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九州激闘編

第三百六十六話 四国へ

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「大殿、竜造寺様と有馬様がいらっしゃいました」

「そうですか。では、こちらへ通してください」

 大殿が、丁寧な言葉遣いです。
 とても機嫌が悪いという事が伝わってきます。
 大殿は、臼杵のフェリーターミナルの船の上にいます。
 船は、四国の八幡浜への移動用に造ったものです。
 海は穏やかですが、大殿の心は穏やかではなさそうです。

 船には日差しをよけるために、甲板を覆うように屋根がつけてあります。
 ここに、島津隊二百五十人と指揮をする島津家久様、真田十勇士と真田信繁様がそろっています。
 あとは、いつもの十田衆が勢揃いをしています。

「こちらです」

 島津隊の兵士に案内されて、竜造寺様と有馬様がやって来ました。

「こ、これは大殿、ご、ご機嫌麗しゅう」

 真田様に挨拶をしています。
 たしかに、整った顔に立派な甲冑です。
 大殿は、黒いジャージですからねえ。
 そうなりますよね。

「私は真田信繁と申します。大殿はこちらです」

 真田様が苦笑しながら、手のひらで大殿をしめします。

「済みません。あいさつが遅れました。私が木田家当主、木田とうです」

 大殿は、丁寧に頭を下げました。
 よそよそしいですね。
 あきらかに何かを企んでいます。

「も、申し訳ありません。私が竜造寺を名のっております、竜造寺家兼にございます」

「私は、有馬晴純にございます」

「うむ、二人はもと政治家と聞いていますが、間違いありませんか」

「はい、間違いありません」

 竜造寺様と有馬様が一緒に返事をしました。

「そうですか。それはさぞかし、ご苦労なされたでしょう。一般大衆は馬鹿ばかりですからなあ」

「はっ??」

 二人は驚きの表情になりました。
 でも、すぐににやりと笑い、顔を見合わせました。

「誠にそうですなあ」

 竜造寺様が、悪代官の様な顔をしてうなずきます。

「ところでお二人は、福岡の事は聞かれましたか?」

「いいえ、関心もござらん」

「そうですか。相当市民が残虐に殺されたと聞きました」

「ひゃははははは、それは見る事が出来なくて残念。まあ、あんな奴らでも、我らが逃げる時間稼ぎになったのなら本望でしょう」

 竜造寺様が笑います。

「ちがいありませんなあ。ははははは」

 有馬様も笑います。

「肥前も大勢民が残っていると聞きましたが、新政府軍に蹂躙されると思います。さぞかし惨たらしく殺されるでしょうなあ」

「ふふふ、まあ、ええのじゃ無いですかな。わしら上級国民はすべて逃げ出しましたからなあ。はははは」

 有馬様がゆかいそうです。

「少しも、民の事など気になりませんよね。ごくつぶしは死滅した方がいいと思えるくらいです」

 大殿が言いました。

「ははは、さすがは大殿ですなー。いい事を言われる。世界がこんな状態では、自分第一で生きなければ仕方がありませんからなあ」

「私は。民主主義の復活を考えていますが、お二人はまた政治家に戻るおつもりはありますか?」

 大殿は、怒っているはずですが、それを少しも出しません。
 むしろ私の方が、はらわたが煮えくりかえっています。

「ははは、それはいい。なるに決まっている。あれほどいいものは無い。私利私欲に走る者しか居ないからなあ、やりたい放題だ。あんたもせっかく、上り詰めたんだ。政治家になるといい。金も女も自由自在だ。貧乏人は税金地獄にして、使い道のない税金が何十兆円あまったとか言って、裏金をつくればいいんだ。脱税しても無罪放免だぞ。やめられん。ひゃはははは」

 竜造寺様が言いました。

「そうそう、消費税を二十パーセントにすればいいんだ。外国はそうしてると言えば、それで誰も文句をいわないのだからなあ。はやく民主主義にもどさないといかん」

 有馬様です。

「ふふふ、国民の為を思うのなら、消費税など無くさないといかんだろう。日本は無くてもやっていける。外国なんか関係ない。ふふふ、隕石騒ぎの前の話だから、いまさらだがな。まあ、お前達がどんな人間かはわかった。いっぺん最底辺から世界を見てくるといいだろう」

「はっ……!!??」

 二人はハトが豆鉄砲をくらったような顔をしています。

「家族離ればなれは可哀想だ。竜造寺と有馬の上級国民様は全員で呂瞬の所で、足軽をやっていただこう。家久、つまみだせーーー!!!!」

「ははあぁぁーーーーーっ!!!!」

 島津家久様が、配下と共に竜造寺様と有馬様を連行していきました。

「真田、政治家にまともな奴はいないのかなあ」

「ふふふ、いれば、消費税は無くなっていたでしょうし、国民の給料が年々下がっていく事は無かったでしょう」

「民主主義と言うのも考えものだなあ……」

「大殿ーー!!」

「おお、荒武か!」

 荒武様が来ました。
 サッチンのお父さんですね。

「伊藤家、配下千名連れてまいりました」

「うむ、ご苦労であった」

「ふーー、いよいよ四国だなー。飢えた子供達が大勢いるだろう。はやく救ってやりたいな」

「はい」

 真田様もうれしそうにうなずきました。

「じゃあ、真田頼んだぞ。一応新政府軍には、関門海峡は越えないと言ってある。海を渡るのはギリセーフだと思うが、しばらくは悟られたくはない。隠密行動で頼む」

「お任せください」

「じゃあ、桃井さん、俺達はまた、オーストラリアだ。嫌じゃ無ければ同行してほしい」

「いやだなんて、そんな、ご同行させていただきます」

 私は飛び上がりたいのを、必死に我慢して静かに返事をしました。
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