政府の侵攻を防ぎ、島津家を盟主に一つにまとまった。
 残りは中国と四国、そして北海道だ。
 イスに腰掛けるとアドが膝の上に乗ってきた。

「アド、どこから手を付けるかなあ」

「……」

 アドは無言で地図をじっと見つめている。
 そして、くるんと俺の方を向くとじっと俺の顔を見詰めてくる。

「どうせ行くなら涼しい方がいいニャ」

「そうか。やっぱりそうなるか」

 俺は、視線を北海道に移した。
 どうせ、俺は新政府軍を倒すのを最後と決めている。





 翌朝、九州から島津義弘と安東常久の二人がたずねて来た。
 そして、時を同じくして、アメリちゃんとフォード教授も来てくれた。
 アメリちゃんとフォード教授は学校の先生を頼んでいたが、夏休みなので来てくれたようだ。

「せ、先生ーーーー!!!!」

 サンダーアメリカがアメリちゃんを見つけて駆け寄った。
 この二人は師弟関係ということらしい。

「サンダーしゃん、日本に来ていたのでしゅか?」

「はい」

「アンナメーダーマン、サンダーしゃんは親日家なのでしゅよ」

 アメリちゃんが言った。

「えーーっ!! あれで親日家なのかよう。信じられない」

 そんな話をしながら、全員に朝食を用意した。
 ご飯とキャベツの千切、目玉焼きの定番に鳥のかり揚げだ。
 さすがに定番だけでは刑務所の食事より貧相だから、かり揚げもつけたのだ。
 サンダーアメリカは、まだおなかが一杯だからと断った。

「大殿……」

 常久が口を開いた。
 二人がそろって来たということがどういうことなのかは、もうだいたい分かっている。常久の次の言葉を、手のひらを前に出してさえぎった。
 俺は、視線をアメリカの三大ヒーローに向けた。

「アンナメーダーマン様。なにかおっしゃりたいことがあるのなら言ってみてください」

 サンダーアメリカが何かに感づいたのか言ってくれた。

「ふむ、日本には桜木というとんでも無く強い奴がいる。そのために俺は軍を動かせないんだ」

「うふふ、私はサンダーワールドに名前を変えました。アメリカの為だけでは無くアンナメーダーマン様のように世界の為に戦うという決意の表れです。世界の為になることなら断りませんよ」

「ふむ、ありがとう」

 俺はフォード教授とアメリちゃんを見た。
 二人もうなずいてくれた。

「常久、聞いてくれ」

「はっ!!」

「俺は、新たに九州三闘神という呼び名を作り、安東常久、戸次統虎、島津家久を九州三闘神と呼びたいと考えている」

「なっ! 何と!!」

「だが、新政府軍には、その三闘神を持ってしても勝てない相手がいる」

「それが、桜木と言うことですな」

「うむ。桜木はアメリカのヒーローに相手をしてもらおうと思っている」

「で、では……」

 常久と義弘の表情が明るくなった。

「常久とベッキーと義弘は関門海峡を越え、本州へ進軍せよ。但し敵の隊長より格上の者との戦闘は禁じる。その者との戦闘は、この三人のヒーローに任せるものとする。三大ヒーローは、戦争には参加せず、悪の親玉とだけ戦ってくれ」

「ははっ!!」
「はい!」

「家久と真田はそのまま、四国を頼むと伝えてくれ」

「わかりました。九州三闘神の話と共に伝えまする」

「余り無茶はしないようにな」

「ははっ!!」

 満足そうに、常久と義弘の二人が食事を始めた。
 いくら桜木が強いと言っても、アメリカの三大ヒーローが相手では分が悪いだろう。
 新政府軍には、しばらく攻めるつもりはなかったが、これも運命的なものなのかもしれない、流れに任せる事にした。

「俺は、少し北海道の様子を見てこようと思っている」

「おっ、おお!!」

 常久と義弘がうれしそうに俺の顔を見た。
 その目は、いよいよ日本統一ですなあ、と言わんばかりだ。

「様子を見てくるだけだぞ……したがって俺は同行できない。九州のことは全て島津家に任せる。新政府軍攻略の采配は義弘に任せる。無茶をして攻めすぎないようにな」

「肝に銘じます」

「とうさん!! 次は北海道旅行ですか?」

 どこから聞いていたのか、あずさが俺の横に来ている。

「りょ、旅行ではない。が、夏休みだから、あずさもヒマリも連れて行くから安心しろ」

「ほーーい!!!!」

 あずさがうれしさの余り小躍りしている。
 だめだ、九州の事より心配になってきた。
 ヒマリの様子をみたら大きなおなかが苦しいのか、起き上がることもなく、こっちに顔だけ向けて微笑んでいる。
 それが普通だよな。

「私達も夏休みですわ」

 二人の校長先生が、便乗してきた。

「じゃあ、古賀さんも坂本さんも一緒に行きますか?」

「はーーい!!」

 これで、北海道行きには四人が決定した。
 視線を移すと桃井さんが浮かない顔をしている。

「桃井さんどうしたのですか?」

「は、はい……」

 桃井さんは下を向いてしまった。
 そうか北海道は、に組の赤穂さんが担当しているから同行できないのか。
 桃井さんにも任務があるのだし、仕方がないとこれ以上声をかけるのをやめた。
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