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九州激闘編
第三百五十五話 桃井語り
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「あのー、大殿が隕石騒動の前に何をしていたのか、知っている人はいらっしゃいますか?」
私は、柳川さんから聞いた話しをしようと思いました。
「いや、聞いた事が無い」
真田様が言いました。
真田様でも知らないのですね。
「でしたら、丁度良いですね。これは、ゲン一家の目つきの悪い痩せた、死神悪魔みたいな方から聞いた話しです」
「まっ、まさか、柳川さんの事ではありませんか?」
真田様は鋭すぎです。なんで分るんですかー。
「しょ、しょれは、ご、ご想像にお任せします。
では、ご説明します。コホン! あの頃の日本政府は、低所得者を苦しめる政策をとっていました。
まあ、私も低所得者だったので苦しめられました。
苦しめたって投票しないから、どうでもいいって事だったのでしょう。
それに人数が多いので、少しずつむしり取ってもリターンが大きいですからね。
政治家や、役人、大会社の社員の給料を上げたら、後の国民の所得はどうでも良かったようです。
物価は二割も三割も上昇するのに、低所得者の給料は全く上がりませんでした。知っていますか?」
「いいや、知らんなあ」
ここに居る全員が首を振りました。
けっ!! 上級国民めーー!!
「そ、そうですか。皆さんは上級国民だったのですね。
大殿は違います。低所得者です。
『なんで、給料も上げれねえ癖して、物価だけ上げるのかなあ。先に給料が上がらんかったら、生きていけれんだろう』と言ったそうです」
「た、確かに」
上級国民の義弘様が言いました。
本当に理解出来たのでしょうか。
「『物価なんてなんで上げるかなあ? 俺なら物価を上げねえように努力するんだがなあ』と言われたそうです。
そして大殿は、苦しむ庶民の為に動きました。
『まずは玉子だ! 玉子1パック百円で売る。そしてキャベツも百円だ。そして、米は10キロ二千五百円だ。ぜってー値上げをしない。これさえ食っていれば、死なずに1ヶ月は暮らせる。俺が実験済みだ』
そう言って、養鶏場とキャベツ畑と田んぼ、そしてスーパーを始めたそうです。
さらに、賞味期限の来てしまった商品や、その他の訳あり商品をあつめて安く販売し始めたそうです。
大殿は、住んでいる街に次々倉庫を建てたり、お店を作ったり、買収したりして、木田の看板を増やしました。
そうしていく内に、街は木田の看板で埋め尽くされていったそうです。
町の人は町の事を木田市と呼び、大殿の会社の木田産業本社を木田城と呼ぶようになったそうです」
「ふむ」
皆さんは聞いていますが、何を言いたいんだと言う顔です。
これだから上級国民はダメなのです。
「そんな時に隕石騒ぎが起きました。
人々は食べ物を求め暴動を起こしました。
でも、木田市は何とか治安は維持されました。
治安は、ゲン一家が集り、時には暴徒を力ずくで押さえつけたりして守ってくれました。
大量に生産される玉子と、キャベツとお米で木田市の人は飢えなくて済んだのです。
まあ、この食事を食べながら皆が口々に『これは刑務所の食事より酷いなあ』などと言っていたようですが、死ぬよりましです。
それに、大殿は一生懸命働いて、こんな粗末な食事で我慢していた時期もあったのです。
文句を言ってはバチが当たります。
それでも、デマは広まり、『東京都庁では、味しい食事を提供している』『自衛隊が助けてくれる』そんなデマで、中心地へ移動する人が後を絶ちませんでした」
「ふむ、あれはひどかったな。助けを求める人が、家にある食べ物や財産をもって、都心に向うと、途中でそれを狙い撃ちされて物資は全部奪われた。それだけじゃない普通に全員問答無用に殺されていたな」
安東常久様が言いました。
「うむ、良く出来た罠だった。都心には救助隊がいる。食糧を配っていると噂を流して、なけなしの食糧を持ってこさせて、それを根こそぎ奪うのだからな」
真田様が言いました。
「大勢死にましたなあ」
義弘様が言いました。
「うふふ、『なんで暴動なんか起こすかなあ』というのが大殿の感想です」
「な、なんでって、そりゃあ、隕石が落ちてきて、世界が無茶苦茶になると聞けば、普通ではいられないだろう」
やっと、大友様が口を開いてくれました。
「あら、どうしてですか? 普通でいられなくて、暴動を起こせば隕石が落ちなくなるのですか?」
「そ、それは無い。無いのだが……」
「隕石が落ちるその日まで、普通の暮しをすればいいじゃ無いですか。それがなぜ出来ないのですか?」
私は、少し前の伝染病の時のマスク騒ぎまで思い出しました。
もしも、日本がこのまま大殿のおかげで復興して、安定した生活が送られるようになったのなら、私は隕石が落ちるとわかっても、隕石が落ちるその日まで落ち着いて、普通の暮しを続けたいと思います。
いいえ、それだけではありません。
何月何日に富士山が噴火する。宇宙人が攻めて来る。何を言われても、普通に暮らして行こうと思います。そうしないといけないと思います。
「くっ、出来ないだろう!! 出来てたまるかーー!! それが人間だー!! そんな事より、木田の当主はその時何をしていたんだー!? 隕石が落ちると分ってから木田の当主が何をしていたのか言わないじゃ無いか! 何を隠している! 言ってみろーーぉ!!」
駄目な大人は、自分が不利になると大声を出しますが、大友様はまさにそれですね。
少しは大殿を見習ってほしいものです。
「おや、それを聞いてしまいますか? ふふふ」
私は、ここぞとばかりに、顔に影を落とし悪い笑顔を作りグイッと大友様の顔に近づけました。
私は、柳川さんから聞いた話しをしようと思いました。
「いや、聞いた事が無い」
真田様が言いました。
真田様でも知らないのですね。
「でしたら、丁度良いですね。これは、ゲン一家の目つきの悪い痩せた、死神悪魔みたいな方から聞いた話しです」
「まっ、まさか、柳川さんの事ではありませんか?」
真田様は鋭すぎです。なんで分るんですかー。
「しょ、しょれは、ご、ご想像にお任せします。
では、ご説明します。コホン! あの頃の日本政府は、低所得者を苦しめる政策をとっていました。
まあ、私も低所得者だったので苦しめられました。
苦しめたって投票しないから、どうでもいいって事だったのでしょう。
それに人数が多いので、少しずつむしり取ってもリターンが大きいですからね。
政治家や、役人、大会社の社員の給料を上げたら、後の国民の所得はどうでも良かったようです。
物価は二割も三割も上昇するのに、低所得者の給料は全く上がりませんでした。知っていますか?」
「いいや、知らんなあ」
ここに居る全員が首を振りました。
けっ!! 上級国民めーー!!
