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夏休み編

第三百七十一話 懐かしい味

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 大阪城天守閣最上階に、俺はいくつか屋台を出して、これをキッチンにして料理を出す事にした。
 最初はお寿司とも思ったのだが、ご飯の量が多くなりすぎるので、海鮮丼にする事にした。
 御飯は酢飯にして少なめの量にして、上にマグロの赤身そしてトロ、タイ、ヒラメ、そしてその縁側、車エビ、アジを乗せて醤油を少しだけかけて出した。

「アンナメーダーマン様。こ、これは、なんですか?」

 俺は、黒のジャージを着てヘルメットはかぶらずに、その上にエプロンだけ着けてサンダーアメリカに料理を出した。

「これは海鮮丼です」

 サンダーアメリカの前に置いたあと、順次木田ファミリーの前にも置いていく。

「なるほど、これが日本食なのですね! アンナメーダーマン様には悪いですけど、やっぱりアメリカのハンバーガーが世界一の食べ物だと思います」

「そうですか。まあまずは一口食べて下さい」

「ふん、こんな物、ただ魚を切っただけじゃないですか、美味しいわけが…………わけが……!!?? うまーーーい!! うまいのだーー!!!! 美味し過ぎるうっうっうぅ……こ、こんなうまいものは生まれて初めて食べたのだあーーーー!!!!」

 とうとう泣き出しちゃったよ。

「おいしいーーいいぃぃ」

 ファミリーからも、美味しいをいただきました。

「今日は、近海のタイやヒラメ、アジを使ったから、余計に美味しいでしょう」

 全員が無言でうなずいている。

「続いては、爆玉とかり揚げ、回鍋肉と野菜炒めです」

 爆玉とは玉子と、調味料を入れて焼いただけの物で砂糖を多めに入れて、半熟状態で食べるのがうまさの秘訣。
 ほかほかご飯に乗せて食べると、ご飯がバクバク食べられるので、名付けて爆玉です。

 ご飯に爆玉をのせて、サンダーアメリカの前に置き、続いてファミリーの前に順次置いていきます。

「う、うまいのだーー!! 玉子を焼いただけなのに、こんなに美味いなんてーー、ご飯がもうなくなったのだーー!!」

 ファミリーの前にはご飯の炊飯器をそのまま置いて、自分たちでよそってもらった。
 全員バクバクご飯を食べている。

「これは、かり揚げです」

 かり揚げとは、カリカリに揚げた唐揚げの事です。
 最初に味をしっかりつけた鶏肉を低温で中まで火を通し、その後高温の油で表面をカリカリに揚げた唐揚げです。

「ぎゃーー!! アンナメーダーマン様。こ、これも美味いのだーー!!」

 バリバリと、スナック菓子を食べるような音を出しながら食べている。

「次は回鍋肉です。木田のキャベツを、砂糖で甘くした三河の八丁味噌と北海道産の豚肉で炒めた物です」

「ふぁああぁぁぁーー!!!! うまいのだーー、ご飯がドンドンなくなるのだーー」

「最後は、各地の野菜と北海道産の豚肉を、木田の鶏の鶏ガラと、北海道の昆布で取った出汁で炒め、三河のウズラの卵を沢山入れ、片栗粉でとじた野菜炒めです」

「うぎゃああぁぁあーーーーだめじゃーー!! うますぎるのだーー!! アンナメーダーマン様、どれもこれもすべて、いままで食べた者の中で一番美味いのだーー!! もうおなかがぱんぱんなのだーー!!」

「あずさ、おなか一杯だそうだ」

「そうですか。残念です。じゃあ、うな重は……いまから出しましょーー!!」

「わああ!!!!」

 ファミリーから拍手が起った。
 そして、サンダーの前にも一個置かれた。

「せっかくなのだが、おなかが一杯でもう何もはいらないのだー」

 しかし、その言葉には誰も反応せず、ファミリーは全員モクモクと一心不乱に、うな重を食べ始めた。
 じっと、サンダーはその姿を見ていたが、うな重の蓋を開けてしまった。

「良いにおいなのだーー!! 一口だけたべてみようかな……うわああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!! なんなのだこのうまさはーーーー!!!! ダメなのだー、おなかは拒否するのに食べるのを止められないのだーー!!!!!! うううぅぅぅーーくるしいぃーー! 苦しいのに止められないのだーー!!!!」

 結局サンダーは、まん丸なおなかをして完食した。
 あずさは、平気な顔をしてうな重の二杯目をたべている。

「サンダー、日本食はどうですか。この他にも美味しい日本食はまだまだあるのですけどね」

「まっ、負けたのだーー!! 日本のご飯は滅茶苦茶うまかったのだーー」

 こうして、サンダーアメリカの歓迎会は無事終わった。
 ファミリーも満足してくれたようだ。

「桃井さん、いつも助けられています。俺の料理はどうでしたか?」

 静かにお茶を飲んでいる桃井さんの横に近づき声をかけた。

「は、はい。胃袋までつかまれましたーー!!」

「そうですか。それはよかったです。この後はゆっくりしてください。仕事禁止です」

「うふふ、はい。ありがとうございます」

 この子は、ここでは一番普通の顔をしている。
 でもなんだか俺は家族を除けばこの子が一番可愛く感じる。
 ほっとするのだ。

「とうさん、私はやっぱり爆玉が一番美味しかったです」

 うな重を食べ終わって、あずさが近づいてきて腕につかまって上目遣いで言った。
 貧乏だった頃、よく食べた懐かしい味だからそう思うのだろう。
 あずさの目には涙が溜まっていた。
 きっと、幼かった頃の思い出がよみがえっているのだろう。
 思い出の食べ物にはそういう力がある。

 俺も思い出がよみがえっていた。
 あずさの顔が、幼かった頃の骸骨のような顔に見えてきた。

「はやく、木田に帰って、のんびりしたいな」

「うふふ、はい」

 俺は、あずさと窓際に行き木田の方を見つめた。
 既に日が沈み、真っ暗な世界が広がっていた。

「そっちは、琵琶湖ニャ!! 木田はもう少し南ニャ!」

 アドの奴、良い雰囲気が台無しだよ!!

「俺は琵琶湖が見たかったんだよ!!!!」

 負け惜しみを言っておいた。
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