上 下
359 / 428
九州激闘編

第三百五十九話 忍び寄る影

しおりを挟む
 先程まで戦場だった所が、たのしいバーベキュー会場に早変わりして、全員が羊肉をお腹一杯食べています。
 大殿は本陣前に、大きなテーブルを出して、そこで食事する人達を、目を細めて眺めています。

「こっちだ」

 一人の兵士が大友様の横に案内されました。
 どうやら、大友様の家臣のようです。

「どうした?」

 大友様が声をかけました。

「ほ、報告します」

「うむ」

「立花山砦、陥落!!」

「なに!? して、我軍は?」

「はっ! いち早く離脱し、被害はほとんどありません」

「……」

 大友様は恥ずかしそうに顔を赤らめて、大殿を見ました。

「さ、相良軍はどうじゃ?」

 兵士に、相良様が聞きました。
 兵士は大友様を一瞬見ました。
 大友様は悪意ある笑顔をして、うなずきました。

「はっ! 相良軍は、大友軍より先に離脱、被害は皆無と推察いたします」

「……」

 相良様も恥ずかしそうに大殿の顔を見ました。
 顔はもう、ゆでだこのように真っ赤です。

「最後まで、竜造寺家と安東家の生き残りの兵が勇敢に戦っていましたが、新政府軍の猛攻の前に陥落しました」

「ふむーー!! わしの所の兵が残っておったのか」

 常久様が、鼻から大きく息を吐きました。
 鼻の穴が大きく開きヒクヒクしています。

「くっ……」

 大友様と相良様が、常久様の顔を見て悔しそうです。

「桃井様!」

 私の横に、姿を消した部下が来ています。
 どうやら立花山砦を落とした新政府軍の様子の報告でしょう。

「大殿! よろしいですか?」

「うむ」

「姿をあらわして、大殿に報告して下さい」

「はっ! 報告します」

 古賀忍軍の忍者装備の部下が三名姿をあらわしました。

「うむ、皆に聞かせてやってくれ」

 大殿が優しい表情で、三人に言いました。

「はい! では、私めから。砦を落とされた竜造寺家は捨てがまり戦法を取り、撤退を開始しました」

「捨てがまりだと、何故そんな……」

 大殿は捨てがまりが、何だか知っているみたいですね。
 私は良くわかりません。
 でも、黙って聞いていましょう。

「はい。竜造寺様は、福岡の住民を逃がすため、時間稼ぎのため、少数の部隊を残しながら国道を撤退しました」

「残された部隊は?」

「生死不明、恐らく玉砕しているものかと……」

 大殿は、暗い顔をしています。
 どうやら、捨てがまり戦法とは撤退している部隊が、決死隊を残して時間稼ぎをしながら撤退する戦法のようです。
 壮絶な戦法ですね。残される部隊にはなりたく有りませんね。
 こんな戦法を使うなんて九州の人はおかしいです。
 でも、不謹慎かもしれませんが、勇敢でかっこいいです。

「して、市民は?」

「はい。それは、私が見てきました」

 別の配下が答えました。

「うむ、教えてくれ」

「はい、では。市民は撤退してきた大友軍、相良軍に護衛されながら、久留米を目指していますが、家財道具に食糧などを持っているため足取りが遅く、途中で追いつかれる可能性が高いと思われます」