「そ、そうですか。皆さんは上級国民だったのですね。
大殿は違います。低所得者です。
『なんで、給料も上げれねえ癖して、物価だけ上げるのかなあ。先に給料が上がらんかったら、生きていけれんだろう』と言ったそうです」
「た、確かに」
上級国民の義弘様が言いました。
本当に理解出来たのでしょうか。
「『物価なんてなんで上げるかなあ? 俺なら物価を上げねえように努力するんだがなあ』と言われたそうです。
そして大殿は、苦しむ庶民の為に動きました。
『まずは玉子だ! 玉子1パック百円で売る。そしてキャベツも百円だ。そして、米は10キロ二千五百円だ。ぜってー値上げをしない。これさえ食っていれば、死なずに1ヶ月は暮らせる。俺が実験済みだ』
そう言って、養鶏場とキャベツ畑と田んぼ、そしてスーパーを始めたそうです。
さらに、賞味期限の来てしまった商品や、その他の訳あり商品をあつめて安く販売し始めたそうです。
大殿は、住んでいる街に次々倉庫を建てたり、お店を作ったり、買収したりして、木田の看板を増やしました。
そうしていく内に、街は木田の看板で埋め尽くされていったそうです。
町の人は町の事を木田市と呼び、大殿の会社の木田産業本社を木田城と呼ぶようになったそうです」
「ふむ」
皆さんは聞いていますが、何を言いたいんだと言う顔です。
これだから上級国民はダメなのです。
「そんな時に隕石騒ぎが起きました。
人々は食べ物を求め暴動を起こしました。
でも、木田市は何とか治安は維持されました。
治安は、ゲン一家が集り、時には暴徒を力ずくで押さえつけたりして守ってくれました。
大量に生産される玉子と、キャベツとお米で木田市の人は飢えなくて済んだのです。
まあ、この食事を食べながら皆が口々に『これは刑務所の食事より酷いなあ』などと言っていたようですが、死ぬよりましです。
それに、大殿は一生懸命働いて、こんな粗末な食事で我慢していた時期もあったのです。
文句を言ってはバチが当たります。
それでも、デマは広まり、『東京都庁では、味しい食事を提供している』『自衛隊が助けてくれる』そんなデマで、中心地へ移動する人が後を絶ちませんでした」
「ふむ、あれはひどかったな。助けを求める人が、家にある食べ物や財産をもって、都心に向うと、途中でそれを狙い撃ちされて物資は全部奪われた。それだけじゃない普通に全員問答無用に殺されていたな」
安東常久様が言いました。
「うむ、良く出来た罠だった。都心には救助隊がいる。食糧を配っていると噂を流して、なけなしの食糧を持ってこさせて、それを根こそぎ奪うのだからな」
真田様が言いました。
「大勢死にましたなあ」
義弘様が言いました。
「うふふ、『なんで暴動なんか起こすかなあ』というのが大殿の感想です」
「な、なんでって、そりゃあ、隕石が落ちてきて、世界が無茶苦茶になると聞けば、普通ではいられないだろう」
やっと、大友様が口を開いてくれました。
「あら、どうしてですか? 普通でいられなくて、暴動を起こせば隕石が落ちなくなるのですか?」
「そ、それは無い。無いのだが……」
「隕石が落ちるその日まで、普通の暮しをすればいいじゃ無いですか。それがなぜ出来ないのですか?」
私は、少し前の伝染病の時のマスク騒ぎまで思い出しました。
もしも、日本がこのまま大殿のおかげで復興して、安定した生活が送られるようになったのなら、私は隕石が落ちるとわかっても、隕石が落ちるその日まで落ち着いて、普通の暮しを続けたいと思います。
いいえ、それだけではありません。
何月何日に富士山が噴火する。宇宙人が攻めて来る。何を言われても、普通に暮らして行こうと思います。そうしないといけないと思います。
「くっ、出来ないだろう!! 出来てたまるかーー!! それが人間だー!! そんな事より、木田の当主はその時何をしていたんだー!? 隕石が落ちると分ってから木田の当主が何をしていたのか言わないじゃ無いか! 何を隠している! 言ってみろーーぉ!!」
駄目な大人は、自分が不利になると大声を出しますが、大友様はまさにそれですね。
少しは大殿を見習ってほしいものです。
「おや、それを聞いてしまいますか? ふふふ」
私は、ここぞとばかりに、顔に影を落とし悪い笑顔を作りグイッと大友様の顔に近づけました。
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