「ふむ」

「ですが竜造寺軍は、久留米と福岡の間に陣を築き、雄藩連合で再度市民を守るべく決死の戦いの準備をしています。市民はここを越える事は可能かと思います」

「なるほど、ここが竜造寺の長坂の戦いか」

 大殿がいいましたが、私には意味がわかりません。
 でも、まあ、知らなくても大丈夫でしょう。

「おお、だれか、伝令をだせ、久留米防衛の戦いには、命がけで当たれと」

 大友様が、大声で言いました。
 数人の兵士が、走り出しました。
 手には、山盛りの料理を載せた皿を持っています。
 食べながら、行くつもりのようです。

「赤池、相良軍の指揮はお前が取ってこい! 死守するんだ。物資もすぐに送る」

「はっ!!」

 赤池様は、大殿にどでかい皿を出してもらって、皿一杯に料理をのせて走り出しました。
 食べながら走っています。

「次は私の番ですね」

「うむ、頼む」

「私は肥前の有馬様の様子を見ていた者です。肥前有馬様は福岡の西、長垂山の麓に砦を築き新政府軍を迎え撃つ準備をしています」

「ミサ!」

 大殿はミサ様を呼びました。
 ミサ様がやっと出番かと、大きな胸を揺らしながら大殿に近づきます。
 ミサ様が地図を出しました。

「おおおっ!!」

 少しどよめきが起ります。
 私達からすればいつもの光景ですが、九州の方には新鮮だったようです。
 ミサ様は九州の地図を、深い胸の谷間から出しました。

「むう、生暖かい。さては、尻にしいたな!!」

 いやいや、今見ていましたよね!
 こぼれそうな胸の、その谷間から出すところを。一部始終見逃さずに見ているのを、私は見ていましたよ。

「もう、小芝居はいいから、さっさと見なさいよ!!」

 ミサ様は、相変わらず大殿に辛口です。
 大殿にこれだけ言えるのはさすがです。うらやましい。

「なるほど、ここで迎え撃つのか。有馬軍への増援は?」

「現在の所、どこも無いようです」

「なるほど。良くわかりました。皆さんありがとうございます」

「はっ、はい。いいえ、もったいないお言葉!」

 三人はうれしそうな顔をして、姿を消しました。

「とのーー!!」

 大友様の家臣の方が走ってきました。

「どうした?」

「はっ、有馬様、竜造寺様から使者が来ています」

「よし、通せ!!」

 何だか食事会が、慌ただしいですね。
 次々来客があります。
 今度はなんでしょうか?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者から逃亡した魔王は、北海道の片田舎から人生をやり直す

栗金団(くりきんとん)
ファンタジー
「ふははは!さぁ勇者よ、開戦だ!」 魔族と人間が対立して1000年。 災厄と呼ばれる魔王がいる魔王城に、世界平和を取り戻すため、勇者一向が訪れる。 城に攻め入り四大幹部を打ち倒した勇者は、ついに魔族の頂点に君臨する「転移の魔王」とあいまみえる。 魔族を倒すことに特化した聖魔法の奥義魔法を使い、勇者は魔王を追い詰める。 千年間生きていて最大の危機に、魔王は前代未聞の「逃走」を選択する。 そして、異世界で最強種族の頂点にいた魔王は現代日本に転移する。 命からがら転移するも大気圏から落下して重症の魔王は、怪我をした動物と間違われて少年に拾われる。 この物語は、魔族としては初めて勇者から逃亡した魔王のその後の物語。 そして、新しい世界で初めて魔族と出会ったとある少年の話だ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔導騎士から始まる、現代のゴーレムマスター

呑兵衛和尚
ファンタジー
 異世界での二十五年間の生活を終えて、無事に生まれ故郷の地球に帰ってきた|十六夜悠《いざよい・ゆう》  帰還時の運試しで、三つのスキル・加護を持ち帰ることができることになったので、『|空間収納《チェスト》』と『ゴーレムマスター』という加護を持ち帰ることにした。  その加護を選んだ理由は一つで、地球でゴーレム魔法を使って『|魔導騎士《マーギア・ギア》』という、身長30cmほどのゴーレムを作り出し、誰でも手軽に『ゴーレムバトル』を楽しんでもらおうと考えたのである。  最初に自分をサポートさせるために作り出した、汎用ゴーレムの『綾姫』と、隣に住む幼馴染の【秋田小町』との三人で、ゴーレムを世界に普及させる‼︎  この物語は、魔法の存在しない地球で、ゴーレムマスターの主人公【十六夜悠】が、のんびりといろんなゴーレムやマジックアイテムを製作し、とんでも事件に巻き込まれるという面白おかしい人生の物語である。 ・第一部  十六夜悠による魔導騎士(マーギア・ギア)の開発史がメインストーリーです。 ・第二部  十六夜悠の息子の『十六夜銀河』が主人公の、高校生・魔導騎士(マーギア・ギア)バトルがメインストーリーです。

処理中です...